ART|「デヴィッド・リンチ展~暴力と静寂に棲むカオス」
ART|独特の世界観で、カルト的な人気を誇るリンチの世界観を体感
「デヴィッド・リンチ展~暴力と静寂に棲むカオス」
世界でもっとも影響力のある映画監督のひとりで、『エレファント・マン』『ブルーベルベット』など多くの話題作を世に送り出してきたデヴィッド・リンチ。その大規模展覧会が11月10日(土)から12月2日(日)まで、東京・原宿のラフォーレミュージアム原宿にて開催される。日本初公開をふくむ75点のアート作品、初公開1本をふくむ短編映画5本を展示・上映する。
Text by MATSUDA Natsuki(OPENERS)
未知の領域に誘う“リンチ・ワールド”
デヴィッド・リンチと聞いて、誰もがまずおもい浮かぶのは映像作品だ。1977年、デビュー作の『イレイザーヘッド』にはじまり、社会現象を巻き起こした『ツインピークス』や『マルホランド・ドライブ』など、独特の映像美と強烈な個性をはなつ、数かずの名作を発表してきた。
そんな映画界の鬼才として知られるデヴィッド・リンチだが、アート作品も映像作品に劣らぬ注目を浴びており、美術界での評価もますます高まっている。フランスのカルティエ現代美術財団や、ドイツのマックス・エルンスト美術館では個展を開催、2010年には美術界において権威あるドイツの「Goslar Kaiserring award」を受賞。アート作品の制作はリンチにとって、映画製作とまったくおなじ強度でおこなわれている表現活動といえる。
本展は、デヴィッド・リンチ本人のサポートのもと開催される展覧会であり、表現活動の根底にあるものにスポットを当て、「映画」「絵画」といった枠組みを取り払ったところにある“深層心理の潜在的ヴィジョン”に迫る試みとなっている。会場には絵画が32点、ドローイングが9点、写真が34点、合計75点のアート作品が展示予定で、このうち72点が日本初公開。また、実験的な短編映画5本、うち1本が日本初公開のものを上映する。絵画作品の展示スペースと仮設シアターを入れ子構造に組み入れるという迷宮のような会場構成をとり、“リンチ・ワールド”全開の展覧会となっている。
難解でありながら観るものを引きつける、デヴィッド・リンチのエッセンスを凝縮したともいえる本展。リンチ作品が得意とする、めまいにも似た感覚を味わいに、幻想的で奇想天外なこの展覧会へぜひ足を運んでもらいたい。
1946年アメリカ・モンタナ州生まれ。画家を目指し1965年にペンシルベニア美術アカデミー入学。AFI(アメリカ映画協会)の奨学金を得、完成までに5年の歳月を費やし『イレイザーヘッド』(76年)制作。その後、『エレファント・マン』(80年・アカデミー賞8部門ノミネート)、『ブルーベルベット』(86年・アカデミー賞監督賞ノミネート)、『ワイルド・アット・ハート』(90年・カンヌ国際映画祭パルムドール受賞)などを発表。1990年~1991年テレビシリーズ『ツイン・ピークス』は世界中でヒットを記録。『マルホランド・ドライブ』(2001年)ではカンヌ国際映画祭監督賞、 2006年にはいままでの業績に対してベネチア国際映画祭栄誉金獅子賞を受賞する。2007年、パリ・カルティエ現代美術財団にて大回顧展「The Air is on Fire」を開催し大盛況となる。現在自身が主宰する“デイヴィッド・リンチ財団”のドキュメンタリーを製作中。また新作映画についても準備中であり、音楽制作も精力的におこなっている。http://davidlynch.com/
「デヴィッド・リンチ展~暴力と静寂に棲むカオス」
日程|2012年11月10日(土)~12月2日(日)
時間|11:00~20:00
料金|一般 800円 学生 600円
小学生以下およびラフォーレカード会員は無料
会場|ラフォーレミュージアム原宿(ラフォーレ原宿6F)
東京都渋谷区神宮前1-11-6
Tel. 03-3475-0411
http://www.laforet.ne.jp