TOKYO PREMIUM BAKERIES|第11回 パサージュ ア ニヴォ
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2015年4月16日

TOKYO PREMIUM BAKERIES|第11回 パサージュ ア ニヴォ

第11回 Passage à niveau|パサージュ ア ニヴォ

目指すのは、休日の朝にお父さんがバゲットを買いに来るパン屋

東京でほんとうに「上質でおいしいパン」を提供しているパン屋さんを紹介する連載第11回は、JR中央線武蔵境駅からほど近い場所で若いご夫婦が営む『パサージュ ア ニヴォ』。オリジナルキャラクターの「バゲットくん」が示すように、看板商品は粉の味がしっかりとする本格派のバゲットです。

取材・文=戸川フユキ写真=高田みづほ

大切にしたいバゲットの口溶けと歯触り、そして小麦本来の味

JR中央線武蔵境駅の南口、線路に沿ってビルの間の路地を三鷹方向に歩くとほどなく、通りの向こうの赤レンガ色の建物が目に留まる。その一階左側の店が、フランス語で「踏切」という名前の『パサージュ ア ニヴォ』だ。ウィンドウには、「Ici se trouvait un passage à niveau.Arrétes-vous ici comme à ce temps-là. (ここには踏切がありました。その時のようにあなたはここで足を止めてください)」と書かれている。昨年の12月まで店の前にあった「開かずの踏切」は、JR中央線の高架化工事にともないに姿を消し、いまでは本当に店名に残るのみとなった。

オープンして2年目、若い大和さんご夫婦が営むこの店は、奥さんがパン職人で、旦那さんが販売担当だ。シェフの祥子さんは、家の近くのパン屋さんのバゲットのおいしさに感動し、そこからパンに興味をもって教室に通いはじめ、PAULなどの有力店で修行を積み、パリでも修行を重ねたという、まさに「パンづくり」の魅力に取り憑かれてしまった職人だ。

おふたりの出会いは祥子さんがパン職人を目指す前ということだが、いまでは生き生きとパン創作に精を出す祥子さんとスタッフを、販売担当の真さんがしっかり支えるという「チーム」が確立し、なんとも微笑ましい明るいムードを店内に醸し出している。

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看板商品は店のキャラクターにもなっている「バゲット」。フランス産とカナダ産の小麦をブレンドし、硬水コントレックスと浄水、沖縄の塩を使い、16~24時間近くの長時間発酵で小麦本来の味を引き出した人気商品だ。

店のキャラクター「バゲットくん」は、祥子さんの同級生のイラストレーター・斎藤ひろこさんによるものだそうだが、パンを入れる袋やスタッフの着るTシャツに描かれたそのユーモラスな表情が、お店全体をまた一段と親しげな印象にしている。

もうひとつ、子どもにも大人気なのが「カスタメロン」。じつは、パン生地の上に載せたクッキー生地がずれてしまった失敗作に、真さんがチョコレートで顔を描いたのが誕生のきっかけだったそうだが、ひとつひとつ表情の違うこのパンを、毎回真剣に選ぶ「小さな常連さん」も多数いるようだ。もちろんパンのなかには香り豊かなカスタードクリームが入っている。

武蔵境は最近多くのマンションが新築され、“若い家族”が多く住む町だそうだ。取材中も、自転車に小さな子どもを乗せた若いお母さんが、多く店を訪れていた。対面販売の小さなパン屋さんであるが、通りからも店内の様子がわかり、とても入りやすい外観だ。

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祥子さんのパンづくりのモットーは、気温や湿度が違っても「いつも同じ状態のパンをつくること」。現在使用している酵母はドライイーストと生イーストとライ麦の酵母。さらに天然酵母のルヴァン種を使ったカンパーニュも日替わりで4種類が揃う。今後は国産小麦100%の皮も柔らかいバゲットも焼いてみたいと語る祥子さん。キラキラとうれしそうに光る「職人の瞳」が印象的だ。

2008年8月のオープン以来2年目と、お店としてもまだ若い『パサージュ ア ニヴォ』は、祥子さんとスタッフの研究熱心さと真さんの心温まる接客で、これからも目が離せない西東京の一店となることは間違いなさそうだ。ショーケースにはほかにも、季節のお菓子や手づくりのフィリング入りカレーパン、小さなココット型に入ったリエットなどが並ぶ。『パサージュ ア ニヴォ』は隅から隅まで「おいしいもの」が揃う、うれしい一軒である。

Passage à niveau『パサージュ ア ニヴォ』
東京都武蔵野市境南町1-1-20 タイコービル1F
Tel. 0422-32-2887
8:00~18:00ごろ(売り切れ次第閉店)
毎水曜・第一火曜休
(JR中央線、武蔵境駅下車徒歩2分)

           
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