The Beetle Presents Tokyo Crossover/Jazz Festival 2012 いよいよ9月29日開催! 対談 沖野修也×DJ井上薫
The Beetle Presents Tokyo Crossover/Jazz Festival 2012
クラブ・ジャズ&クロスオーバー・ミュージックの祭典 いよいよ9月29日開催!
対談 沖野修也(KYOTO JAZZ MASSIVE)×DJ井上薫(1)
2003年から始まり、国内外の豪華な顔ぶれが勢揃いするクラブ・ジャズ&クロスオーバー・ミュージックの祭典であるライブ/DJイベント「Tokyo Crossover/Jazz Festival」。毎年盛り上がりを見せるこのイベントだが、9回目の開催となる今回も、音楽はもちろん、会場の選定や室内装飾にも沖野修也の世界観を反映し、ほかでは観ることのできないおとなが楽しめる内容となっている。その沖野修也と、彼が日本でもっとも尊敬するというDJ井上薫が、音楽に対する熱い想い、そして、イベントの醍醐味を語り合った。
Photographs by JAMANDFIXInterview & Text by MATSUDA Natsuki(OPENERS)
景色や空気を変える音楽
井上 沖野さんと初めてお会いしたのは、場所は六本木のWAVE(ウェーブ)ですよね。僕が24歳の時から28歳くらいまで働いているとき。
沖野 うん。ちょうど、井上さんが働き出したときに僕は上京してきたんです。六本木のWAVEでCDやレコードを買っていました。ケニー・ドープが来日したときも、どこかに行きたいというからWAVEに連れて行ったしね。
井上 働いているときに、ケニー・ドープが来た!って感動して、レコードのジャケットにサインしてもらったなぁ。それに当時THE ROOMで、月曜日にクラブキングがレギュラーイベントをしていたし。そう考えると、出会ってからもう20年なんですね。ということはTHE ROOMも20周年?
沖野 そうですね、おかげさまで20周年を迎えます。井上さんには、2009年の“Tokyo Crossover/Jazz Festival”(以下、TCJF)、昨年はプレパーティーにも出演して頂いたので、今年は本編に。横浜で開催しているグリーンルームフェスティバルのクルーズ・パーティーの際も出演してもらいましたね。
井上 沖野さんはずっとパワフルですよね。作り上げているものすべてが“沖野組”になっている。僕、20代前半までずっとバンドをやっていたんですが、クラブでバイトを始めてアシッドジャズからレアグルーヴを聴き、DJになったんです。だからもちろん沖野さんの名前は知っていました。
――深いつながりのあるお二人が競演されるTCJFですが、今回のテーマは?
こだわっているのは、さまざまなひとをひとつの切り口で集めたいということ。テクノ、ジャズ、ヒップホップ、ハウス、レアグルーブやファンク――ジャンルはちがえど思考はわりと外向きなので、おなじニオイを感じるひとはどんどん吸収していきたい。井上さんには、TCJFにテクノやトライバルミュージックの影響を持ち込んでもらいたいですね。
井上 アーティスト側で、こういうことをちゃんとできるひとはなかなかいないとおもう。僕は絶対にできないですよ。
そして、このTCJFの求心力が「ジャズ」というのがすごいですね。いまはハウス、ダンスミュージックでDJをやっていますが、じつは僕自身も入り口はジャズで。音楽的な豊かさというのでしょうか。いまだってもちろんジャズは好きだけれど、なかなかかけられる現場が少ないのが現状なので。
――TCJFが恵比寿ガーデンホールに場所を移して2回目ですね。
沖野 ちょうどいいんです、このサイズ感。演者が遠すぎて見えないという距離ではなく、かといってせまくてギュウギュウではないところがほどよくて。それが現時点で考えている音楽イベントの大きさにはフィットしている。もちろん、もっとイベントを大きくしていきたい。でもそのときにはブッキングするアーティストもコンセプトも変わってくるだろうし。いまは踊れるジャズと、ジャズの影響を受けているダンスミュージックを軸に、1000~2000人収容の規模感でみんなとワイワイやれるのがいいですね。
井上 いつか、ぜひ野外でやってもらいたいですね。
沖野 今回は井上さんに野外フェスの雰囲気をもち込んでほしいというのもブッキングの意図としてあるんです。TCJFは屋内だけど、井上さんが回しはじめると、あれ?なんか野外フェスっぽくない?みたいな感じになるといいかなと。音楽で景色や空間の雰囲気を変えることはできますから。クラブ・ジャズ&クロスオーバー・ミュージックといいつつ、じつは音楽のジャンルは結構ひろいんです。
沖野 有名だったらだれでもいい、音楽的にコンセプトがなくても集客力がある、といったものもビジネスとしてあってもいいとおもう。ただ、せっかくクラブという空間でDJという仕事に就いている以上、やはりこだわりがあったほうがいい。意識的でも無意識的にせよコンセプトというものがあって、そこにひとを巻き込んでいくほうがDJカルチャーの雰囲気があって好きだな。景気が悪いからみんな売り上げを考えるけれど、それは僕のやることではない。
井上 かっこいいですね。こだわりというか、自分たちが体験してきたことを伝えていきたいという気持ちで動いているとおもう。僕らの世代は全員その想いをもって、これからやっていくべきだなとおもいますね。
The Beetle Presents Tokyo Crossover/Jazz Festival 2012
クラブ・ジャズ&クロスオーバー・ミュージックの祭典 いよいよ9月29日開催!
