浅野典子「アフリカの風」 Chapter21:2009年2月-マラウイの現実
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2015年3月9日

浅野典子「アフリカの風」 Chapter21:2009年2月-マラウイの現実

Chapter21:2009年2月-マラウイの現実

―お知らせー

Chapter21:2009年2月-マラウイの現実

4月30日(木)まで東京・新宿2丁目にあるCoCoLo Caféで『アフリカの風』というタイトルの展会を行なっています。
ナイジェリア・オショボ派のアーティストをはじめ、西アフリカの布や立像、民族マスクにくわえ、ここ数年私が撮影したマラウイの子どもたちの写真展示も併設します。
平日(月~金)は17時から、週末は15時からオープンするCoCoLo Caféというお店で朝まで営業しています。お時間のある方は、ぜひ遊びに来てください。

詳しくは、http://www.africanjag.org
もしくはTel. 03-5366-9899 (CoCoLo Café)まで。

さて、今年最初の『アフリカの風』。サボっていたわけではないのですが、いつの間にか桜が満開の季節になってしまいました。随分、あいだが空いてしまって本当にスミマセン。
と、いうのも2009年1月29日~3月6日までの約5週間、African JAG Projectの現地支援および視察のため、マラウイ共和国と南アフリカを訪ねて、帰ってきたと同時に寒さと、花粉と黄砂で体調を崩してしまい、頭脳も停止状態になってしまったわけです。
やっと復調しつつ、……今回は、支援地、マラウイ共和国の現状をお伝えします。

マラウイ:2009年1月29日~2月20日               US$1=MWK160

Chapter21:2009年2月-マラウイの現実

この時期、南半球に位置しているマラウイは季節的には夏/雨季にあたる。私たちが支援をしているマラウイ湖畔の村は、連日30℃を超え、紫外線もかなり強い。

ここの雨季は、日本の梅雨とはちがい、短時間にバケツの水をひっくり返したような豪雨=スコール。そのため、ジメジメした感覚はなく、けっこう快適に過ごせる。マラウイ湖では強い日差しのなか、連日、子どもたちが元気一杯に水遊びを楽しんでいた。この地の現実におこっていることが、嘘のような光景です。

蔓延する病気

この時期、マラウイではマラリアやコレラなどの伝染病が蔓延しはじめる。アフリカの病気に慣れていない私たちは、決して気を許すことはできない。手洗いやうがいは必須で、マラリアの予防薬も欠かすことはできない。とくに私の場合、一度ナイジェリアで“熱帯熱マラリア”という、最悪のマラリアに侵され、死にそうになっているから、ついつい神経質になってしまう。だから私たちの折りたたみ式のクーラーボックスを利用した薬箱には、現地支援で必要になるかもしれない医薬品にくわえ、持病の薬、湿布、胃腸薬、熱さまシート、マラリアの予防薬、治療薬、検査キット等々が、ぎっしり詰め込まれている。

私たちが滞在していた期間は、マラリアの流行がはじまったばかりだったが、2月末~3月末は、主食のメイズが収穫を終え、剥かれた皮とメイズの芯にマラリアの原虫ハマダラ蚊が卵を産み、それがかえるために大勢のひとがハマダラ蚊に刺され、マラリアの熱に苦しむ。最近では、薬局でマラリアの検査キットも購入できるようになったのだが、現地の人たちがそれを購入することは滅多にない。

また、マラリアにかかっても予防薬を飲んでいれば、症状は軽くなるし、かかってしまっても治療薬を飲めば大抵の場合、命を落とすこともないのだが、貧困層のひとたちは予防薬、治療薬を購入するお金をもってはいない。

Chapter21:2009年2月-マラウイの現実

そのため、体力のない子どもやお年寄りが毎年多くの命を落としている。そして、コレラの流行もはじまった。コレラに関しては、不衛生な環境が一番の原因と思われるが、私たちが支援をはじめた2006年以降も都市部を除いては、環境衛生が改善されたとはとても思えない。

現在、マラウイでは都市部を除いてゴミ収集というものがない。そのため、田舎などでは、ビニール袋などの不燃ゴミが増えたことによって土に戻らないゴミが散乱してそこに雨水が溜まったり、汚水と一緒になったりして悪臭を放つなど、これまで以上に深刻な問題になってきた。とくにこの時期(雨季)は、マラウイ湖から水揚げされる小魚が、ドライフィッシュになる前に腐ってしまい、それをまた湖に捨てる=水が汚れる……という、より一層劣悪な環境をつくりだすため、湖畔に位置する貧困層の村では、コレラや赤痢が発生する確率が高くなる。もちろん、下水道などもなくトイレは基本的に穴を掘ってそこにする。汚物が一杯になるとまた次の穴を掘るわけだが、汚水は、地下に浸透し、村人が安全だと思っているポンプ式井戸から汲まれた水だって決して安全とは言えない。

医療体制

以前にもレポートしたが、マラウイは圧倒的に病院の数が少ない。国立の病院が約60。海外のNGOなどが経営する病院が約30。国のなかに病院の数が100に足りていない。
また、病院だけでなく、医師の数や看護師の数もまったくもって足りていない。

2006年に国が管理する病院を視察したが、病棟1棟(60人の患者)に対して1人の看護師が担当するという、考えられない環境だった。そのため、家族などが付き添いをしないと入院はできないと聞いている。

