第34回 Wonderwall 片山正通×M.Y.LABEL 吉田眞紀対談(3)
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2015年5月11日

第34回 Wonderwall 片山正通×M.Y.LABEL 吉田眞紀対談(3)

第34回
Wonderwall 片山正通×M.Y.LABEL 吉田眞紀

「男の好きなモノ」……(3)

インテリアデザイナー、Wonderwall 片山正通氏と、プロダクトデザイナー M.Y.LABEL 吉田眞紀氏の「男の好きなモノ」に関する対談シリーズも、こんかいで3回目を迎えます。話題は、どんなときにインスピレーションを感じるか、デザイナーとしての芯の部分にまで迫っていきます。

まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix

インスピレーションはどこからやってくるのか

第34回<br>Wonderwall 片山正通×M.Y.LABEL 吉田眞紀<br><br>「男の好きなモノ」……(3)

吉田 片山くんは外国で建築物などを見て、この手があったか! と思ったりすることなんてあるの?

片山 僕は建築物そのものというより、ホテルの窓からの風景で、ビルとビルの微妙な重なりがひと塊(かたまり)で見えたときとかに、造形的に面白いなぁって感じたりします。

吉田 なるほど。そういうふうに見てるのか……。僕は外国でビルの並んだ風景を眺めて、これが小さくデザインされたらどうなるかなと思ったり、飛行機のパーツを見ていいなって感じたりすると、それが何年か経ってから自分の作品のインスピレーションにつながることがあるんだよね。

片山 僕はその逆で、ちっちゃいモノを見たときに、これが大きな建築になったら、面白いだろうな……とか思うことがありますよ。

吉田 なるほどね。僕はいつも、アクセサリーとまったく関係ないモノに反応するんだ。

片山 やっぱり、おなじジャンルのモノだけが、自分のデザインのヒントに直接つながるわけじゃない。もし仮にいいなと思うモノに出会ったとしても、そのまま得てはいけないって、無意識で思ってるんだろうね。

吉田 それは僕も同感。すでに存在しているモノを見て、それを目標にしてたら、いつまでたっても超えることはできないからね。

片山 こういうふうになれたらいいな……って思うことはあるけど。

吉田 うん。そうだよね。

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理屈で一度整理されたモノには反応してしまう

吉田 自然の造形についてはどう? たとえば、砂丘や雪原にしても、自然の創り出す造形ってすごくキレイじゃない。風が通り抜けた後なんて、人には描けないような、何ともいえないラインが残ってるし。僕の場合、自然の造形に感動することはあっても、そこから直接デザインのインスピレーションは受けない。「自然界からインスピレーションを受けてデザインしてます。」って、いってみたいんだけど。カッコイイから(笑)。
おなじようにキレイだなって感じることでも、たとえば飛行機のどこかのパーツみたいに、一度理屈で整理されたモノは、ダイレクトに入ってくるんだけどね。
もともと、自然界に鳥が存在して、その鳥の羽根や構造を計算しつくして造られた飛行機を見て、「いいな」って思うことはあるんだけど、生きている鳥を見たときは「かわいい」って感じる。「カッコイイ」じゃなくて。

片山 自然のモノって、やっぱりすごいじゃないですか。僕はそういうのをいいなと思って、がんばっている人間が好き。ちょっとダメなところも含めて。自然を見てるとあまりにもすごすぎて、恐れ多くてデザインする気なくしますよね(笑)。

吉田 ハハハ。それには同感だな。動物の進化にしても、彼らは何万年もかかって水から陸に上がって、エラ呼吸から肺呼吸に進化しているわけだから、僕らがちょっと思いついたくらいのアイディアで、勝負しても勝てるわけがないよね……。

制約のなかでデザインすることをいかに楽しむか

吉田 それともうひとつ、自分のデザインしたモノを、「気張ってる」って思われるのは、いちばんイヤじゃない?

片山 でも僕の場合は、「気張ろう!」がテーマのときは、思いっきり気張りますよ(笑)。その努力を見せたいとは、決して思わないですけどね。

吉田 そうかぁ。片山くんの場合は、自分の作品であると同時にかならずクライアントが存在していて、いつもオーダーメイドでデザインをしてるってことだもんね。

片山 そうなんです。僕、自分でことしの自分のコレクションを自由に考えろっていわれても、何にしていいかわからない。ファッションデザイナーなんて絶対に無理。僕はお客さんの注文を受けて、要望を聞いて、そのプレッシャーのなかでデザインするのが好きなんだよね。

吉田 もちろんデザインは制約のなかで考えるんだけど、僕はやっぱり内にこもって勝手にやるのが好きなのかもね。こんなの考えちゃったもんね~とかいいながら。まあ、そういうのに限ってちっともウケないんだけど。

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片山 僕は制約をあまり制約と思わないで、デザインしているかもしれない。だから、自由にできる自分自身のお店は多分作れないな……(笑)。いちばん煮えきらなくて、答が出ない気がする……。普段はクライアントを客観的に見られるから、大胆にできるんですよね。きっと。

吉田 でも自分のモノには、自分で責任が取れるんじゃない?

片山 全力を尽くすってことが、僕の責任の取り方なんですよ。ある意味、サービス業だから。「ワンダーウォール商店だ」ってスタッフにはいうんですよ(笑)。僕はデザイナーであって、アーティストではないんです。ある制約のなかで出来る限りのことをして、そして楽しめるようにって、いつでも考えているんです。

吉田 そう、やっぱり、楽しめなくちゃ! だよね。どんなにたいへんでも(笑)。

※片山正通さんのプロフィールは「男の好きなモノ」……(1・2)をご覧ください

           
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