TOKYO PREMIUM BAKERIES|第13回 ジャンティーユ
第13回 gentille|ジャンティーユ
お年寄りも外国人も小学生も足繁く通う「新・町のパン屋さん」
東京でほんとうに「上質でおいしいパン」を提供しているパン屋さんを紹介する連載第13回は、目黒と中目黒の中間に位置する山手通り沿いにある『ジャンティーユ』。パリをイメージしたやさしい雰囲気の店内は、不思議と気分をリラックスさせてくれます。
取材・文=戸川フユキ写真=高田みづほ
からだにやさしいパンをつくり、人にもやさしくしたいという思い
JR目黒駅と東急東横線中目黒駅の中間の山手通り沿い、「田道」信号の目の前にあるのが、アンティークの木のドアが印象的な『ジャンティーユ』だ。ご主人の坂口 実シェフは、地元でつづくパン屋さんの三代目。パリでのパン修行時代に料理の勉強中だった奥さまと出合い、帰国後、自分たちのスタイルのパン屋をと装いもあらたに店をオープンしたのが2007年のこと。
店名の『gentille(ジャンティーユ)』は、フランス語で「やさしい」という意味で、からだにやさしいパンを提供し、ひとにもやさしくという願いがこめられているそうだが、店内に並ぶパンの顔つきも、皆どこかやさしげだ。
パンは常時50種類ほどが焼かれ、すべてに天然酵母が使われている。酵母は主にライ麦からおこしたルヴァン酵母で、毎日ていねいにつないでいる。
ご主人の坂口シェフは、「うちは昔からのお得意さまが、いまも通いつづけてくださる“町のパン屋さん”なので、ハード系の食事パンも焼きますが、子どもが大好きな昔ながらのクリームパンやメロンパンも欠かせません。やっぱり、子どものうれしそうな顔を見ると、こちらも笑顔になりますよね」と語る。
同店の2階はカフェスペースとなっていて、1階で買い求めたパンを、アンティークの家具に囲まれながら、くつろいだ雰囲気で楽しむことができる。サンドウィッチなど、カフェオリジナルのメニューもあって、散歩の休憩やデートにもうれしい憩いの空間だ。
販売とカフェ担当の奥さまによると、お店のデザインでは「パリのマルシェに並ぶ野菜や果物のようにパンを並べたい。ちょっとパン屋らしくなくてもよいから(笑)」と注文を出されたのだそうだ。
南仏アンティークのドアもさることながら、パンがディスプレイされているカウンターは、旧帝国ホテルを設計したことで知られる建築家、フランク・ロイド・ライトの建築にも多く使われている「大谷石」製で、普通の店舗よりも床からの高さがある。この一見パン屋らしくないデザインが、白を基調としたフレンチスタイルの内装と調和して、いまやジャンティーユ独自の“らしさ”を醸しだしている。
幅広い年代に人気のクリームパン「クレーム・バニーユ」は、スイート生地に、バニラビーンズを贅たくに使用した手づくりのカスタードクリームがたっぷり。また、「フロマージュ・ルージュ」は、ルヴァン種のフランスパン生地に、相性抜群のチーズとドライトマトを包み込んで焼いたもの。取材中にちょうど焼き上がって、店内にチーズとトマトの至福の香りが立ちこめた。おすすめの一品だ。
坂口さんご夫妻が“自分たちスタイル”を実現した『ジャンティーユ』には、あたらしさのなかに不思議とどこか懐かしさが漂う。お客さまが求めるパンは、時代によって変わるかもしれないとご主人は語るが、どんな時代が訪れようと、『ジャンティーユ』が子どもも大人も笑顔になれる、“やさしい空間”であることには変わりないであろう。
gentille
『ジャンティーユ』
東京都目黒区目黒3-1-1
Tel. 03-3712-9610
8:30~19:00(2F カフェ 13:00~16:00 L.O)
日・祝休(2F カフェ : 水・日・祝休)
(JR山手線目黒駅下車徒歩10分、東急東横線、中目黒駅下車徒歩15分)
http://www.gentille.ne.jp/