カラー写真への遙かなる道 第2回
<Fred JOURDA>との対談
写真人生対談
Fred JOURDA/フレッド・ジョルダ×飯塚ヒデミ
Hidemi:ありきたりの質問だけど、写真に触れるようになったきっかけは?
Fred:7歳の頃、父親からKODAK 224というカメラをもらってからかな? このカメラはシャッタースピードは一定で、被写体によって絞りを変えられるようになっているんだけど、絞りは2.8とか16とかという数字のものではなく、風景や人物、太陽や雲が絵で示されているものだから、子供でも簡単に撮れるカメラなんだよ。
H:君が今も使っているあのカメラでしょ!
簡単なカメラだから結果が悪とは限らない
F:そうそう、その後いろいろな種類のカメラを買って撮ってみたけど、僕が撮りたい写真にはこれで十分なんだ。僕はプリント技師だから写真を撮るとき、それがどんな感じで撮られているかが大体わかる。
僕の被写体は自然が多いので、移動中の車の中から撮った真っ赤な夕日だったり、川の流れだったりする。
僕は自然を追いかけて撮ったりすることがない。ジャングルのゴリラを撮るために何日も動かずにその一瞬を待ったり、広い草原に1匹の野鳥が飛び立つ瞬間を待つ写真家もいるが、僕の写真は“自然を僕が捉えた!”という感じより、レンズを通して僕の目に入ってきた自然やその一瞬を写真機というもので撮らせてもらう、という感じかな?
だから絞りとかシャッタースピードとかいっている間にその瞬間を逃しちゃうでしょ。簡単なカメラだから結果が悪とは限らないでしょ。
カメラは全部違うものだから結果も違う
H:僕もある写真家とそんな話をしたことがある。
その有名な写真家がロケの撮影中にポケットからオートマチックの35mmのカメラを出して撮影をしていたので、なんで有名な写真家が!と僕は単純にプロの写真家は高価なカメラを使わなくてはいけないのでは!と勝手に思ってしまったんだろうね。
後でその写真家に聞いたら、高価なカメラだから良い写真が撮れるとは限らない。カメラは全部違うものだから結果も違うんだよ!こんなカメラでもたまに“すごい”っていうのが撮れてたりすることがあるんだよ!肝心なのは機材じゃないんじゃない?って言われたな~あの時!
F:僕は写真のテクニックなどはあまり気にしない。僕にとって大切なのはレンズをのぞいて、フレームを決めて、シャッターを押すこと。そしてプリントだね。
同じネガフイルムから1000種類の違うプリントを作りだす
H:カラープリントってすごく難しいものと思うんだけど、何かコツみたいなものはあるの?
F:確かにモノクロームプリントに比べれば手間のかかるものだけど、決して難しいものではないと思う
カラープリントは3色(赤・青・緑)で構成されているから、技術的なことをいえば同じネガフイルムから1000種類の違うプリントを作りだすことも可能なんだ。
一番難しいのは技術的なことではなく、写真家が何を求めているか、どういう結果を創造しているかを理解することだと思う。
写真家によっては作品の仕上げ方をきちんと説明できる人もいるが、たいがいは、テストプリントをしたものに何度も修正を加えて仕上げていくことになる。良いプリントをするということは、写真家を良く理解することだね。
いかに写真家の感情や気持ちを理解するか
H:僕もPICTOによく顔を出すけど、確かに君のブースの周りには写真家がいつもたくさんいて、何かそこにいると皆安心しているかの様に思えるよね。
結局カラープリントはモノクロームプリントと違って手間もかかるし、それなりの機材も必要で、自分のお風呂場でちょっと週末プリントでも!ということにはならないから、プロのラボにお願いすることになる。
自分で撮った写真を自分の手で仕上げることが出来ないということは、写真家にとってかなりのフラストレーション(欲求不満)がたまることになると思う。
そんなフラストレーションがたまった写真家のプリントをするのだから、技術的なことはもちろんだが、いかに写真家の感情や気持ちを理解する方が確かに大切になってくるよね!
F:そうなんだよ。だから僕も相手と気持ちが通じなかった場合、何となく普通のプリントになってしまったりすることもある。
プロだからそれなりのものには仕上げるけど、そういう写真家の人とは結局数回プリントする程度で終わる場合が多いかな。
僕が現在プリントを手掛ける写真家の方々とは長い良いお付き合いをしていますよ。“肝心なのは機材じゃないんじゃない?”と言うその写真家は、写真や世の中の仕組みを全て理解しているんでしょうね!素晴らしい。
H:次は写真家としての君に質問したいと思うが……。
(次回に続く)