RAT HOLE GALLERY|やなぎみわ展 「Lullaby」
RAT HOLL GALLERY|現実と想像が入り乱れる、終わりのない日常
やなぎみわ展「Lullaby」
“老婆と少女”をモチーフに、これまでに多くの作品を発表しいるやなぎみわ、彼女の最新作からなる個展「Lullaby」が1月 29日(金)~3月21日(日)の期間中開催される。
同化し、入り乱れ、からみあい、もつれあう老女と少女
2009年6月、第53回ヴェネチアビエンナーレ美術展にて日本館への出品作家に選ばれたやなぎみわ。その際発表された「Windswept Women」では、これまで彼女の写真作品に内包されていた演劇性が、より物理的な形をともなったインスタレーションとして具現化された作品となった。
なにより目を引いたのは会場となった日本館の異様な姿だろう。作品展示にあたり、彼女は真っ白な日本館を真っ黒いテントで包んでしまったという。それだけでもかなりのインパクトだが、そこに飾られていたのは巨大フレームにおさめられた現実では考えられない奇怪な身体で嵐のなか猛り狂うひとりの女の姿。
それはやなぎみわ作品のテーマである“老婆と少女”、相反するふたりの“おんな”が交差する奇妙な姿である。
「Kagome Kagome」(1998年)、「Granddaughters」(2002年)、「砂少女」(2004年)、「砂女」(2005年)、「Fortune Telling」(2005年)、そして「The Old Girls' Troupe」(2009年)など、やなぎみわのおおくの映像作品ではできごとのはじめと終わりがあるにもかかわらず、あたかもくりかえされることが当然のように現実と想像が入り乱れる。
現実世界に終わりがないように、彼女によって作りだされた作品内の女性たちにも結末がおとずれることはなく、ひたすら日常における小さな破壊と創造をくりかえす強さをもちつづけているのだ。
今回ラットホールギャラリーで発表される新作「Lullaby」は、以前よりやなぎみわがテーマとしている老女と少女という年代のちがう2人の女性が登場する映像作品。サイズが不釣りあいな閉じられた空間で対立しながらも同化し、入り乱れ、からみあい、もつれあう2人。やがて閉じられた空間は2人の動きがすすむにつれ、変容、崩壊していく。
世代のちがう2人はそれぞれの世代を代表するのではなく、アンビバレントな存在。「Windswept Women」とつながりをもったこの作品は、演劇的ともいえる2人の身体的な対峙、家屋や家族的関係性の無意味性などが映像から浮かび上がってくる。
これまで当然としてきたありとあらゆる概念に疑いが生じるかもしれない。いかようにも変えることのできる真実、均衡の保たれた現実世界がいかに揺らぎやすいものであるかということを、彼女が作りだす美しく奇妙な世界は教えてくれるだろう。
やなぎみわ展
「Lullaby」
会期|1月29日(金)~3月21日(日)
開館|12:00~20:00
休館日|月曜日