戸田恵子|キバコの会「素。」を振り返ります
オモローなおっさんたちとの座組みは、懐かしい感覚と安心感がありました──
キバコの会「素。」を振り返ります
今回のお話は、演出の堤幸彦監督から熱いコールをいただいたのがはじまりです。
堤監督は何度も私の舞台を観てくださっているし、同郷の名古屋出身でもあり共通の知人もいたりするのです。そしてこの作品が堤監督とは初のお仕事となりました。
まとめ=K-co Toda
無謀なスケジュールのなか思ったのは、「このオモローな座組みはもうないかも!? 」
不思議なことに、これは三谷幸喜さんと初仕事をさせていただいたときもそうでしたが、私の願望とちがうところからのアプローチなんですね。願望というか……まあ「もしもお仕事をご一緒できることがあればこの仕事かな~?」なんて勝手な妄想みたいなことですね(笑)。
三谷さんのときは「舞台」によんでいただけると思っていたら初仕事は「ドラマ」の出演依頼でしたし、堤監督はたぶん「映画」かな? なんて思っていたら……なんと「舞台」の出演依頼だったのです。
どちらも私にとっては心地良い裏切りとなりました。
さて、この時期に舞台の出演をお受けするのはかなり無謀なことでした。前後のスケジュールがパッツンパツンに入ってまして(苦笑)、お受けできる状況ではなかったのですが、このオモローな座組みはもうないかも!?という想いと『ザ・スズナリ』という老舗劇場の小空間にもそそられました。なによりゲスト扱いをしてくださるのであろうから(笑)、出番も考慮されるはず。稽古も「10日あれば結構です」と、監督が事前の食事会でおっしゃっていたし……。
ところが、いただいた台本にしばらくは目を通す間もなく、「ザ・ヒットパレード」の大阪公演。その後4、5月は「ママは昔パパだった」(WOWOWドラマ)の撮影と、カジュアルライブのリハ&本番とパンパンスケジュールの途中、パラパラと台本をめくってみれば……メッチャ出てるんちゃう!? みたいなね。私、目が点になりました。しかしお受けした以上は、がんばらねば! と。そうです、頑張り屋の私はがんばったのであります!!
キバコの会第1回公演は、痛い、切ない、オモローな話
稽古には10日どころか、結局5日間くらいしか行けなかったと思います……。3日目くらいでヤバイと思った私は、我が家に瀬戸カトリーヌを投入。夜中まで台詞(せりふ)を付き合ってもらいまして……、これでなんとか初日にこぎつけたのでした。カトリーヌに感謝です。
キバコの会は堤幸彦監督と俳優の半海一晃さん、野添義弘さん、多田木亮佑さんで結成された会で、栄えある第1回公演のゲストとして私に白羽の矢が立ちました。
今回の作は佃典彦氏。劇団のお話です。劇団に長くいる売れない俳優たちの話です。痛い、切ない、オモローな話でした。私はその劇団の看板女優・嶋崎さくらの役をいただきました。台詞覚えだけが速い(じつはもう衰えてきている)というトップ女優でして、それもままならなくなった嶋崎さくらは舞台監督とつるんで舞台セットに台詞のカンペを隠す、みたいな痛い話です。
舞台冒頭に出てくる「アシュラ男爵」と皆から呼ばれる衣装は圧巻でした。あんなの二度と着るチャンスはないと思いますね(笑)。メイクも面白かった。女優・嶋崎さくらはカンペを舞台装置に隠しているので、二役分の台詞は楽に喋れるみたいな発想から、マクベスとマクベス夫人の同時二役を演じている設定の衣装です。
楽しい役をいただいて思い切りハジケることができました。後半は真面目に皆それぞれの悩みを吐露していく展開になります。チョイ役で一回だけ出演したテレビドラマをビデオテープが擦り切れるほど何度も見ていた話とか涙ものでした。いくつになってもバイトしながら芝居をする劇団員。そしてひとを殺めてしまう……切ない話です。
堤監督は、面白いとどんどんその場にて口立てで台詞を足すタイプでありまして、そのときは私たちも必死に即興で覚えるので、稽古終わりには必ずもう一度「あそこは何だったっけ?」と役者たちだけで台詞の確認があり、皆で台本に書き込んでいました。
前説では自ら進んで舞台上で喋り、「BG Brand」のベアブリックの宣伝もしてくださいました。劇中に出てくるバッグにベアブリックを付けた(左写真)のも堤監督のアイデアでした。なによりご自身も楽しんでいらっしゃるようで、本番中も堤監督中心に円陣を組んでいつも気合いを入れておりました。
7月5日(日)からの公演「SUNDAY IN THE PARK WITH GEORGE」もお楽しみに!
オモローなおっさんたち(じつは3人とも1歳年下)との絡みが少なくて残念でしたが、なんとまあ安心感のある3人でしょうか!(笑) 何をやっても大丈夫みたいな。素敵な俳優さんたちです。皆さん、また、是非ご一緒したいです。
そして、高校生の柳田衣里佳ちゃん。彼女はこれからイクんじゃない? 日に日にどんどん上向いていった。そして動じない。アッパレで気持ちよかったですよ。スズナリの小さな楽屋を二人でシェアしたのも楽しい思い出となりました。稽古不足の私の台詞に楽屋でよく付き合ってくれました。絵文字いっぱいのメールが今でも届きます。キバコの会「素。」を御観劇いただいた皆様、ありがとうございました。
東京公演は少しお尻が痛かったと思いますが、まあそれも想い出ということで。そしてなんといっても堤監督、出演者の多田木さん&私の地元、名古屋での公演も3日間ありました。懐かしい顔をのぞかせてくださった知人の皆さま、たくさんのお客さま、御観劇ありがとうございました。
コメダの珈琲も飲みました。シロノワールも食べました。差し入れに鬼まんじゅうもいただきました。多田木さんから味噌カツドロップももらいました。満足(笑)。
さてただいまは、7月5日(日)からの公演「SUNDAY IN THE PARK WITH GEORGE」の稽古真最中! なかなかに手強い相手と闘っております。来月はまた、その様子をお伝えしたいと思います。
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