INTERVIEW|写真展『3人展 ―Soul Brothers―』立木義浩インタビュー
エミール・ミュレール|ベルナール・マチュシエール|立木義浩
Emile MULLER|Bernard MATUSSIERE|Yoshihiro TATSUKI
『3人展 ―Soul Brothers―』 立木義浩インタビュー
OPENERSで開催をお知らせした、飯塚ヒデミ氏(Track Artwork Factory)のプロデュースによる写真展『3人展 ―Soul Brothers―』が、東京と大阪のキャノンギャラリーで好評のうちに終了した。キャノンギャラリー銀座で、立木義浩氏と、立木氏のアシスタントを務めた経験もあるフランス人写真家 ベルナール・マチュシエール氏にお話を聞いた。
Text by OPENERS
男たちの不思議な人生へのかかわりかた
──キャノンギャラリーの会場に入られて感想はいかがですか?
立木 写真家ひとりの展覧会というのはよくあるけど、この3人展はおしゃれでしょ。それぞれが歴史をもっているカメラマンだからね。とくに今回は、エミール・ミュレールというしたたかな大人の報道写真家がいて、彼に師事したベルナール・マチュシエールが、日本では僕のアシスタントをしたこともあって、そういう不思議な縁もあってこの展覧会になっているんだけど、エミールの写真を日本のひとにも知ってもらいたい。
──エミール・ミュレールの写真のどんな点を評価されますか?
立木 報道カメラマンには有名無名、いろんなタイプがいるけれど、エミールの場合は、報道としてどういうポジションにあるかというより、この時代をちゃんと写しとめているということがすごい。写真の1枚1枚はおもしろいし、ネクタイをしているピカソの写真からはいろんなことが想像できる。エミールの写真にはエミール本人が写っているよね。つまり現場にカメラマンがいた形跡が残っている。
──このピカソは、ポーランドで戦後の平和会議に出席しているものだそうですね。
立木 珍しく緊張している写真だよね。エミールの距離感がいいんだな。こういう写真は狙っても撮れない。エミールは報道カメラマンを超えていたよね。写真で時代を正すとか告発するとか、そういう野暮なことは言わないやつだったし、ベルナールも俺もエミールは超えられないね。
──ベルナールさんは、立木さんのアシスタントだったのですね。
ベルナール そうです、1971年に日本に来て2年ほどアシスタントをしました。
立木 当時は外国人のアシスタントは珍しくて、雑誌の『アンアン』に載ったりして人気者だったんだよ(笑)。
ベルナール 当時21歳で、立木さんのアシスタントは4人いて、日本に来たらいきなり軍隊に入ったようでした(笑)。最初の3ヵ月はわけがわからなくていやでしたね。それから先輩を見習って、日本人のことがわかりだしてから好きになりました。勤勉さはもちろん、人生も学びました。
──立木さんから学んだことは?
ベルナール 立木さんからは、写真を撮るひととしてどう生きていくか。を習いました。
見るひとの気持ちが寄り添うのがモノクロの魅力
──今回の3人展は、みなさんモノクロ写真ですね。
立木 エミールの時代はモノクロだよね。ベルナールもモノクロが好きでしょ。モノクロは色が剥落していることで、見るひとの気持ちが寄り添う感じがある。あるひとは「モノクロはラジオですね。聞き耳を立てる感じで向き合うもの」と言ったね。あなたもこの展覧会を見に来たひとも、この会場に来るまでに色の氾濫のなかをかきわけてきたわけで、ここに来たらやっとまともな人間になったわけだ(笑)。
──立木さんの今回の出品の狙いは?
立木 たとえば東京に住んでいて思うのは、街は壊されていくし、地名は変わっていくし、こういうものを撮って残しておかないと、日本の“芯”がなくなっちゃうね。いまでは外国人のほうが日本のことをよく知っていたりして、日本人自体が日本のことを知っておく必要がある。日本のことを知ったかぶりしたいよね。変わらないものを撮りつづけていくけど、最終的には写真に気品がほしい。見てもらって、野暮な迫力がついていたら褒めてください(笑)。
──3人3様の写真ですが、立木さんの最近の活動は?
立木 デジタルになってから前より写真を撮るようになった。写真がおもしろくなってきた。プロの写真家でも、撮るときの目と選ぶ目は違うから、いちばん健康的な写真とのつきあい方は、誰にも見せないこと(笑)。気に入った写真は引き出しのなかに入れておいて、そっと見て、うまいって思えばいい(笑)。
──こうして会場でプリントを見ると特別な気分になりますね。
立木 そうだろ? パソコンの液晶画面じゃなくて、反射光で見るプリントがいいよね。モノクロ写真こそが写真らしさに溢れていると思うんだ。
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