作品への淡い恋心はどこへやら、必死です！

「いつか私もこういった作品ができるような女優になりたい！」という強い想いを胸に抱えたまま、あっという間に時は過ぎ──。数年前、NHKの歌番組で雪村いづみさんと久しぶりに共演させていただいたさいにこの話になり、彼女が「もうそろそろやったら？」と言ってくださったんです。“ハッ”とした瞬間でした。やれるのならやらないと！　でも、“やれる！”って誰が決めてくれるのだろうか？　私にこの役ができますか？　って誰に聞けばいいのだろうか？　それを知る術などまったくなく……。

でも人生は1度きり。初演の雪村さんの年齢をとっくに越えてしまった私は、おそるおそる手を挙げてみました。するとアニバーサリーコンサート「アクトレス」のときのプロデューサーさんが私の手をつかんでくれました。ま、引っかかったというかね（笑）。

左から、麻生かほ里さん、戸田恵子、入絵加奈子さん

さあ、もう作品への淡い恋心はどこへやら、必死です！　翻訳上演台本は、本来オリジナルが専門である三谷幸喜さんに手がけていただきたいと前々から思っておりました。そんな贅たくなお願いにもかかわらず、なんととおってしまいました！　さらに演出は三谷さんにご推挙いただいたG2さん、マネージャーのジョー役には石黒 賢さん！　忙しい方々だというのに神様は私に味方してくださった。というのも、本当に隙間を縫うようにこの期間だけスケジュールが空いていた、という感じだったんです！

三谷さんは本当にいつもおもしろいことをおっしゃる。G2さんとは三谷さんだってお仕事はじめてだというのに臆することなく……（笑）。ちなみにG2さんとは私も今回がはじめて。石黒 賢ちゃんとはドラマ「ショムニ」でずっと一緒だったけど、舞台で演じるイメージは私のなかにまったくなかったんですよね。三谷さんの豊かな発想、万々歳です。

彼らがいてくれるだけでいつもの稽古場とはちがって見えた

三谷さんの“直感”には本当に脱帽しました。G2さんは（当たり前かもしれないけど）ミュージカルの演出にふさわしく、音楽への造詣が深く、とても真摯で紳士（笑）。丁寧かつハイセンスな演出をしてくださいました。石黒 賢ちゃんもG2さんとおなじく真摯で紳士。彼が登場した瞬間、舞台上に爽やかな風が吹き抜けます（笑）。あらためてマジマジと舞台で台詞を交わしてみると、ほんと、イイ男です（笑）。

さて、ほかのメンバーもご紹介します。コーラスガールの入絵加奈子と麻生かほ里。コーラスガールはこのふたり！　と、ずっと前から私のなかでは勝手に決まっていました（笑）。いまやミュージカル界には欠かせない存在の彼女たち。歌、ダンス、芝居、三拍子揃った強者です！　1981年の初演時、私の力不足で雪村いづみさん演じるヘザーの仲間としてはあまりに頼りないコーラスガールだったこと、それをずっと引け目に感じておりました。本来ならもっと仲間役として支えらる力をそなえてなければならないのに……と。実力も年齢も正直、離れすぎている……と（泣）。でも今回は大丈夫！　ふたりは最強のコーラスガールです。

そしてジェイク役には“ブラザーGO”こと、植木 豪。ライブ以外の舞台で一緒に仕事をするのは、出会いの場となった2006年の舞台「HUMANITY」以来。

今回ジェイク役はバンドマンとしても機能しなければならない役で、豪には無理難題を押しつけています（笑）。しかし彼のダンスで舞台を華やかにしてもらいたかったし、ひさびざにみっちり一緒に仕事をして、芝居のこととか、舞台づくりとか、ともに学んでほしいなという願いもありました。

また、共通言語が増えればBGブランドなど一緒に仕事をしていくうえでイメージがつかみやすくなっていきますしね。今回もブラザーGOデザインのスタッフTシャツとパーカーを作り、みなさんにプレゼントさせていただきました。

今回の舞台では終演後お客様に「酢てきスタイル」が配られました。

稽古中や楽屋、そしてもちろん上演中の舞台上でも、彼らがいてくれるだけでいつもの稽古場とはちがって見えた。はじめからホームな感じ──強い支えになってくれました。

青山円形劇場での上演も私にとってははじめてですが、至近距離でのお客様との関係にも少しずつ慣れてきた今日このごろ。みなさんが笑い、泣き、そしてなんといっても“パワーをもらいました”との声に、私もパワーをもらっています！　とにかく総じて万々歳。みんなに助けられて「今の私をカバンにつめて」東京公演、無事千秋楽を終えました。大阪での上演も楽しみにしております！

INFORMATION

今の私をカバンにつめて

大阪公演｜10月15日(金)～19日(火)
会場｜大阪ビジネスパーク円形ホール

翻訳・上演台本｜三谷幸喜
出演｜戸田恵子
入絵加奈子・麻生かほ里・植木 豪（Pani Crew）
石黒 賢