ART|マッツ・グスタフソン|モード界の第一人者が描く、普遍の美しさ
LOUNGE / ART
2015年5月14日

ART|マッツ・グスタフソン|モード界の第一人者が描く、普遍の美しさ

ART|アーティスト マッツ・グスタフソン

モード界の第一人者が描く、普遍の美しさ

ファッションを題材として第一線で活躍しているスウェーデン出身のイラストレーター、マッツ・グスタフソン。より本質的なテーマを求めて水辺の岩や木々を描き続ける彼の近作を紹介する、待望の個展が開催される。静かで穏やかな世界観は、ざわめく時代のなかで、ひときわ特別なものに見える。

Text by TSUCHIDA Takahiro

ファッションを極めたさきに、行き着いた境地

マッツ・グスタフソンは、ファッションイラストレーターとして1980年からニューヨークを拠点に活躍してきた。その作品は『VOGUE』や『VISIONAIRE』などの誌面を頻繁に飾るとともに、多くのラグジュアリーブランドのキャンペーンヴィジュアルなどに用いられている。手法は主に水彩で、独特のミニマムさと繊細なグラデーションが特徴といえる。

ファッション以外の題材に、彼が力を注ぐようになったのは80年代末。より本質的なテーマを求めた彼は、ヌードや自然を描く作品を発表しはじめた。あるインタビューによると、周囲でエイズが深刻な問題になりはじめたのが一因だったという。やがて彼はマンハッタンにあった自宅兼アトリエ(この部屋はインテリア誌にしばしば掲載されていて有名だった)を引き払い、ニューヨーク州の田舎町へ移った。当時から多く描くようになったのが、この地の水辺の岩や木々。そこには、ファッションとは違う静けさや穏やかさが、高度に洗練された手法で表現された。

現代とは、あたらしいものや変化することの価値が重視されがちな時代である。いっぽう、マッツ・グスタフソンが描く自然は、人類が生まれる前から変わらない姿を保ってきた。彼が用いる水彩や油彩といった技法も、また古くから存在している。彼は、ファッションイラストレーターとして変わりつづけるものの美を極めながらも、ずっと変わらないものの大切さを知っているのだ。

courtesy of the artist and MA2Gallery

4月14日から恵比寿で開催される「TREES AND ROCKS」展は、自然を描いた彼の作品がまとめて展示される日本ではじめての機会。小規模ではあっても、今年開催される最も重要なエキシビションのひとつになるのではないだろうか。

Mats Gustafson「TREES AND ROCKS」
会期|4月14日~5月27日
MA2 GALLERY
東京都渋谷区恵比寿3-3-8
Tel.03-3444-1133
営業時間|12:00~19:00
定休日|月、火、祝
アーティストトーク|4月14日16:00~
この展覧会のために制作した図録(180部限定)も発売。
www.ma2gallery.com

           
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