坂本龍一が推し進める「モア・トゥリーズ」ついに始動!
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2015年5月14日

坂本龍一が推し進める「モア・トゥリーズ」ついに始動!

坂本龍一さんが推し進める「モア・トゥリーズ」ついに始動!

植林・森づくり活動のプラットフォームになることを目的に、各界の賛同人を得て、坂本龍一さんが立ち上げた「モア・トゥリーズ」。 11月30日(金)、赤坂区民センターで行われた『みなと森と水会議2007』内の「坂本龍一のmore treesミーティング」でその全貌があきらかになりました。
オウプナーズでは、モア・トゥリーズが進める植林・森づくり活動を応援しながら、これからの環境問題を考えていきます。
まずは、「坂本龍一のmore treesミーティング」での坂本さんの基調演説をお伝えします。

レポート=梶井誠(本誌)Photo by JAMANDFIX

「このまま進んでいったらどうなるんだろう」という思い

地球温暖化防止のための野心的な目標を設定した京都議定書が1997年12月17日に採択されて、今年で10周年になります。ぼくがここで言うまでもなく、みなさんが地球の温暖化を肌でひしひしと感じていると思います。

ぼくが温暖化を感じはじめたのは90年代の後半、97、98年ぐらいのことで、「このまま進んでいったらどうなるんだろう」と思いはじめたんですね。

地球の大気中には、二酸化炭素(CO2)や、ほかにも温暖化ガスと言われているものがありますが、それがたくさん溜まって、地球の気候の温暖化をもたらすわけです。それらは少なすぎても困るし、増えすぎても困る。少ないと地球が冷えてしまうんですね。

地球はうまくできていて、長いめで見るとバランス、平衡をとろうとします。でもこの200年間ほどは、人間が排出するCO2が増えて温暖化をもたらしているのではないかと、IPCC(INTERGOVERNMENTAL PANEL ON CLIMATE CHANGE 気候変動に関する政府間パネル http://www.ipcc.ch/)のレポートにもあって、ほぼまちがいなく、人間活動によってその現象が起こっているという公式見解がさいきん出されました。



私たちにできることは、それしかない

ぼくらはふつうに呼吸していれば、生きているかぎりCO2は出てきます。

地球は、海と陸上の植物がCO2を吸収し、酸素をつくりだすことによって平衡がとれていましたが、それが崩れてきました。陸上の植物、とくに大きな森林や熱帯雨林などがどんどん失われて、CO2を吸収してくれるはずの植物が減ってきています。ところが人間が出すCO2はどんどん増えている。

また、海の容量はほぼ変わらないわけで、海が吸収してくれたCO2の量はおなじくほぼ変わらなかったわけですが、ここにきてさらに恐ろしいレポートが出てきた。海がCO2を吸収しなくなりつつあるそうです。

大ざっぱに言うと、これまで陸上と海が同じ量のCO2を吸収してくれたのに、海の吸収量も減ってきている。それ以上に、海がいままで蓄えていたCO2が飽和状態になるとあふれ出てくるという可能性も報じられています。

人間がCO2の排出量を下げることは省エネに通じますが、それだけでは間にあいません。私たちは海のCO2の吸収力を上げることは不可能なので、できることは陸上の植物を増やすこと。それは私たちにもできますよね。
もうそれしかないんだと思います。つまり、省エネと森林を増やすこと。



平均的なアメリカ人が一年間に出すCO2は20トン

ここに来ていらっしゃる人は、省エネの努力はもうされていると思います。ぼくもこの2、3年は風力発電所から電気を買っていますが、これからは「カーボンオフセット」という考え方が出てきます。

生き物は、ただ生きているだけでもCO2が出てきます。さらに私たちのような便利な生活をしていると、ふつうに生活をしているだけでも、ひとりひとりの行動からもCO2が排出されてしまいます。

平均的なアメリカ人が1年間に出すCO2は20トンらしいですね。インド人は1トンだそうです。ライフスタイルによっていかに排出量がちがうかがわかりますね。

日本人はちょうど中間あたりの10トンぐらい。私たちはかなり贅たくな暮らしをしているように感じますが、それでもアメリカ人の2分の1。いかにアメリカがたくさん排出しているかがわかります。

たくさん出すなら、出している分をマイナスに引き下げて、プラスマイナス0にすべきですね。それは個人個人の生活のなかでも努力すべきだし、どこかと協力してやるしかない。

ライフスタイルを変更しなくてもできること

私たち都会に住んでいる人間は、まわりに森林はありません。ならば、森林があるところとネットワークを結ぶしかない。結ぶと言っても個人ではどうしたらいいんだろう?

「カーボンオフセット」のやりかたはいろいろあります。

ぼくもニューヨークに住んでいて、「飛行機ばかり乗って、地球に負担をかけているじゃないか」と言われて(笑)いますが、いまは便利な世のなかで、ニューヨーク・東京の往復分で排出するCO2の量が計算できて、5トン超ぐらいなんですが、これをプラスマイナス0にしてくれるところがあります。木を植えなくてもお金で解決する方法もあります。

環境といっても、いま、縄文時代のような暮らしや、清貧の暮らしをしなければならないのかというと、そうとも言えない。すべての楽しみをぜんぶ犠牲にして、慎ましい生活をしなきゃいけないというのでは生きているのがつまらない。たまにはスーパーカーをぶっ飛ばしてもいい、1年に1回ぐらいは。その分を計測してプラスマイナス0にすればいいんです。

前首相の安部晋三さんは、2050年に50%削減と言っていましたが、ぼくの実感だと「それで間にあうのかな?」「もっと前倒しにしないとまずいんじゃないかな?」という気がしています。
IPCCのレポートを見ても危機感は高まっている気がします。ですから、前倒しで進めていきたいと思っています。

more treesホームページ
http://www.more-trees.org/

           
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