龍村仁&井出祐昭 Talk Show|New BMW GRAN TURISMO@BMW Studio ONE
Lounge
2015年4月9日

龍村仁&井出祐昭 Talk Show|New BMW GRAN TURISMO@BMW Studio ONE

Chapter 8 Talk Show “Ecology”

第2回トークショウ「環境」龍村仁×井出祐昭

東京 神宮前に2月28日までの期間限定でオープンしたBMW Studio ONEでは、毎週金曜日に各界のオピニオンリーダーをお招きして、「サステイナブルな生活のあり方」をテーマにしたトークショウが開かれます。2月5 日に開催された第2回目のゲストは、 映画監督の龍村仁さんとサウンド・スペース・コンポーザーの井出祐昭さん。おふたりの専門分野である映像と音楽を軸に、「サステイナビリティ」についてお話をしていただきました。

まとめ=オウプナーズ写真=吉澤健太

──こんばんは、モデレーターのロバート・ハリスです。本日は「環境─音と映像の秩序と調和の世界─」と題しまして、映画監督の龍村仁さんとサウンド・スペース・コンポーザーの井出祐昭さんをお招きしました。龍村さんには映像を、井出さんには音を色々とご用意いただいて、盛りだくさんの内容になっています。おふたりとも先ほどスタッフルームで盛り上がりすぎてもうお疲れなんじゃないかと思いますが……。

龍村・井出 (笑)

──それではまず、龍村さんのライフワークであるドキュメンタリー映画『地球交響曲 ガイアシンフォニー』についてですが、これはまさに地球という生命体がいかにバランスよく持続していくかということがテーマのひとつなんですよね。

龍村 ええ、でもどちらかというとそういう生き方をしている「ひと」をメインテーマにしています。

BMW Studio ONE|映画監督 龍村仁さん

BMW Studio ONE|龍村監督作品『地球交響曲 ガイアシンフォニー』

── 映像を観ると、出演者にはなにか共通する部分がありますね。フリーダイバーのジャック・マイヨールさんや写真家の星野道夫さん、沖縄の木版画家 名嘉陸稔(なか ぼくねん)さんなど、個性の強い方々ばかりですが、なんというか皆さん子どもの目をしているというか、とてもいい顔されていますよね。

龍村 そうですね、基本的にはシリアスで難しいひとたちが多いんですが、撮影をしていくなかで、自分が普段言いたかったことがどんどん出てきて、いきいきとしてくる。こちらもそのひとが楽しいと思えるようなやり方で取材を進めていくんです。大変なプロセスだけどおもしろいし、最後にみんなが笑顔になるからいいんですよ。とても素敵なことだと思っています。

──こういった個性豊かな面々がどのように地球とかかわりをもっているかということが『ガイアシンフォニー』の大きなテーマになるわけですね。

龍村 出演者にはいろんな国のひとがいますが、全員が自分の経験を語りながらおなじことを言おうとしているのがよくわかると思います。それは、自分がしてきた生き方や自分が遺した業績は、世間からみたらものすごいことで、もちろん努力するのは当たり前のことなんだけど、自分ひとりの力だけではなくて、「やらせていただいている」んだと。それは我われが地球という大きな生命体の一部であり、「生きている」だけではなく「生かされている」ということ。これは特別なことではなくて当たり前のことなんです。そういった感覚を『ガイア』の出演者たちは皆もっていて、みながみなストレートに表現するわけではありませんが、そういう気持ちが伝わってくる。そこが多くのひとの共感を得ているんではないかと思います。

──「生かされている」というお話がありましたが、井出さんいかがですか。

井出 2005年に行われた愛・地球博は、環境やサステイナビリティがテーマになった博覧会ですが、音のプロデュースを通して「生きてる」ということを考え続ける機会でもありました。木の中の音を一年に渡り300本近く録音したのですが、その音を聴くことで、「生きてる」ということの再認識になるのではないかと思いました。また、人間は環境や食べ物などから生きていくための生命エネルギーを得ているわけですが、同じくらい精神エネルギーも必要としていると思います。

BMW Studio ONE|ロバート・ハリスさん、龍村仁さん、井出祐昭さん

「愛」ということですけれども、たとえば、親から、友達から、音楽から……。しかし、これらの多くは与えられていることが多いわけです。これを認識すると「感謝」が湧いてきて、自然と「与える」というgive側の思いや行動に移ります。行動するとプレゼントの様に与えてるのに与えられている嬉しさを感じる、これがサスティナブルの原点、メカニズムだと思います。今は、時代の変革期で、これから「どう与えていくか」ということがキーワードになると思います。

