RAT HOLE GALLERY｜イザ・ゲンツケン（Isa Genzken）日本初の個展「OIL XV / XVI」

RAT HOLL GALLERY｜イザ・ゲンツケン日本初の個展

「OIL XV / XVI」展

10月2日(金)より12月27日(日)までの約3ヵ月間、Isa Genzken（イザ・ゲンツケン）による日本初の個展「OIL XV / XVI」がラットホールギャラリーにて開催される。

造形美からの脱却、作品にこめられる哲学とメッセージ

Isa Genzken｜イザ・ゲンツケン

Isa Genzken（イザ・ゲンツケン）による日本ではじめてのインスタレーション「OIL XV / XVI」が10月2日(金)より12月27日(日)までラットホールギャラリーにておこなわれる。ゲンツケンは1976年、その当時おもにミニマリズムやポストミニマリズムのアーティストをあつかっていたデュッセルドルフの「コンラッド・フィッシャー・ギャラリー」でデビューし、『Ellipsoid（楕円）』『Hyperbolo（双曲線）』からなる作品群でその名を世間にひろめた。5メートルから6メートルにもおよぶ細長い流線型のこの作品は、数式を形にしたような理念的なフォルムを有する反面、素材に木をもちいたことであたたかみのある工芸的な美しさも併せもっている。

その後ゲンツケンはそれまでの洗練された美しさを捨て、よりメッセージ性に富んだ作品を手がけるようになる。82年、セメント製の型どりされたラジオに小さな本物のアンテナがつけられた作品『World Receiver』を発表、聞く（または聞かない）という行為がもたらす個人による政治的活動に注目、この思想はプライベートとパブリック、個人と世界の仲介役である『耳』（80年）の作品と問題意識を共有している。

“体感”するアート、等身大で楽しむインスタレーション

Isa Genzken｜イザ・ゲンツケン

ゲンツケンは今回のインスタレーション同様、作品スタイルにかかわらず最初期から一貫して展示空間と作品との関係、さらに鑑賞者を非常に意識したインスタレーションをおこなってきた。作品と対峙し眺めるのではなく、鑑賞者が作品のなかに身が置けるようにすることで、作品がもつテーマや、発せられるメッセージを体感することができる。

また、彼女はつねになにが同時代的かを考えており、それは素材の選択に顕著にあらわれている。最初期の『Ellipsoid』や『Hyperbolo』では曲げられた木、そして『World Receiver』ではコンクリートなどを用いたが、これらはともに当時、現代的な素材とみなされていたものである。その素材選びは『柱』のシリーズにおける鏡、ホログラムのシート、工業用テープ、パンチパネル、ベニヤ、アルミニウム、ガラス、ラッカースプレイの使用へと変化し、さらに現在では、プラスチックの人形、アイロン台、キャンピングチェア、ぬいぐるみ、傘、などのような安価な工業製品、または建築資材やホームセンターで売られているような品々などがもちいられるようになった。これらも、彼女にとっては同時代性を示す重要な素材なのである。
今回ラットホールギャラリーにやってきたのは、2007年におこなわれた第52回ベネチアビエンナーレのドイツ館で発表された『Oil』シリーズから、宇宙飛行士のマネキン2体とアルミのパネル23枚からなるインスタレーション。キッチュなモチーフや色づかいに見え隠れする毒、彼女ならではの世界観に日本がはじめてふれる。