安楽寺えみ 写真展『Snail Diary』対談(その3・最終回)
第29回 安楽寺えみ 写真展『Snail Diary』対談(その3・最終回)
安楽寺えみさんとの対談も今回が最終回です。どこか微熱状態にも似た彼女の作品。その印象はいったいどこから来るのか。作品に向かう胸の内を赤裸々に語ってくれた今回の対談を通して、その核心に迫ることができた気がしました。僕自身、彼女の言葉を聞いてから再び作品に向かうことで、最初に見たときにはおぼろげだったその背景がより鮮明に見えてきました。
北村信彦/HYSTERIC GLAMOURPhoto by Jamandfixedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)
もどってきたら少し違う次元にいた
北村 女性だからということもあるんでしょうが、どの作品もアブノーマルなんだけどグロテスクじゃないですよね。エロティックとアブノーマルがいい意味で融合してるというか。
安楽寺 さっきノブ社長もおっしゃいましたけど、要するに微熱状態なんですよ。
北村 繰り返される微熱、みたいな感じですね。
安楽寺 そうそう。
北村 でも、どん底ではない。どん底までは落ちきっていない感じがします。
安楽寺 たぶん一度落ちきって、それからもどってきたんだけど、前の自分にもどったわけじゃなく、ちがう次元に移動したって感じだと思います。次元が微熱空間に変わっていたというか。
北村 ちょっと怖い感じもしますよね。どこか不思議な、子どもごころを捉えるような恐怖感があります。
偉大なはずの杖さえも、私にとっては頼りない
北村 コンセプトにも出てくる杖、あれもなにか象徴的ですね。
安楽寺 杖っていうのは本来、村の長とか、魔女とかがもっているちょっと特殊な存在じゃないですか。「杖は天と地を繋げる道具だ」と誰かが言っていたのを読んだこともあります。でも、そんな偉大なはずの杖さえも、私にとっては頼りにならないという、そんなイメージですね。
北村 魔法の杖のはずなのに……。
安楽寺 そう。磁場の狂った、微熱空間にいる私にとっては、それでもこころもとない。杖をもってしても微熱は冷めないんです。一方で、その杖を頼りにつくりつづけていくしかない、という意味も込められています。ときには崇拝してみたり、ときには蔑んでみたり……。映画『2001年 宇宙の旅』のモノリスってありますよね。あれがスティックの正当な姿なんですが、私の杖はどこかパワーのバランスが狂ってるんです。
北村 僕は昔、金縛りにあうと、耳元で人の話し声がしたり、一瞬目を開けると小さい人がたくさんいたりしてすごく怖かった経験があるんですが、安楽寺さんの作品には、ああいうときの感覚にちかいものを覚えますね。
安楽寺 そういう経験ってみんなありますよね。
北村 微熱のときなんかは、いつもテレビのなかに入り込んでいました。無音状態で、細く入り組んだコードのなかに入って行くんです。で、奥に行けば行くほどいろんな線が絡まってきちゃうんですよ。
安楽寺 そういうのって不思議なことに、いつもパターンがおなじなんですよね。
北村 そうそう、金縛りのときなんかもかかる前に、もうわかるんですよ。ああ、くるくる、みたいな感じで。
安楽寺 そうですね。でも、わかったら最後、逃れられないんですよね。そういうのも含めて私の作品の根源は、すべて幼児期の原体験にあると思います。写真を撮りはじめたきっかけはさっきお話ししたとおりですが、創作の源はもっと昔の体験
北村 なるほど。それにしても今日は本当にいいお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
安楽寺 私の作品って嫌いな人はすごく嫌いだと思うんですが、そのかわり、スコッとハマってくれる人は老若男女を問わず好きだといってくれるんです。今日お話をして、ノブ社長も“同種”の方の人だとわかって、とてもうれしかったです。ありがとうございました。
information
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ベルト 3万6750円(税込)
チョーカー1万3440円(税込)
グローブ(レディス)2万3100円(税込)
ストッキング 8190円(税込)
安楽寺えみ写真展『Snail Diary』
日程|3月30日(日)まで開催中
時間|12:00~20:00(月曜定休)
場所|RAT HOLE GALLERY
東京都港区南青山5-5-3
HYSTERIC GLAMOUR 青山店B1F
でんわ|03-6419-3581