Chapter20:アフリカの魅力/南アフリカの音楽
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2015年3月9日

Chapter20:アフリカの魅力/南アフリカの音楽

Chapter20:アフリカの魅力/南アフリカの音楽

African JAG Presents 「世界中のストリートが手を繋いだら・・・」と題したイベントを11月22日(土)に東京・恵比寿リキッドルームで開催します。出演はDJ KRUSH(DJ)、熊谷和徳(タップダンス)、天平(ピアノ)、VEKROTZ(パフォーマー)など、ジャンルを超えた日本のトップアーティストが競演します。

最近、日本では、子ども中心の音楽産業ばかりが注目されているような気がして、なんとも“温い”感がゆがめず、どうせやるなら大人も楽しめる、世界が認めたアーティストたちとイベントをしたいという思いからこのメンバーに白羽の矢を立てました。すでに、どんなパフォーマンスが繰り広げられるのか、今からワクワクしています。

当日、お時間のある方は、ぜひ恵比寿リキッドルームにお越しください。また、このイベントの収益金の一部は、アフリカの子供たちを支援する『African JAG Project』に寄付されます。…ということで、最初に告知をさせてもらいましたが、今回は、2010年にワールド・カップを控え、何かと注目を浴びている南アフリカの音楽事情についてお話しようと思います。

南アフリカの音楽事情 第一回

1991年、アパルトヘイト撤廃宣言が出され、1994年ネルソン・マンデラ氏が、黒人初の大統領に就任。その後、欧米からさまざまな音楽が一気に南アフリカへ入ってきたことで、南アフリカの音楽事情はかなりの変化をみせた。
特に最近は、テレビの普及率が急速に高まり、テレビ番組を通して広まった音楽がヒットチャートを賑わしている。そのため、プロモーションビデオの制作が精力的に行なわれるようになり、特に若者受けする音楽は、先進国同様、TV番組でいかに取り上げられるかが鍵になってきている。

HIP HOP

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ここ数年、HIP HOPが大流行していて、音楽番組でかけられるPVの多くは、HIP HOPものだったりする。ソゥエト出身の「ZOLA」や「Proverb」というアーティストが大ブレイクしたことをきっかけに、それに続けとばかりに、多くの若者がマイクを持つようになってきた。

自分たちの置かれている状況を世界中の人に伝えようと本物のメッセージを発する一方で、売れるための手段としてHIP HOPという手法を用いるアーティストも増えてきたように思う。それでもまだMCは、不器用だけど一生懸命言葉を選び、伝えるということを意識しているだけ健全といえば健全。

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それに比べて、トラックメーカーに関しては、欧米の影響を受けすぎて、横ならびのようにまったくオリジナリティを持たないDJが多く、あまりいただけない。しかもそれが数年前に先進国で流行ったものだったりと、何となく古臭い。

確かに先進国のDJ志望の子どもでも使わないような機材で頑張っているのだが、もっと自分たちが普段触れてきた音楽、リズム、グルーブを取り込んだ、彼ら自身のオリジナルビートを作り出して欲しいと思ってしまう。

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まぁ、それでも「音楽でのし上がってやろう」という気迫は感じるし、近い将来、凄いアーティストが出てくる予感はするけど……。

HIP HOPでのお薦めは、ケープタウンのゲットーに住むCrosby(クロスビー)。彼は、独自のスタイルで実生活の中から湧き出る言葉でメッセージを発信している。来年リリースされる『African JAG vol.2』にも一
曲参加してくれているので、必ずチェックして欲しい。

JAZZ

南アフリカはJAZZの発祥の地とも言われ、毎年3月にケープタウンで大きなJAZZフェスティバルが開催され、世界中からそのフェスティバル目当てで数多くの観桜客が訪れる。最近は、南アフリカのJAZZも欧米の影響を受けて、妙にお洒落になってきたけれど、それでもまだまだ独特のグルーブを奏でるアーティストは大勢いる。特に60代、70代のおじいちゃんたちの演奏は渋く、聴き惚れるほど。しかし、年々、彼らの演奏場所が無くなって来ているという現実が悲しい・・・・・。

レゲエ&ラガマフィン

レゲエやラガマフィンも根強い人気がある。ケープタウンのゲットーの中にラスタのコミュニティがあって、彼らもまた、日々音作りに励んでいる。
ラガマフィンのMCの中には、外国人を自宅に招待してゲットーの食事を食べてもらい、ゲットーの生活の話をし、ゲットーをなくすための活動に理解を求める…という試みをしているアーティストもいる。また、ラスタを尊敬している人は、大勢いる。どこの地に行っても本物のラスタのハートを持った奴はリスペクトされている。…ただ、最近はカッコだけのラスタも多くみられる。

ハウスミュージック

次にハウスミュージック。この流れはかなりの勢いをみせている。ちょっとスカを織り交ぜたような独特のリズムを持っていて面白い。アフリカ系のハウスという感じで断然オリジナリティを感じる。おそらく、本来彼らの中にある独特のグルーブ感がどんどん進化系の音を作っていくんだと思う。

その他

Chapter20:アフリカの魅力/南アフリカの音楽

南アフリカにおいては、私が知るかぎり女性ボーカリストのレベルがすばらしく高い。
私の一番のお薦めは、Busi Mhlongo(ブシ マホロンゴ)。ズールー語で歌う彼女の歌は、言葉がわからなくても心の奥にまでその声とともに響きわたる。
以前、彼女のLIVEを観たことがあるが、なぜか涙が止まらなかった。“魂”を感じたんだと思う。

アパルトヘイトのときに国を出て、家族と離れ離れになり、国外では民族の言葉“ズールー語”を封印して英語で歌っていたのだそうだ。25年ぶりに母国に戻る時、彼女は「私は自分の言葉で歌を歌いたい。私は、自分の民族に誇りを持っている」と話してくれた。

南アフリカのアーティストの多くは、彼女のことを心からリスペクトしている。現在、乳癌の手術をして療養中とのこと。一日も早くステージに復帰して欲しいと切に願っています。
そのほか注目すべき若い女性アーティストは、Zamajobe。彼女は既にヨーロッパでも人気が高く、さまざまな賞を受賞している。Busiのようなアフリカミュージックではないが、彼女の声はとても心地良い。

LIVE盤

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LIVE盤も1作品紹介したい。けっこう良かったのが、「1night at MOYO live」というアルバム。

南アフリカのいろいろなアーティストが収録されていて、音色やグルーヴ感は、まさに今の感覚と伝統のリズムが見事に融合していて、とても心地良い内容に仕上がっている。まさに必聴といえる。

ストリートLIVE

ストリ-トLIVEに関しては、以前にも書いたけれど、もの凄いパワーを感じる。ここ最近、先進国で感じなかった熱気と本気が入り混じった、これぞ本物のストリートだ。決して安全とは言えないのでここに場所などは記さないけれど、どうしても行ってみたい人は、自己責任のもと、自分で調べて行ってみるといい。かなりの興奮を体で覚えると思います。

今回は、あまり知られていない南アフリカの音楽事情についてお話しました。音楽以外にも まだまだ、南アフリカについて語りたいことはたくさんありますが、それはまた次の機会に!!

African JAG Project/浅野典子

AFRICAN JAG PROJECT

           
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