INTERVIEW|□□□(クチロロ)インタビュー(前編)
Lounge
2015年3月5日

INTERVIEW|□□□(クチロロ)インタビュー(前編)

アルバム 『everyday is a symphony』 リリース記念

□□□(クチロロ) インタビュー (前編)

三浦康嗣と村田シゲによる音楽ユニット“□□□(クチロロ)”に、あらたにいとうせいこう氏が電撃加入。今回は、いとうせいこう氏の加入に至った話から、12月2日(水)にリリースされる最新アルバム『everyday is a symphony』のアルバムの制作まで、□□□の三浦康嗣さんといとうせいこうさんのおふたりにお話をうかがった。

文=金子英史Photo by □□□

僕の人生にそれまでなかったこと──いとうせいこう

もともと「おばけ次元 by OBK」という曲でも共演を果たしていた彼らだが、いとうせいこう氏の□□□(クチロロ)加入には、正直驚いたファンもおおいことだろう。

さらに、12月2日にリリースされる最新アルバム『everyday is a symphony』は、“フィールドレコーディング・オーケストラ”と銘打ち、その名のとおり普段聴き慣れた生活音をサンプリングし、再構成をおこなったという、かなりコンセプチュアルな作品だ。音楽的にも、歌詞的にも、クオリティアップをはたしたことは、まさに“一聴”瞭然ともいうべき一枚になっている。
また12月5日(土)には、代官山UNITにて『everyday is a symphony 御披露目会』が行われ、その内容も徐々に明らかになってきている。

──せいこうさんが□□□に加入することになった経緯を教えていただけますか?

いとう 最初は、スペースシャワーTVの『音知連』というクイズ番組に僕が出演していたのですが、楽屋にいたときに、モニターに□□□のミュージックビデオが流れていて、すごく興味が沸いたんです。で、「会いたいから呼んでもらえない?」とスタッフに言ったら、すごくタイミングがよくて──。プロモーションの時期だったんだよね?

三浦 そうです。

いとう それで、□□□のメンバーが来てくれて。そのときにアルバムに一曲参加してほしいと話をもらったので、「もちろんいいですよ!」って。それで「おばけ次元」という曲をやったんです。偶然のかさなりですけれど、目の前にある楽屋モニターの音が気になって、しかも呼んでほしいと思ったのは、僕の人生にそれまでなかったんですね。でも、どうしてもこの人たちを知りたかったし、そのときに会えて本当によかった。

三浦 タイミングバッチリみたいな感じでした。

──なるほど。□□□的にはせいこうさんに声をかけたのはどういう意図だったのでしょうか?

三浦 せいこうさんのラップの作品が好きだったんです。本当は好きなミュージシャンだから一緒にやりたいとかは思わなくて、むしろやりたくないと思うんです。聴いているだけの方がいいんですよね。でも、なんだかわからないのですが、せいこうさんのコトは好きで、かつ一緒にやるべきというと大袈裟ですけれど、やりたいと思ったんですよ。

いとう 僕は非ミュージシャンだし、思いつくのが仕事だから、形式にとらわれない制作の仕方を、いろいろと思いつくワケですよ。たとえば前回は、mixiのコミュニティ内に歌詞を書こうとか。そうすると、バース(ラップの部分)が3小節とか8小節、4小節、2小節になるんです。思いついたコトを書いているから。それをくっつけて歌詞にしようとかね。とにかく、そういうやり方をして、僕は最後に調整するのかなと思っていたら、そのままスタジオに入って、自分たちが書いた歌詞をバラバラに乗せていくというコトをやっていて──

彼らの自由さは、まさに僕がやりたかったことなんですよ。モノをつくる上で風通しがよかったんですよね。今回は制作過程の途中で、僕がtwitterにすごく興味を示して、いまもアイデアを打ち込んでいるけれど、twitterで制作過程を発表してみたり。なるべく新しい思いつきを優先して、クリエイティブを優先するというのが、スタッフにもいきわたっていたんです。
僕は、音楽的にメジャーではないところにいたから、新しく音楽制作をするメンバーと巡り会えたなと思いましたよ。それに(三浦)康嗣と(村田)シゲのつくった『Tonight』というアルバムがとても好きだから、こんな人たちと一緒にやれるのはホントにうれしいと思っていますよ。

三浦 ありがとうございます。

「入りたい!」と言ってくれたひとは、いままでいなくて──三浦康嗣

いとう 加入にかんしては、「オレを入れろ!」って言ったんだよね(笑)。康嗣が『Tonight』をつくり終えたときに、「“Tonight”という表題曲は、いままで自分の次元にない曲をつくったので聴いてくれ!」みたいなことで、聴いたらすごくよくて。それで──、いっしょに渋谷で酒を飲んだんだよな?

