#002 　Dr.ロマネリ × Mr.ヤン

あまりに饒舌なクリエイターふたりの終わりなき深夜の蕎麦屋でのカンバセーションはお互いのクリエーション魂がぶつかり合い、周囲を巻き込む？　じつにグルーブなひと時。何気ない会話の端々に、まだ見ぬ創造のヒントがある。

じつは世界的セレブなDr.ロマネリは気さくなナイスガイ

左がDr.ロマネリで、右がMr.ヤン。行きつけの蕎麦屋 山都にて。レンズを向けると、自然とハイ・ポーズ！

ナイキやSOPH NET.のリメイクウエアやジャガー・ルクルトのスペシャル時計デザイン、最近ではダンヒルのレザーアイテムを手掛けるDr.ロマネリことダレン・ロマネリ（左）に知り合ったのは、遡ること２年前。
彼がジャガー・ルクルトの時計をデザイン、その来日記念イベントの際、SOPH NET.の清永氏に紹介されたのがきっかけでした。最初っから人懐っこさ全開で「まあ、こういう調子のいい人ってつぎ会ったときに覚えてくれてなかったりするしなあ」的私の予想が大外れ（笑）。

ヴィンテージ生地を継ぎ接ぎして作ったナイキ公認のリメイクウエアを見たときって度肝を抜かれたっけ。現在、ロマネリ31歳ってことは、25歳の時の仕事！！

ロスに撮影に行った際、偶然ある店で遭遇するや否や、「おお～、元気だった、アキ？　あのとき、伊勢丹でキヨに紹介されて以来だよねえ、懐かしいなあ」とディテールまでちゃ～んと憶えててくれて。

で、「おれの家、遊びに来いよ！」っていうから、すっかり親友モードに突入。速攻お邪魔して、シガーをウムウム。帰り際にはアーティストのキューバ人ホセと一緒にデザインしたレザーブルゾンをポーンとお土産にくれたり、と、いや～余裕あるなあ、この人、と関心しきりの私。

それ以来、彼が来日する際には、必ず連絡をとりあう仲となったのであります。で、常にロスだけでなくストリートシーンのレクチャーを受けてるって次第。感謝感謝です。

粋で洒脱なMr.ヤン

センスをレクチャーしてくれる師といえば、この御方、Mr.ヤンであります（右）。ダンヒルのクリエィティブディレクターにして現在、上海で活躍する氏は、まさに洒脱の権化。そのボーっぶりはつとに有名で英国版GQの「COOLな男100人」に選ばれた、まさに折り紙付きのボー。

じつはトム・ブラウンを私に教えてくれたのが氏でして、それもいまのように世間がブームになる以前の、４年前のことでした。
「ニューヨークに面白いデザイナーがいるから、チェックしておきたまえ。バーグドルフに入ってるから。必ず彼はくるよ、絶対に」と教えてもらい、私は素直にボタンダウンシャツを２枚購入。で、それを買ったのが縁で、トム本人とも以後仲良くなれるのだから、出会いというのは不思議なものです。

そうそう今回は私がずっと探しているアールデコのコオロギ籠を上海で探し出してもらうようお願いしておきました（笑）。

いつも突っ込みどころ満載なグッドセンスの塊なヤン氏。数年前、パリに白いシャツだけを扱ったダンヒルショップをプロデュースしたのも彼。クラシックかつパンキッシュなセンスの持ち主です。

疲れ知らずで水入らず？

そんなふたりを急遽、会食に誘った私ですが、彼らにはダンヒルのプロダクトデザインという共通要素があったため、会話はじつにスムースに、というかいきなり私を取り残して、ず～っとふたりで熱～く激論を交わしておりました。
ヤン氏は今度彼がプロデュースする上海のダンヒルショップを、ロマネリは彼がコラボしたのSOPH NET.のウエアやジャガー・ルクルトの時計などを一通り説明したあとは、「俺らふたりでなんかできるかも！」的まだ見ぬふたりの新プロジェクトの話に。いやはや、熱い男の話は尽きることを知りませんね……。そんな彼らに詩人サムエル・ウルマンの「青春」の一節を捧げます（勝手に）。

霊感が絶え、精神が皮肉の雪におおわれ、
悲嘆の氷にとざされるとき、
20歳であろうと人は老いる。
頭を高く上げ希望の波をとらえる限り、
80歳であろうと人は青春にして巳む。

いやー、青春の１ページ的な出会いをつくれて――
じつに編集者冥利に尽きる私であります。