──このことを、花博で試みたんですよね。

井出 ええ、花博では「花が歓ぶ音楽」というテーマで野球場2面ほどの、巨大なお花畑の音をプロデュースしました。花からなにかをもらうのではなく、花になにかを与えようという考え方の博覧会にしてみてはという提案からはじまりました。花が歓んでいるというのはどうしてわかるのかというと、そのまわりの「空気」が生き生きしてきれいになっていく感じがするからです。ただ、感情べたべたの音楽を流すとドン引きしていることもはっきり出てきてしまいます。このように、音楽には「空気」を創り出す効果もあるんですね。不思議なことにほとんどの方がこの「空気」を感じます。特に日本人は「空気を読む」感覚に優れていて、このことから発する「サステイナビリティ」の見本を日本が世界に示していけるんじゃないかと思っています。何かいい日本語を考えた方がいいですね。

──「持続性」、「長持ち」……ですかね。なにか考えましょう。

井出 ほかにも音楽には、精神的・肉体的なリズムをとりもどす効果があります。病気であることは結局、人間のリズムが崩れているということなんですね。歩幅が狂ったり、呼吸が正常でなかったり。体のリズムを整え、こころを調和することが音楽の一番の効果なんです。ひとつ例をご紹介すると、僕が実践している「必殺ウラノリ・イマジネーション散歩」というのがあるんですが、「ウラノリ」とはいわゆる「アフタービート」というもので、通常とはちがう半拍ずれたリズムのことです。この「ウラノリ」のリズムに乗って歩くことだけでも、はつらつとした気分になります。また、音楽と景色から自分だけの映画の様なイマジネーションが湧いてきます。以前アメリカ最大のガンセンターで音楽療法の臨床研究を3年ほど行ったのですが、キーワードはこの「イマジネーション」で、心身共にたいへん良い効果があることがわかりました。気分的に落ち込んでいる時などはぜひやってみてください。

BMW Studio ONE|「空気」について語る井出さん

BMW Studio ONE|「ウラノリ」のリズムを披露する井出さん

龍村 いや、おもしろいね。僕が映画の編集するときもおなじですよ。そういう意味では全部「ウラノリ」ですね。映画作りは音楽とのコラボレーションだから音楽にはかなりこだわるんだけど、編集点を単純に音楽に合わせて切り替えたりするとものすごく気持ちが悪い。出演者の言葉や表情に合わせたり、ここが気持ちいいと思う編集点を突き詰めていくと、すべて「ウラノリ編集」になるね。そうするとなんというか隙間みたいなものができて、うまい具合にのっていくというか。「ウラノリ」ってそういうことだよね。

井出 まさにその通りですね。

龍村 「サステイナビリティ」を生物学的に考えると、きっとそういうことでもあると思います。右に行ってみたり左に行ってみたり、上に行ってみたり下に行ってみたり、早くしてみたり遅くしてみたりを繰り返していくと、これはやめておこうとか、こうすれば素敵だとか、そういう感覚を直感的に身体で感じられるようになる。そうやって人間の自然治癒力も養われていくんじゃないかと思いますね。

まっすぐにいくのは必ずしも悪いことじゃないけど、それはただ早く、簡単に目的地に着きたいということだよね。人間が物質的な便利さを求めるのはある意味自然なことだけど、生命体そのものはいつでもストレートにいくということはないんです。

──きっとそこにこだわりすぎるとストレスになるんですね。

龍村 どっちがいい悪いというわけではなくて、どっちもあっていいんだけど、直線のなかでばかりで生きていると人間本来のもつリズムが失われてしまうんですね。そういう意味で「サステイナビリティ」というのも自然界の根本にある動きやリズムと連動していて、「気持ちいい」という感覚を得られたときに自然と生まれてくるものだと思います。

──ここでそろそろまとめに入ろうと思っていたんですが、素晴らしい締めのお言葉でした。今のでまとめとさせていただいてよろしいですか(笑)。

世界を見てきたおふたりなだけに物事を大きな視点で捉えていて、ポジティブに今できることから、目の前にある問題を解決していこうというスピリットが感じられました。そういうお話をうかがえてうれしかったです。龍村さん、井出さん、今日はほんとうにありがとうございました。

龍村・井出 どうもありがとうございました。

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