Chapter11:マラウイの現実-I
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2015年5月1日

Chapter11:マラウイの現実-I

Chapter11:マラウイの現実-I

African JAGの支援のため、8ヵ月ぶりにマラウイに戻ってきた。3度目のマラウイ。
飛行機から降りると驚くほど寒い。もうそろそろ暖かくなっているだろう、なんて思ったのがあまかった。
Tシャツを2枚着て、長袖の上着を着てパンツを履いていても寒い。トランジットで降りた南アフリカは-1℃だった。
アフリカはいつでも暑いなんて思っていると大変なことになる。

photo&text by ASANO Noriko

現地のチュワ語を話せるF君と合流

さて、今回は、マラウイ第2の都市、ブランタイアから入国した。
ブランタイアでは、海外青年協力隊のF君と合流した。F君は26歳で大学院を休学し、マラウイに来ている。将来は国際協力の仕事に就きたいのだそうだ。
マラウイに来て1年8ヵ月。今年の11月に帰国するのだそうだが将来の展望をもっているせいか、何につけてもすごく精力的に動いている。英語も堪能だし、現地のチェワ語も喋れる。
F君が子供たちとチェワ語で話しをしているのを見てうらやましいと思った。とはいえ、私自身は中学以来、英語もやっていなかったのだから英語を喋るのも一杯一杯で、現地語を覚える余裕なんてまったくないし、いまのところ覚えようとも思っていないのだが……。

ともかく今回は、F君にいろいろと現地のことを教えてもらったし、あらためて“支援”のあり方について考えさせられた。
F君とは、今後もいろいろと協力して何かやっていけそうな気がする。


ブランタイアの孤児院の子どもたち

米200kgと砂糖10kgを寄付

着いた早々、ローカルの市場で米を200kgと砂糖10kgを購入した。最初1kg=MWK100(約80円)といっていたのを、最終的に1kg=MWK60(約50円)まで落として、200kg=MWK12,000(約10,000円)で購入。その足で昨年の4月から連続して訪れている孤児院に行った。

行ってみると本来子供たちがいる時間なのに人影がない。孤児院の扉も閉まっている。
『?』と思っているところへ孤児院の近くで遊んでいた子どもたちがママを呼んで来てくれた。ママが笑顔で私を抱きしめて孤児院の中に入れてくれた。
話しを聞くと、ここのところおカネがなくて子どもたちに昼食を与えることができず、午前中で子どもたちを帰しているのだそうだ。泥棒にも入られて電気のスイッチまで持っていかれたそうで電気も点かなくなっていた。
マラウイでは、電柱から家に電気を引くにあたってワイヤーや電線、スイッチなど、すべて個人で購入し、工事を依頼する。その額は現地の価格で結構高く、村などに行けばほとんどの家に電気がない。
ママは、私たちが持参した米200kgを本当に喜んでくれた。近所の子どもたちが米を建物の中に運ぶのを手伝ってくれた。でも重くて運べない。

服と、大盛りのゴハンと、満面の笑みと

翌日、11時すぎに孤児院を再度訪ねると約70人の子どもたちが私たちを出迎えてくれた。とびきりの笑顔と歓声!
子どもたちの笑顔を見るとアフリカに戻ってきたことを実感する。
この孤児院には1歳から6歳の孤児が約120人在籍している。この孤児院のママは、ほかにも2ヵ所の孤児院をみていて、計300人の子供たちの面倒をみている。
経営は政府からの援助が少ないため、ほとんどを寄付に頼っているのだが、孤児の数が急増するなか、その経営は苦しい。スタッフはボランティア。おカネを払っているわけではないので必ず毎日来てくれるわけではない。労働力も不足している。
今回、私たちは日本から117着の子ども服を持参した。100着は安価で購入したもので17着は購入先の“徳山ベビー”さんが、このプロジェクトの趣旨に賛同してくれて寄付してくれたもの。この気持が本当にうれしい。

こういうふうに少しずつでも“African JAG Project”が広がっていってくれることを今後も期待したい。

真新しいTシャツに、大盛りのゴハン!

この食べっぷりのよさ!

子どもたちは一列に並んでボロボロの服の上からつぎつぎに新品の服を着せてもらった。ここの子どもたちは、本当にお利口さんだ。ちゃんと順番を待っていられる。田舎の村に行くと何でも奪いあいなんだけど……。
そしてつぎは、お待ちかねのゴハン。ひさびさの昼食配給なのだそうだ。それにしても驚いたのはお皿一杯に大盛りに盛られたゴハンの量。成人男性でも食べきれないのでは? と思うような量の御飯に少しのトマトソースとゆで卵が添えられている。「いくらなんでもこの量は食べられないよね……」とF君と顔を見合わせてしまった。
ところが……いざ、食事がはじまると子どもたちの食欲はものすごかった。本当に小さい子がアッという間にすべてを食べきった。唖然!  どれだけお腹が空いていたんだろう。あの大量の御飯は一体この小さい身体のどこに入ったのか……と思うほど。

ママの話によると子どもたちはお米が大好きなんだそうだ。通常はお米をおかゆのようにして砂糖を入れたものを食べることが多いとのこと。だから今日は“特別な日”。子どもたちがただただ黙々と食べる姿を呆気にとられて見ていた。ママは「今日は子どもたちにとってクリスマスだ」といっていた。
私たちが孤児院を離れるとき、満腹になった子どもたちが真新しい服を着て本当に満面の笑みで「バイバイ」って手を振って見送ってくれた。
子どもたちは本当に可愛い……だけど私の心のなかには何か割り切れない思いが渦巻いていた。


手を振ってくれる子どもたち

たしかに子どもたちは喜んでいた。本当にうれしかったんだとも思う。……でもこんな一過性の支援では本質的なことは何も変わらない。200kgのお米もアッという間になくなるだろう。服だってすぐにボロボロになるだろう。あの子どもたちがちゃんと生きていかれるようになるために何をするべきなのか……もう一度キチンと考えなくてはいけないと思う。強度の焦燥感に襲われた。
……とはいえ、大人の自立支援はある程度考えられても、あんなに小さな子どもに一体何をしろというのだろう。あの子どもたちはあんなに小さいのに生きていくことを知っている。ほんの少しの水をみんなで分け合うことを知っている。もし自分がもらえなくても一切の文句をいわない。
あたりまえのように物がある世界で生きてきた私よりもずっとずっと力強く生きているし、いつも前を向いている……というか、後ろを振り向く余裕なんてもっていない。今日を生き抜くことが明日のゴハンに繋がるんだ。

先進国でしばらく友人に会わなくても“あの子元気かな?”。
アフリカでしばらく会わないと“あの子、生きているかな?”……この現実に心が痛い。

―続く―

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