ART FILE 19|「Punk: Chaos to Couture」|連載「世界のアート展から」
ART FILE 19|アメリカ・ニューヨーク|「メトロポリタン美術館」
パンク、ファッション界に嵐を起こす
「Punk: Chaos to Couture」(パンク:カオス トゥ クチュール)
ニューヨークに位置するメトロポリタン美術館にてパンクファッションをテーマにした「Punk: Chaos to Couture」が8月14日(水)まで開催中。パンク文化がファッションにおける影響を探求する大規模の展覧会である。
Text by Winsome Li (OPENERS)
Photographers & Footage by Metropolitan Museum
パンクとオートクチュール、切り離せない深い関係
メトロポリタン美術館で5月から開かれている「Punk: Chaos to Couture」展は、メンズとレディズファッション、音楽映像、オーディオを合わせて約100点の作品が並ぶ。テーマは「ファッションとパンクの深い関係」。パンクファッションにおける“do-it-yourself”の要素とクチュールの“オーダーメイド”の精神は相反しつつも、パンクカルチャーはいつの時代もファッションに欠かせない要素となっている。このコンセプトを改めて探求するのが本展の目的だ。
パンクミュージックは1970年代の中期に生まれた。当時のパンクミュージシャンは自分の音楽に合わせて、独特のスタイルを作り上げ、トレンドとして世界中に広まった。会場にはパンクの発祥の1970年代に作り上げられたオリジナルパンクの服と、パンクからインパイアされたオートクチュールや既製服が並べられる。多数のメゾンから発表されたコレクションの、安全ピン、羽根、カミソリなどのディテールを取り入れたデザインの服は、パンクが現在のファッションにも大きく影響している証拠といえる。
ART FILE 19|アメリカ・ニューヨーク|「メトロポリタン美術館」
パンク、ファッション界に嵐を起こす
「Punk: Chaos to Couture」(パンク:カオス トゥ クチュール)(2)
Text by Winsome Li (OPENERS)
Photographers & Footage by Metropolitan Museum
7つのテーマ、さまざまな“パンクヒーロー”
本展のテーマのひとつが、“パンクヒーロー”の作品による7つのギャラリーで構成されている。最初のギャラリーはニューヨークにあったクラブ「CBGB」と、アーティストのブロンディ、ラモーンズ、パティ・スミスなどをピックアップ。2番目のギャラリーはパンクの父、マルコム・マクラーレンとヴィヴィアン・ウエストウッドをテーマに、彼のブティック「セディショナリーズ」からインパイアされたスペースとなる。また、パンクカルチャーを服を通じて表わしたデザイナーたちの作品が、3つ目の「The Clothes for Heroes Gallery」(ヒーローの服のギャラリー)にズラリと並んだ。
ART FILE 19|アメリカ・ニューヨーク|「メトロポリタン美術館」
パンク、ファッション界に嵐を起こす
「Punk: Chaos to Couture」(パンク:カオス トゥ クチュール)(3)
Text by Winsome Li (OPENERS)
Photographers & Footage by Metropolitan Museum
パンクスタイルのアイコン VS ハイファッション
会場の後半は「D.I.Y. Hardware」(D.I.Y.ハードウェア)、「D.I.Y. Bricolage」(D.I.Y.ブリコラージュ )、「D.I.Y. Graffiti and Agitprop」(D.I.Y.グラフティ&アジプロップ)と「D.I.Y. Destroy」(D.I.Y.デストロイ)という4つのギャラリーとなる。
「D.I.Y.ハードウェア」には、スタッズ、チェーン、ファスナー、安全ピン、かみそりなど金属類の付属品を飾った、パンキッシュなクチュールや既製服を展示。2つ目のギャラリー「D.I.Y.ブリコラージュ 」にはリサイクル素材を使用したクチュールドレス。“ブリコラージュ”とは、廃棄したものを素材として再利用し、新しいものを製作するパンク カルチャーの1つである。そして、グラフティ、スローガン、撥ね飛ばしたペイントをモチーフにしたファッションは3つ目のギャラリー「D.I.Y.グラフティ&アジプロップ」に集まった。最後のギャラリー「D.I.Y.デストロイ」には、穴だらけのシャネルのコート、やぶれたワンピースなど、“Destroy(破壊)”の精神を表した服を展示。パンクのファッション象徴でもあり、服を破ることが彼らの脱構築思想を表現しているという。
展示品はトム ブラウン、シャネル、プラダ、サンローラン、バレンシアガ、ヴェルサーチなど、多数のメゾンのコレクションから選んだ豪華なラインナップとなっている。パンクの要素はハイファッションにも取り入れられ、さまざまなデザイナーによって個性的なクリエーションが発信されている。
ART FILE 19|アメリカ・ニューヨーク|「メトロポリタン美術館」
パンク、ファッション界に嵐を起こす
「Punk: Chaos to Couture」(パンク:カオス トゥ クチュール)(4)
Text by Winsome Li (OPENERS)
Photographers & Footage by Metropolitan Museum
パンクの世界へようこそ!
上記の映像は「Punk: Chaos to Couture」展の様子を収録したもの。まるでメトロポリタン美術館を訪れたかのように、展示を見ることができる。
また、本展の開幕に伴い、メトロポリタン美術館がファッションイベント「Met Gala」を主催した。アナ・ウィンター、マドンナ、ビヨンセ、ミランダ・カーなど数多くのセレブリティが参加するという、毎年恒例の、盛大なパーティーだ。展示のテーマ「パンク」に合わせ、各セレブリティはパンク風でドレスアップして登場した。