三浦 そうです。

いとう 酔っていくうちに「おい康嗣、オレを入れろ!」みたいなね(笑)。シゲもいない現場だったよね?

三浦 いなかったですね。

いとう ホント、ヤバいよ(笑)!

──もともと□□□というのは、いろいろ形態を変化させてやってきたバンドですよね?

三浦 不特定多数グループとしてはじめたんです。誰がいても、誰もいなくてもいいくらいの感じだったんですけれど。ただ、「入りたい!」と言ってくれたひとは、いままでいなくて──

いとう そうなの!?

──そうなんですか?

三浦 ええ。飲み会で知り合ったひとが楽器ができたから、とりあえずスタジオに一緒に入るみたいなことを、ずっとやってきたんです。だから、自分から入りたいと言ってくれた人はせいこうさんが初めてで。こんなうれしいことはなかったですね。

いとう なんで「入りたい!」って言ったんだっけ? そのとき食べていた魚がおいしかったからとしか思いつかない(笑)。

三浦 宮崎料理屋でしたよね。

いとう あそこは魚がウマかったな。

三浦 そんなに飲んでいなかったので、酔っていたワケでもないですしね。

こんないいアルバムができちゃったんだよね、康嗣さん(笑)──いとうせいこう

いとう つまりは、康嗣とシゲに天才的なものを感じたからね。「Tonight」をリリースした時点でこの人たちは天才だけど、自分が入ったらもっとスゴくなるという編集者的な勘と、自分もこの音の上でラップをやったら一緒に高みにいけるという確信があったんですよ、僕には。そんなふうに同時代に出会うことってあまりないよ。もし、マルコム・マクラーレンがアルバム『Duck Rock』をつくっているときにロンドンにいたら、絶対に「メンバーに入れてくれ!」って言っていると思うもん。
ヒップホップというのは、みんな忘れがちだけれど、ものすごいレベルのミクスチャーなんですよ。スライ・ストーンがバリバリのころに、「なんでもやっていい」と言われたら、一生懸命楽器を覚えるよ。だって、一緒にプレイしたいもん。そういうモノが□□□にあったと思うんですよね、そのとき。だから、こんないいアルバムができちゃったんだよね、康嗣さん(笑)。

三浦 うまくつなぎましたね(笑)。

いとう いやいや、ホント満足しているんだよ。一日最低1回は聴いていますよ。

三浦 ホントですか?

いとう うん、お風呂に入るみたいな感覚(笑)。

三浦 お風呂に入る感じって、素晴らしいですね。

──今回のアルバムは野外の音を録音した、いわゆるフィールドレコーディングが中心ですが、なぜそのような制作方法をとったのでしょうか?

いとう フィールドレコーディングの話になったのは、去年(08年)の年末くらい。3人でいままでの流れをまとめていて、それまではブレイクビーツのサンプリングで再構成をしていたけど、必然的に“音源は音楽に限らない”ということになるワケですよ。ブレイクビーツをサンプリングすることと、そこら辺の音をサンプリングすることに違いはなくて、どれをサンプリングしてもいいんじゃない? って。すべては音楽だし。

三浦 フィールドレコーディングはコントロールできないんですよ、音楽ですらないですから。でも、そういうやりがいはありましたね。

いとう とにかく、そのときすでに僕のあたまのなかには、「everyday is a symphony」というタイトルも決まっていて、そこでタイトルも決定でしたから。1時間もしないうちに、だいたいのことが決まったんです、音以外は。