Chapter21:2009年2月-マラウイの現実

医師に関しては、給与の額が低いという理由から、皆、欧米に行ってしまうため、隣国から数年契約で医師を派遣してもらっていた。最近は、少し医師の給与額などが改善されてきたということだが、それでも患者の数に対して医師、看護師が絶対数少ない。

また、マラウイにおいて問題だと思うのは、薬局がリロングウェ(首都)とブランタイア(第2の首都)にしかないことで、そのほかのエリアの人たちは、病院に行かなくては薬を手にすることができない。たとえば、この時期発生するマラリアも薬さえ飲めれば、高い確率で死にいたることはないのだが、病院まで行くお金がないために死にいたるケースが多くなっている。もし、近くに病院がなくても薬局さえあれば、助かる命がたくさんあるということだ。病院をつくるのは、建設費だけでなく、医師や看護師などの人員確保も大変だが、薬局であれば、そう無理なことではないように思う。

私たちの国では、チョットした病気や怪我であれば近所の薬局で薬を買って栄養のあるものを食べて睡眠をとれば、たいてい治ってしまう。それが当たり前でもある。しかし、マラウイでは私たちにとって当たり前のことが、決して当たり前のことではない。
病院に行きたくてもたった50円がないために消えていく命。それが、貧困層の現実なのである。

食糧事情

この時期は、前年度に収穫した主食のメイズが底をつく時期でもあり、食料が高騰する。そのため、貧困層のひとたちにとっては、一番辛い時期となる。最近では、品薄、価格の高騰を防ぐために政府が農民からメイズを一括買い上げし、アドマックという一定の貯蔵庫で販売するというシステムをとっているのだが、実際には、地方のアドマックにはメイズがない……というのが現実だ。

結局、政府の購入価格が安いということでブラックマーケットに売るひとも多く、政府の管理するメイズがなくなる頃にブラックマーケットに流れたメイズが一斉に小売店に高値で並ぶことになる。

Chapter21:2009年2月-マラウイの現実

どちらにしても、ただでも苦しい生活を送っているのに、主食の高騰でより一層、食うに食わずの生活を強いられるのは貧困層のひとたちで、この状況は早期解決を求められる。

また、今回視察をしてみたところ、私たちが支援をしているエリアにおいては、メイズの成長が著しく悪い。既に穂がついているにもかかわらず、メイズは痩せてほとんど実をつけていない。これから、雨が降ればもっと大きく育つのかもしれないが、もし、このままだとこのエリアに関しては大変な不作で食糧不足になることは間違いない。ただ、マラウイの場合、少しエリアがちがっただけでも農作物の育ち方がちがうので、ほかのエリアが豊作であることを祈りたい。

教育

Chapter21:2009年2月-マラウイの現実

教育事情は、お世辞にも決して良いとは言えない。とくにいわゆる政府が運営する学校は、多くの問題を抱えている。ここでいう学校とは、政府系のプライマリースクール(小学校/8年制)のことだが、私たちが支援しているエリアの大半の子どもたちは、教科書をもっていない。そればかりか、ノートや鉛筆さえもっていない子も大勢いる。

子どもたちは、皆、学校へ行きたいと言うが、彼らのノートを見る限り、なにを勉強してきているのかがわからない。とくに低学年の子どもたちは、朝の6時半に学校に行き、10時には帰宅する。正味3時間の勉強。

その間、ノートは1ページも埋まっていない。そのため、2年生や3年生でもABCすら書けない子どもがたくさんいる。高学年になっても大半の子が九九算をまともにできないし、足し算でさえも桁が多くなると難しくなる。

そんな状況のなかで大統領が好んだと言われている制服着用。プライベートスクール(私立)ならまだしも政府系の学校も制服着用が義務付けられ、制服を着用していないと授業が受けられないという。貧しい家庭の子にとって制服着用は不可能に近い。

普段から、ボロボロの服を着てまともな食事も食べられていない子どもが、なぜ、オーダーメイドの制服を着用しなくてはならないのだろう? どんなに勉強が好きで学校に行きたくても制服をもっていないために受け入れてもらえないというのは、どう考えてもおかしい。子どもたちに必要なものは、制服ではなく教科書やノート、鉛筆なのではないだろうか。

ある村の校長は、「ウチは、受け入れることにしている」と言っていたが、それをしなければ田舎の貧しい村の子どもたちは、ほぼ全員、学校に行かれなくなってしまう。
一日も早くくだらない、この制服義務付けという制度をやめ、貧しい子どもたちでも元気に学校に通える日が来てほしいと心から思う。

Chapter21:2009年2月-マラウイの現実

教育は、子どもたちに未来を与える。難しい勉強を押しつけるのではなく、必要最低限の勉強でも構わない。英語と加減乗除がきちんとできるだけでも可能性は広がる。教育をちゃんとすることがマラウイの明るい未来を切り開くのだと思う。

マラウイという国は、本当にひとが優しい。貧しいけれどひとびとが助けあって生きている。彼らの笑顔がいつまでもつづくように自分になにができるのか、もう一度考えてみたい。

African JAG/ Producer 浅野 典子

※ マラウイ支援の詳細は、HP http://www.africanjag.org でご覧になれます。

AFRICAN JAG PROJECT

           
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