INTERVIEW|A BATHING APE®プロデューサー・NIGO® インタビュー(前編)
コンピレーションアルバム『TOKYO SUITE SELECTED BY NIGO®』リリース
A BATHING APE®プロデューサー・NIGO® インタビュー(前編)
数々のプロジェクトで注目を集め、トウキョウのカルチャーをつくりつづけている『A BATHING APE®』プロデューサーのNIGO®氏が、こんどは開業15周年を迎えた“パーク ハイアット 東京”とコラボレーションしてコンピレーションアルバム『TOKYO SUITE SELECTED BY NIGO®』を11月25日にリリースした。
文=金子英史Photo by masaco
今回は自分の音楽のルーツを辿りながら、コアな東京のカルチャーをイメージ
コンピレーションアルバム『TOKYO SUITE SELECTED BY NIGO®』は「“パーク ハイアット 東京”で過ごす、至福のひととき」をコンセプトにした作品だが、まさにトウキョウのカルチャーがこの一枚にパッケージされていた。彼はどのように感じて選曲したのだろうか。アルバムタイトルにもなっているパーク ハイアット 東京のTOKYO SUITEでお話を伺った。
──コンピレーションアルバム『TOKYO SUITE SELECTED BY NIGO®』の選曲の話が来たときは、まずなにをイメージされましたか?
まずは、今回こういうカタチでご指名をいただいて、すごく光栄でした。パーク ハイアット 東京にはソフィア・コッポラの映画のイメージがありますよね。あのサウンドトラックは僕も好きですが、やはり海外から見た東京なんだと思います。今回はあえて自分の音楽のルーツを辿りながら、コアな東京のカルチャーをイメージしました。
──パーク ハイアット 東京はよく使われるのですか?
ランチやディナーでもよく利用させてもらってます。
──どういう部分に好感をもたれていますか?
飽きのこないところ。なかなか難しいことですが、それをオープンから15年間、キープしつづけているのはすばらしいと思います。
──アルバムのカバーにもなっている“TOKYO SUITE”の部屋についてはいかがですか?
できることなら、住みたいです(笑)。コンセプトが非常に面白いと思います。
──ほかのホテルのスイートルームとはちがう?
国内外を飛び回っていると、いろいろなホテルに泊まりますが、そのなかでもパーク ハイアットは間違いなくトップクラスのブランド。上海のパーク ハイアットも大好きですよ。
──NIGO®さんとフィットするなにかがあるのでしょうか
あると思います。僕はベーシックなものが好きなので、バスルームのタイル石の色ひとつひとつ、シャワーヘッドのデザインなども気に入っていて、家のバスルームをつくるんだったら、ホテルとおなじ色にしたいな、と思います。飽きがこないですから(笑)。
ヒップホップが時を経て、ヒップポップになったという流れをつくってみた
──今回のアルバム『TOKYO SUITE SELECTED BY NIGO®』は、80年代後半から90年代前半の東京の曲が中心ですが、やはりNIGO®さんも当時、クラブやパーティに行かれていたのですか?
僕は89年くらいからクラブに行きはじめているのですが、じっさいは86年くらいから“東京のサブカル”的なものには影響を受けています。80年代って、すごくのりしろが多かった、そういう東京だったと思います。これからどんどん面白くなっていくだろうみたいな、前向きな東京、そういう時期でした。
──10月にNEW YORK BARで行われたリリースパーティでは、いとうせいこうさんと高木完さんがライブをやられていましたね
あの世代の方たちからはかなり影響を受けています。しかも、彼らはいまでも現役だし、影響力がある。あのパーティは80年代後半のパーティの雰囲気を出したくて、おふたりにもお願いしました。
──いまの若い子たちがあのパーティを経験したら、あの雰囲気は新鮮に感じると思うのですが?
たしかに、そうですね。
──そういう部分を再提案されたということで、NIGO®さん的ななにかもくろみみたいなものはあったのでしょうか?
たまたまなのですが、“ルーツに帰る” というか。僕もファッションだったり、いろいろな面を見直している今日このごろだったので、タイミングとしてはすごくよかったんです。あのパーティもそうですが、このCDも聴く人によってはなつかしくも思えるし、あたらしくも思える。そういうカルチャーを、“伝承していくモノ”になればいいなと思っています。
──選曲の順番はどのように考えられましたか?
