TOKYO PREMIUM BAKERIES|第5回 ARTISAN TERRA|アルティザン・テラ
第5回 ARTISAN TERRA|アルティザン・テラ
生きものである「酵母」の声を聞きながらつくるパン
東京でほんとうに「上質でおいしいパン」を提供しているパン屋さんを紹介する連載第5回は、池尻小学校にほど近い三宿通り沿いの『アルティザン・テラ』。三宿でレストランやパン、洋菓子店を展開する『ラ・テール』の姉妹店です。職人(アルティザン)の名前にふさわしく、シェフの素材やパンづくりへのこだわりは、並々ならぬものでした。
取材・文=戸川フユキ写真=高田みづほ
「有機JAS認証」取得のパンと、生産者のわかる国産小麦
国道246号線を三宿交差点で世田谷公園方面に曲がって数分、洒落たレストランが点在する三宿通り沿いの『アルティザン・テラ』は、パリのブーランジェリーのようなおしゃれな店構えだ。ガラス越しに見えるパンや焼き菓子が、通りがかる人の気分をなんともウキウキとさせる。
パン屋さんの三代目に生まれたシェフの栄徳 剛氏であるが、現在はラ・テールグループで『ブーランジェリー ラ・テール』と、この『アルティザン・テラ』の両方のパンを統括している。とくにこちらの『アルティザン・テラ』では、職人の技を活かし、有機の素材にこだわって、提案型のパンや焼き菓子をつくっている。
「毎日同じパンをつくっていても、本当に日々違う作業をしているんです。」と栄徳氏。パンの発酵の度合いは、その日の天気や気温によって微妙に違うため、生地を見ながら水分量や発酵時間を調節する必要がある。酵母が生きものであることを、ひしひしと感じる毎日なのだそうだ。
『アルティザン・テラ』のパンは、素材に徹底的にこだわる。
小麦も酵母も有機のものが中心で、小麦粉は10種類以上を、また酵母は自家製のぶどう酵母をはじめ数種類を使い分ける。とくに、工房と10品目のパンが「有機JAS認証」を取得しているのは、全国でもかなり貴重なことだろう。
有機JAS認証の素材のみを使い、工房や工程など決められた手順を厳格に守ってつくられるパンは、どれも噛みしめるほどに粉の深い味わいがする。ラベルに付けられたグリーンのマークがその証だ。
また北海道は片岡農園の「ハルユタカ」をはじめとして、生産農家がわかる国産の貴重な小麦粉を数種類使用しているのも特長。現地まで収穫を見に行き、生産者と直接話をするので、「身内がつくっている材料を使わせてもらう」感覚になるそうだ。
「だから農家さんに失礼のないパンをつくろうっていう気持ちが強くなるんです」と栄徳氏は語る。
もうひとつの看板商品、店内を華やかに彩る焼き菓子は、フランス料理と菓子の研究家、大森由紀子氏の監修によるもの。ガレットをはじめとするフランスの地方の伝統菓子が月替わりで登場し、しっとりとしたリッチな味が贈り物にも人気だ。
店内のカフェスペースでは、お菓子やパンを飲物と一緒に楽しむことができる。
これからも、毎日食べる基本的なパンをしっかりとつくりながら、『アルティザン・テラ』にしかできない、提案性のあるメニューを展開していきたいと栄徳シェフ。
「今日も、ミントが焼き込まれた、ちょっと珍しいクロワッサンがあそこに並んでるんですよ」と教えてくれたシェフの横顔は、探究心旺盛な「職人の顔」そのものであった。
ARTISAN TERRA『アルティザン・テラ』
東京都世田谷区下馬2-44-11
Tel. 03-5787-8850
10:00~20:00(カフェは~19:00)
(三宿通り、池尻小学校近く)
http://www.laterre.com/artisan/