TOKYO PREMIUM BAKERIES|第3回 Signifiant Signifié | シニフィアン・シニフィエ
第3回 Signifiant Signifié | シニフィアン・シニフィエ
ここにしかない、味わいと歯ごたえ
東京でほんとうに「上質でおいしいパン」を提供しているパン屋さんを紹介する新連載「TOKYO PREMIUM BAKERIES~カラダもよろこぶ、東京の自然派素材パン屋~」。
第3回は、世田谷公園すぐ近くの『シニフィアン・シニフィエ』。パン好きのひとなら、志賀勝栄シェフの名をきっと一度は聞いたことがあるでしょう。地方からわざわざパンを買いに訪れるファンも多い、人気シェフのお店にうかがいました。
取材・文=戸川フユキ写真=高田みづほ
長時間発酵と加水、そして高温でしっかり焼くこと
国道246号線から三宿通りへ入って世田谷公園前、「自衛隊中央病院」バス停から徒歩1分。横断歩道近くの大きな窓ガラスの建物が『シニフィアン・シニフィエ』だ。重厚なディスプレイ兼レジカウンターがレイアウトされた店内は、広々として洗練されたモダンな雰囲気が漂う。
聞けば、志賀勝栄シェフは新潟の米づくり農家の息子さんだそうだ。父親とはちがうステージで、しかしなにか無機質ではないものをつくる仕事がしたいと、21歳のときパンの道に進む決心をする。
小さなベーカリーでそのキャリアをスタートさせて以来、彼はつねに「おいしいバゲット」をつくりたい、そして「どうすればカラダによいパンになるのか」を考えながら、毎日パンを創作しつづけている。
「パンはある意味、発酵食品ですから、時間をかけて発酵させてこそ、パンの中で新しいアミノ酸が発生したりとさまざまな変化が起こって、カラダによいものなるんです。だから私は、あくまでも長時間発酵にこだわります」
『シニフィアン・シニフィエ』のパンは、「長時間発酵」で「加水が多く」、「高温でしっかりと焼かれる」ため、外側がパリッとした歯ごたえでも中がしっとり柔らかいのが特長だ。
それが顕著なのが「バゲット・プラタヌ」。カットした断面にキラキラとした光沢があり、これはでんぷんがきちんとアルファ化しているしるしだ。
また加水が圧倒的に多いため、噛みしめたときにぎゅっと口の中で伸びるような独特の歯ごたえがある。水分が多いと微生物がパン生地の中で泳ぐことができ、志賀シェフ曰く「アミノ酸のはたらきがドラマチックなほど高まる」のだそうだ。
素材へのこだわりも半端ではなく、この「バゲット・プラタヌ」には、フランス産のオーガニック小麦粉をはじめ3種類の小麦粉がブレンドされ、室戸海洋深層水やベトナムの完全天日干し海塩に、少量のドライイーストとモルトが使用されている。志賀シェフが「パン職人の証」として、現在のできうる限りを尽くしたという究極の一品だ。
さらに「パンとして十分ギフトにもなりうるもの」と考えられたのが、ナッツとフルーツがたっぷり入った「パン・オ・ヴァン」。水分には赤ワインを用い、発酵種には天然酵母のルヴァン・リキッドを使用。まるでフルーツケーキのようなしっとり感と絶妙な口当たりに、誰もが驚くことだろう。
「新しいパンの試作はライフワークです。その情熱がなくなったら、きっとパン屋をやめてしまうんじゃないかな……」と笑う志賀シェフ。
いまでも月に5~6品は新作の試作をつづけ、くわえてデパートでの催事出店など多忙を極める毎日。パンづくりへの興味とエネルギーが尽きる心配は、まだまだ当分なさそうだ。
Signifiant Signifié『シニフィアン・シニフィエ』
東京都世田谷区下馬2-43-11 1F
Tel. 03-3422-0030
営業時間│11:00~19:00
不定休
(東急バス「自衛隊中央病院」バス停、下車徒歩1分)
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