TOKYO PREMIUM BAKERIES|第9回 ネモ ベーカリー&カフェ
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2015年4月16日

TOKYO PREMIUM BAKERIES|第9回 ネモ ベーカリー&カフェ

第9回 nemo Bakery & Café|ネモ ベーカリー&カフェ

パン職人歴20余年のシェフが焼く 「本当に自分がつくりたいパン」

東京でほんとうに「上質でおいしいパン」を提供しているパン屋さんを紹介する連載第9回は、東急目黒線の武蔵小山駅近くの『ネモ ベーカリー&カフェ』。活気ある“町のパン屋さん”は、今日もおいしいパンとコーヒーを求める多くのお客さんでにぎわっていました。

取材・文=戸川フユキ写真=高田みづほ

からだにやさしい素材、「粉と酵母」の特長をしっかり活かす

全長800メートルを誇る昔ながらのアーケードが圧巻の武蔵小山商店街の前を通り過ぎ、通りを一本渡ってまもなく、落ち着いた店構えの『ネモ ベーカリー&カフェ』を見つけた。たくさんの魅力的なパンが並ぶベーカリーコーナーの奥には、アンティークを基調とした内装が心地よいカフェが併設され、焼きたてのパンを飲物と一緒に楽しめるようになっている。町には少々失礼ながら、武蔵小山っぽくない、ずいぶんと洒落たパン屋さんなのである。

根本孝幸シェフは、原宿のオーバカナル、白金のアトリエ・ド・リーヴなどの名店でベーカリーシェフを歴任してきた、パン焼きのキャリア20年を越えるベテランだ。なんと15歳でパン屋さんに就職した当時は、「パンは別に好きでもなかった」のだそう。しかも当時のパン職人の世界は上下関係が非常に厳しく、逃げ出したくなることもあったが、「つくる難しさ」と「仕事をする先輩のかっこよさ」に憧れて頑張りつづけ、ついに自分の名前を冠する店をもつまでにもなったというわけだ。

ネモのパンづくりのこだわりは、「おいしいものを、おいしくつくる」こと。「いくら上等な素材を使っても、つくり手に素材を活かす力がなければ、おいしいパンはつくれないですからね」。根本シェフがさらりと発する言葉には、長年培った経験と技術への自信が溢れている。氏が選ぶよい素材とは、からだにもやさしい素材だ。タマイズミをはじめ十数種類の小麦粉を使い分け、メニューごとに独自のブレンドをほどこし、またフルーツや小麦粉からおこす自家製の天然酵母も使ってパンを焼く。

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一番のおすすめは「クロワッサン」。小麦粉からおこした天然酵母を使用し、生地に発酵バターをふんだんに練り込んで、ひとつひとつ丁寧に焼かれる。バターの含有量が多いので、生地を落ち着かせるために冷蔵庫で寝かせ、仕込んでから3日目に焼き上げる。

お店によって特長が違う「クロワッサン」だが、ネモの「クロワッサン」は、とくにまわりの皮がハラハラと軽く、生地はしっとりとバターの香りが濃いので、食べたときの満足度が高いような気がする。また、従来はうどんなどに使用されていた小麦のタマイズミを使ったバゲット、「タマイズミ」も人気の一品。もちもちの食感と小麦の甘みがしっかりとするのが特長だ。

なぜ武蔵小山を選んだのかをシェフに聞いてみると、最初に勤めたお店が地域密着の町のパン屋さんだったのだそうだ。それから20年以上、デパ地下や原宿や白金など、いろいろな所でパンを焼いてきた結果、「お客さんの顔がわかる町のパン屋さんが、やはりパン屋のあるべき姿なんじゃないかな……と思ったんです。だからこの町の人に、毎日でも楽しみに来ていただきたいんです」との明確な答えが返って来た。

子どもからお年寄りにビジネスマン、女性のひとり客やベビーカーでも気軽に入れて毎日でも寄りたくなる、いい匂いが漂う町のパン屋さん『ネモ』。経験豊かな根本シェフが気合いを入れてはじめた店は、オープンから2年、いまやお馴染みさんをたくさん抱える、正真正銘、武蔵小山の名店となった。

ネモ ベーカリー&カフェ『nemo Bakery & Café』
東京都品川区小山4-3-12 TK武蔵小山ビル1F
Tel. 03-3786-2617
営業時間|9:00~23:00
水曜休
(東急目黒線、武蔵小山駅下車徒歩1分)
http://www.nemo-bakery.jp/

           
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