TOKYO PREMIUM BAKERIES|第2回 Main Mano|マンマーノ
第2回 Main Mano|マンマーノ
おいしく食べてもっと幸せになれるパン
東京でほんとうに「上質でおいしいパン」を提供しているパン屋さんを紹介する新連載「TOKYO PREMIUM BAKERIES~カラダもよろこぶ、東京の自然派素材パン屋~」。
第2回は、代々木上原駅近くに昨年の12月オープンした『マンマーノ』。フランス語のMainとイタリア語のManoは、どちらも「手づくり」を意味し、手から手へこころをこめて渡したいという思いがこめられた店名です。12歳からパンを焼きつづけているという特異な経歴をもつ毛利将人シェフのつくるパンとは、いったいどんな味がするのでしょう。
取材・文=戸川フユキ写真=高田みづほ
飽くなき探究心と、素材へのこだわりが極上のパンを生み出す
小田急・代々木上原駅の北口を降りて、線路沿いの細い道を右方向に進む。ほどなく写真屋の角を曲がると、いきなりパリの街角を思わせるたたずまいのパン屋『マンマーノ』があらわれる。目印は、テラス席のグリーンのパラソルだ。
こちらの若きシェフ毛利氏は、33歳にして、パン焼きのキャリアがすでに20年以上という驚きの経歴のもち主。東京出身ながら、小学6年生のときに移り住んだ札幌のマンションの1階に、人気ベーカリーが入っていた偶然から、現在でも師と仰ぐその店の主人からパンづくりを教わったのだそうだ。
パンをつくることの面白さにすっかり魅了された彼は、12歳から趣味ではなく売り物のパンを焼きつづけ、21歳で渡仏。パリでは5ツ星の名門、ホテル・ド・クリヨンに入店後わずか半年で、日本人初の製パンシェフに抜擢され、その後イタリアやベルギーでも修行を重ね、帰国後はリーガロイヤルホテル東京で3年間シェフを務めた。
こうして大人になるまで「パン屋になる夢」が一度もブレることなく、念願の自分の店をオープンさせたというのだから、まったく恐れ入る。
毛利氏の一番のこだわりは、素材の吟味。小麦粉は、産地はもちろん挽き方によっても食感や味がちがうため、つくりたいパンによって、カナダ産小麦、石臼挽き全粒粉、北海道産の米麹入り小麦粉、うどん粉、ラーメン用の粉など10種類以上の粉を使いわける。
また酵母はオリジナルの自家培養乳清種やサワー種、ブドウ種を使用し、フランスはカマルグ産の海塩、エビアンの天然水、業者から特別にわけてもらう発酵バターと、どれも厳選した材料で試作を繰り返し、本当に納得できる味のパンだけが店に並ぶ。なんとも研究熱心なのだ。
お店の看板商品は、27にも重なる層が美しい「クロワッサン」。発酵バターの香りが高く、生地はあくまでフワッと軽い。生地を熟成させるため、焼き上げるまでじつに3日間を要する。また不規則にあいた空洞が見事な「バゲット」は、周辺に暮らす外国人にも人気で、焼きたてが並ぶと瞬く間に売り切れてしまうことがあるそうだ。
パンについて話す毛利氏は、目がキラキラと輝き楽しくて仕方がない様子。幼いころからパン生地に親しみ、パンとの会話を楽しみながら、心をこめて焼かれる『マンマーノ』のパンが、どこか優しい味なのもうなずける。これからも目が離せない、楽しみな店である。
ブーランジェリー&カフェ Main Mano『マンマーノ』
東京都渋谷区西原3-6-5 CRD代々木上原1F
Tel. 03-6416-8022
営業時間|8:00~20:00(drink L.O.19:30)
毎週火曜定休
http://www.mainmano.jp/