TOKYO SUITEに泊まっているときに、イメージを固めていきました。このラインナップにしようと、だいたいは頭のなかにあって、そのなかからチョイスして並べました。
意味あい的には、いとう(せいこう)さんからはじまって、その遺伝子がリップスライムに到達したという、ヒップホップが時を経て、ヒップポップになったという流れをつくってみました。でも、彼ら(リップスライム)は、いとうさんの影響を直接受けているわけではないんです。それがまた面白いんですけど。そういうカルチャーの流れの感じにしてみました。
──選曲について、たとえばせいこうさんでもいろいろな曲があるなかで、「東京ブロンクス」を選ばれた。NIGO®さん的にどういう意図で選曲されたのでしょうか?
まず、東京ありきです。あとはパーク ハイアット 東京のCDなので、あまりハードコアな曲ではなく、心地のいいサウンドを選びました。小山田(圭吾)くんの曲なんかはドラムンベースっぽいのですが、よく聴くとアンビエントだし、これが心地いいんですよね。
──プラスチックスが入っていますが、中西(俊夫)さんにも影響を受けたのでしょうか?
僕は“メロン”が先なんです。この曲自体は80年の曲なので、そのころの僕はまだ小学生ですけど(笑)。さすがにリアルタイムでこの曲自体に影響は受けていませんが、“東京のサブカル”が産声をあげた、そういうカルチャーのキーになるバンドだと思います。ここからまわりの人たちが派生して、広がっていったんじゃないでしょうか。
──“yen town band”というのは、チャラさんの映画『スワロウテイル』のサントラですよね。
これは曲のタイトルから選曲しました。「東京ブロンクス」も“東京”という部分にひっかけてある意図もあります。
DJは人の音楽を流す、スタイリストは人の服でコーディネイトする
──NIGO®さんは、アパレルのほか、いろいろなプロジェクトをやられていますが、そのなかでも音楽活動にはとてもチカラが入っているように感じます。そこにチカラを注ぐことは、NIGO®さん的にはどういう姿勢なのでしょうか?
僕はファッション畑の人間ですが、パンクの格好をしたらパンクの曲を聴く、それってひとつのパンクのカルチャーだと思うんです。ヒップホップもいっしょで、RUN DMCを聴いて、彼らの格好を真似して、ヒップホップのカルチャーができる。
それに音楽は空気といっしょで、あってあたりまえみたいな感じのモノですが、逆を言うと、なくてはならないモノだと思っています。空気は、人が生きていく上でなくてはならないものでしょう? 音楽にかんしては、そういう捉え方をしているので、僕のなかではすごく重要な位置にあります。
──すべてにおいて、それがファッションなどに派生したりしていますからね
あとは曲をつくってパッケージにするという、その過程というか、創作が面白いんです。もともとは、ファッションよりも先にDJからはじまっているので、その流れでテリヤキボーイズのCDを出したり、ファッションもスタイリストからはじまって、デザイナーになったという感じです。
DJは人の音楽を流す、スタイリストは人の服でコーディネイトする。ともに人のモノを使うというスタイルですが、それが進化して、借り手からつくり手に変わるという、僕にとってはその過程がけっこう面白いというか、楽しめるカテゴリーなんです。
──セレクターからクリエイターになるというコトですよね
そうです。
『TOKYO SUITE Selected by NIGO®』
2500円/発売中
SOUNDS OF PARK HYATT TOKYO(Code XQHW-1001)
01. 東京ブロンクス/いとうせいこう & TINNIE PUNX
02. O・ZONE/GYMNOPEDIE NO. 1/WORLD PIECE/近田春夫
03. HIROSHI'S DUB SAVANNA MIX/T.P.O.
04. WHEN YOU GONNA WAKE ME UP/NATURAL CALAMITY
05. ON MANI/OOIOO
06. かすかなしるし PIANO/SUBLIMINAL CALM
07. STAR FRUITS SURF RIDER/CORNELIUS
08. PEACE/PLASTICS
09. SENTIMENTAL DUB/LUV MASTER X
10. FREEDIVING feat. BEN LEE STEREO MC'S REMIX/NIGO®
11. AFTER THE RAIN/MUTE BEAT
12. SUNDAY PARK/YEN TOWN BAND
13. TIME TO GO/RIP SLYME
パーク ハイアット 東京
www.parkhyatttokyo.com/