Chapter 6 Interview 今森光彦|New BMW GRAN TURISMO@BMW Studio ONE
Chapter 6 Talks About Sustainability|Interview with IMAMORI Mitsuhiko
今森光彦|里山に学ぶサステイナビリティ
文=富山英三郎写真=五十嵐隆裕/Jamandfix取材協力=LAS CHICAS/横浜の薪屋さん
いきものとの関わり
僕は小さいときからいきものが大好きで、生まれ育った滋賀県大津で身近に接してきました。でも、僕のイメージするいきものは原生の自然にはいないんですよ。すべて人と関わりのある場所にいたから。フナも田んぼや小川で捕りましたし、かぶと虫も神社にいました。ひとっこひとり入らない場所で自然だけが行き続ける環境なんて、日本にあるのかなって思うほどです。
僕は昆虫も撮れば、風景も人物も撮影します。何故なら、命を通していかに人が自然と関わりを持つべきかを表現したいから。逆に言えば、いきものたちはいかに人間と関わりを持ってくれるのかということ。自然を眺めるのではなく、自然と関わるために写真家を目指したんです。
人間が育てた自然
サステイナブルな生活というのは、人間の基本的な生き方だと思っています。その代表的なものに里山があります。僕らが育てている「萌木の国」という里山に事務所を構えて、もう20年が経ちます。僕が考える里山というのは、人と生物が共存する空間という意味であり、日本古来の農業環境のこと。一般的に人間が関わると自然は破壊されると思われていますよね? でも、日本古来の稲作文化においてはそうではなかった。
昔は肥料として落ち葉を使っていたから、田んぼを作るときに人工の森、つまり雑木林も作らなきゃいけなかったんです。田んぼを1反作るには、その3~4倍の森を作らないと維持できない。そうやって、小さな森を作り、田んぼという湿地ができ、土手やあぜ道といった草原ができる。ミニチュアのような自然環境が生まれることで、里山には生物たちがどっと流れ込んできたわけです。それを数千年かけて築いてきた。今問題になっているのは、人間が自然と関わりを持たなくなっていること。田んぼや雑木林を放置してしまうと、いきもののボルテージが下がってしまう。すべての生物は互いに影響しあっているので、何かひとつでも欠けるとそのシステムは壊れてしまうんです。
持続することの大切さ
これまで、社会は新しいものを一所懸命作ってきました。新しいものばかり望んで、変革がいいことのように思われてきた。でも、生物の理論からすると、毎年同じことが繰り返し起こらなくてはいけない。春になったら同じ花が咲いてくれないと困ってしまうわけです。そう考えると、人間だけが新しいものを追い求めている気がしますね。
自然をうまく「利用」する
「サステイナブル・ライフ・ラゲッジ」で選んだ薪は、事務所の薪ストーブで使っているものです。雑木林も定期的に伐採して使っていかないと、生物はどんどん減ってしまいます。「萌根(ぼが)更新」と呼ばれる伐採の循環は、ひとつの雑木林で18年周期。そのシステムを保つことでいきものの多様性も生まれるんですね。ただ自然があればいいと思っている人がまだまだ多いですが、放置するのはもっとも罪なこと。自然公園などの考え方とは正反対なので理解され難いですが、実はサステイナブルであるためには自然を積極的に使っていかなくてはならないのです。
もうひとつのラゲッジ・アイテムは手ぬぐい。この絵柄は、僕が切り絵で作ったものです。小学生のとき熱中していた遊びで、自分に子どもができて久しぶりに作ったら予想以上に体が覚えていました(笑) 以来、手遊びのひとつとして続けているんです。幼少期に得意だった事柄って、意外とサステイナブルなものかもしれないですね。
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