エドガー・ライト監督×ミト(クラムボン)スペシャル対談(後編)
映画『ホット・ファズ(HOT FUZZ)─オレたちのスーパーポリスメン』
公開記念スペシャル対談(後編)!
エドガー・ライト監督 × ミト(クラムボン)
『ショーン・オブ・ザ・デッド』のエドガー・ライト監督による注目の話題作『ホット・ファズ(HOT FUZZ)』。
当初、出演者のネームヴァリューなどで公開の危機にさらされていたこの作品を、有志たちによる公開署名運動により日本での公開が決定したといういわく付きの傑作作品である。 こんかいは、エドガー・ライト監督と、公開署名運動にも応援コメントを寄せたバンド『クラムボン』のメンバーであるミトが、『ホット・ファズ』の音楽的な部分を中心に、ホットに対談したつづき。
文=わたなべりんたろうPhoto by Jamandfix
ミト 日本の音楽も好きなんですか?
エドガー とても好きなんです。ぼくや主演のサイモン・ペッグとニック・フロストの原点でもあるテレビシリーズの「Spaced」(99年から01年にかけて放送)では、好きな音楽をたくさん使ったんですよ。当時、流行っていたファットボーイ・スリムとかのダンス・ミュージックをすぐに使ったりもしましたし、コーネリアスやファンタスティック・プラスティック・マシーンの曲も使いましたね。
ミト コーネリアスは、かなり好きなんですよね?
エドガー じつは今日の夜、コーネリアスの小山田圭吾くんと会う予定なんですよ。
彼のアルバムの「ファンタズマ」が、海外で出たときに聴いてファンになったんです。去年、彼らがツアーでロサンゼルスに来たときに、ライブを観に行って直接会いました。
ミト そういえば、『ホット・ファズ』の主題歌はジョン・スペンサーの曲ですよね。
エドガー ジョン・スペンサーの『ブルース・エクスプロージョン』が大好きで、ずっとファンだったんです。
彼に主題歌を依頼したらOKが出たので、ロンドンに来たときに録音したんですよ。もう最高の曲に仕上がりました。
ミト 『ホット・ファズ』のかなりはじめの場面で、キンクスの『ヴィレッジ・グリーン・プリザーヴェーション・ソサエティ』が流れるのが印象的でした。日本だと、映画で既存の曲を流すことは、必要以上に意味性が出てきてしまうけど、イギリスはロックが歴史的に普通にある国なので、曲がさりげなく使われている部分に、国のちがいを感じましたね。
エドガー あの曲は、イギリス人なら誰でも知っている曲だから使ったんですよ。簡単に言うと「田舎はいい」みたいな内容なんだけど、その田舎がじつはいいところばかりじゃないんだよ──という意味になっているんです(笑)。
いつもそういった含みで、いろいろな意味を持たせるようにしているんですよ。
ミト ぼくは『さよならCOLOR』という映画で、劇伴(劇中に流れる伴奏音楽)をやったことがあるのですが、『ホット・ファズ』は劇伴も良かったですよ。
エドガー 『ホット・ファズ』の劇伴は、デヴィッド・アーノルドが担当しているんですけれど、予算があまりなかったにもかかわらず、デヴィッドは本当にいい仕事をしてくれたと思います。
アクション シーンも、もの静かなシーンも、パロディにならないオリジナルへのオマージュ感にあふれた音楽をつけてくれたのでとても感謝しています。
デヴィッドは、テレビシリーズのコメディ番組『グレート・ブリテイン』でもさまざまな音楽をつけていたので、その時から僕は注目していたんですよ。だから彼に依頼したんです。
ミト なるほど。とにかくこの映画はおもしろいとおもうので、おおくのヒトに観てもらいたいです。
エドガー ありがとう。僕もそう願います。
映画『Hot Fuzz』公式サイト|http://hotfuzz.gyao.jp/
映画『Hot Fuzz』の劇場公開を求める会|http://intro.ne.jp/contents/hotfuzz.html
エドガー・ライト
1974年4月18日、イギリスのドーセット州プール生まれ。
14歳で初のコメディ映画を制作。大学時代を通して創作をつづけ、史上初の「予算ゼロ」の長編作品『A Fistful of Fingers』(94)を製作。この作品は西部劇のパロディで、スカイムービーズで放映され、劇場限定公開された。若干20歳だった。
これがきっかけでテレビのコメディ番組の多くの監督するようになり、99年から放送された『Spaced』の第1シリーズは登場直後からヒット、監督としての才能とユニークな映像スタイルが多くの批評家の目に留まった。英国コメディ賞、英アカデミー賞、モントルー賞にノミネートされ、これによりイギリスコメディ界で最もエキサイティングな若手監督としての地位を不動のものとする。第1シリーズ以上の成功を収めた第2シリーズは、英アカデミー賞とインターナショナル・エミー賞にノミネートされた。
長編デビュー作の『ショーン・オブ・ザ・デッド』(04)は世界中でヒットし、『グラインドハウス』(07)ではフェイク予告編の『Don’t』を監督、また人気バンドの元アッシュのシャーロット・ハザレイの「Bastardo」のPVも手掛けている。
ミト(クラムボン)
1975年5月6日生まれ。東京都出身。
クラムボン(http://www.clammbon.com)ではベース、ギター、キーボードを担当。
デビュー以来クラムボンのほとんどの楽曲はmitoによるものであり、自身のバンド以外にも数多くのミュージシャンに楽曲提供を行っている。また、木村カエラやtoe、SOURなどのプロデューサー、ミックスエンジニアとしての手腕も発揮しており、その評価はどれも高い。ノイズ、アバンギャルド、テクノからエピックなポップミュージックまでを傍若無人に搾取するヘヴィー・リスナーであり、常にジャンルの垣根を飛び越えようとするスタイルで、新しい音楽に挑戦してゆく。
2006年から「mito solo project」としてソロ活動をスタート。伊藤大助(clammbon, The Sun calls Stars, LOTUS GUITAR)と斉藤哲也(Nathalie Wise)の3人によるフリー・ジャズ・バンド「FOSSA MAGNA」、CANのイルミン・シュミットとの共同プロデュースにて制作されたエレクトロ作品「dot i/o」、英歌詞のヴォーカルに加え、ギター、ベース、ドラム、その他の楽器も全てmitoによる演奏で制作された「micromicrophone」の三部作をもってmito solo project完成とす。
クラムボン公式サイト|http://www.clammbon.com/
mito solo project公式サイト|http://www.mito396101043.com/