三浦 アルバムのタイトルが制作前から決まったのは初めてですよ。

いとう その日から3人が面白いと思った雰囲気を、それぞれEDIROLのレコーダーに録ったんです。

twitterで「共有に音をあげたんで聴いてください!──三浦康嗣

──「卒業」もそうですが、かなり切り貼りされていますよね

いとう そう! 再構成ね。フィールドレコーディングはあたらしいモノではないのですが、基本的にAという音をずっと音楽の後ろに流しておくというのはよくあるパターンですよね。でも、康嗣はそうではなく、チョップしたというのは発明ですよ。ほかにいるのかな? 現実の音をチョップして再構成したタイプのひとって。

──あまり聞かないですね。音楽的な元ネタがあっての切り貼りというのは

いとう メガミックスだよね。

──そういうのはありますけれども

いとう 現実音はないでしょ?

──フィールドレコーディングを──

いとう それをポップなメロディに仕立ててしまうということはないですよね。僕のあたまのなかにはデビット・ホックニーみたいな絵──いろいろな角度からの分解図がキレイにならんでいるみたいな絵。そんな感じですよ。そういう発明が出てきたのは、僕の領域ではなく康嗣の領域ですよ。いってみればダブルプロデューサーみたいな感じ。
さらに共有サーバーに録った現実音をアップロードして、データを共有しているから、「あいつ温泉の音を録っているんだ、オレも温泉の音があるからあげよう!」とか、そんなこともできたんですよ。

──バーチャルスタジオにみんながいるみたいな感じですね

いとう バーチャル“空き時間”スタジオね。

三浦 プラス、twitterですね。twitterで「共有に音をあげたんで聴いてください!」ってあげるんです。

いとう それだとまわりの人もなんとなく見ているから、みんなと並走している安心感があるんですよね。3人だけでやると行き詰まっていたと思うよ、結構な熱量がありますからね、このアルバム。でも、そういう自由なメディアをあたらしく、遊びでつかっているうちにものごとがいい方に巡っていった感じですかね。
それはジョン・ケージがやっていても、おかしくはないという気持ちがありますから。みんな現代音楽を大真面目に見すぎなんですよ。ヤン(富田)さんを見ていていつも思うんですけれど、現代音楽ってユーモアがあるかないか、その部分が大きいと思うんですよね。ジョン・ケージにはユーモアがある。ヤンさんにももちろんあるワケですよ。
今回の□□□なんかは、冗談音楽なんじゃないかという領域もありますから。もともと現代音楽というのは、冗談音楽とすごく密接で、ヤンさんも冗談音楽からいっぱい音源をもってきていますからね。それは“行く道”が正しいですよ。カッコイイのか、おかしいのか、わからないみたいな。

三浦 アルバム7曲目の「有志の宝くじ」とかは、ほとんど冗談音楽ですもんね

いとう だけど、あの芝居のスゴさで、「たしかにこうなるかも」とかも思いながら聴く日もあるし、「馬鹿じゃないの!」とふきながら聴ける日もある。それが音楽にとっての“豊かさ”なんじゃないでしょうかね。気分によってちがったものに聴こえるというのは、すごく大事なコトですよ。

三浦 泣く用の曲とか、胸キュン用の曲とか、“聴いた人をこういう感情にさせる”という狙いにハマる人が、それを聴くという感じがありますよね。そういうのはあまり好きじゃないんです。では、どうやって泣かせるかというところなんですけれど。

□□□ 6th ALBUM『everyday is a symphony』
2009月12月2日(水)発売
2940円
commmons(RZCM-45948)
commmons official siteにて全曲試聴実施中!
http://www.commmons.com/index.html#artists/kuchiroro/release

□□□ official Web Site
http://www.10do.jp/kuchiroro

三浦康嗣 twitter
http://twitter.com/koshimiura

村田シゲ twitter
http://twitter.com/ughhellabikini

いとうせいこう twitter
http://twitter.com/seikoito

everyday is a symphony 御披露目会
2009年12月5日(土)
東京・代官山UNIT
時間│18:00 open / 19:00 start
ゲスト│オータコージ(曽我部恵一BAND)/中村有志
演出│伊藤ガビン
全席自由 前売 3150円(ドリンク代別途)
問い合わせ
ホットスタッフ・プロモーション
Tel. 03-5720-9999
http://www.red-hot.ne.jp/

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