対談 沖野修也×DJ井上薫(2)
「質」を求められる状況
沖野 クラブでDJはじめたときって、お金がなかった。もちろん食べていかないといけないし、お金も欲しかったけど、“稼ぐ”のが目的なら、DJになっていなかったしクラブにもいなかった。
井上 そうですよね。まず遊びに行くところからスタートして、DJが出来る機会があって。平日も帯で回していましたね。それもほかの仕事をしながらやっていて。そのうちに、たまたま制作したものがいい感じで受け入れられて、仕事としてやれるようになったので。やはりお金を稼ぎたい、という入り口ではなかったですよね。
沖野 いつの頃からか、DJが稼げるようになり、何枚売れた、何人入ったなんていうベクトルになってしまったけれど、音楽不況といわれているいまの状況も僕はわるくないとおもうんです。好きでつくるひとともう食べられないからやめるひとがはっきりする、そういう分岐点なのかなって。
井上 うん、淘汰されはじめてるとおもいます。状況的にも続けていくことが難しいし、必然的に離れていく。日本国内の社会の変化というのは、震災から変わった感じはあるじゃないですか。それぞれのマインドも変わっていくわけですから。だからいま試されているというのは本当に僕もおなじで。いままでのような収入がなくても、どれだけ、継続できるのかを試されたり、そのためにはいま何をすればいいのかを突きつけられている。もちろんCDは売れてほしいし、お金もいらないわけじゃないけれど、自分の音楽にたいする情熱が試されていると感じます。
だからイベントやるときも、本当に好きなひとしかブッキングしていないので集客は心配です。それゆえに、この1000人、2000人というなかで成立することはラッキーですね。いまは好きな仲間と、どれだけ質の高いことをやれるかが大事。数よりも質になりましたね。
井上 質が問われている、というのは、どんな業界でもおそらくそうでしょうね。本当に物が量産されすぎていて。そこに引っ張られたのだとおもうんですよ、もちろん僕も。振り返ってみれば、「質」か「数」か、どちらかといえば「数」になることも過去にはあったな、と。でも、それがいま逆転してきている気がしています。「質」をとにかく追求するしかないのかな、というか。
やってきて蓄積されたものをさらに高めていく、というように集中したいなというのはありますね。
沖野 それをね、支持してくれるひとっているとおもうんです。
たとえば、震災後の半年くらい、THE ROOMを開けていても、本当にひとが来なくて。でも、一晩に50~100人ですけど、THE ROOMのこだわりや世界観が好きなひとが集まっていることが僕の支えになりました。その「質」にこだわるとか、自分の世界を守ることでちゃんと支持をしてくれるひとたちが絶対にいるから。質を求めることによってついてくるひとの数を、わずかずつでも増やしたい。ふと振り返ってみると、そのこだわりが長年にわたって支持されてきたわけですし。決して媚びることもせず、音楽的に妥協することもなく20年間やれてきたことをよかったと感じますね。
このイベントも9回目。始めるときはこんなことしてお客さんが来るのか、なんて不安だった。周囲の人間も無理だとか言うんです。でもクラブを20年、フェスを10年やれているということは、自分がいいとおもったことを努力し、仲間と共有して継続していけば結果を出せるんだ、とおもいました。
井上 本当にすさまじい努力ですよね……まさに継続は力なり。そして沖野さんはとても人徳があるんですよ。サポートしてくれる人が常にいるということ、それはやはり類い稀な才能ですし、素晴らしいとおもいます。そうだ、THE ROOM 20周年なんですね、おめでとうございます!
沖野 ありがとうございます!
そのTHE ROOMは現在「クラブ」ではなく「タマリバ」と言っているんです。あるとき、スタッフと会議していて、俺らってなんだろうと。いまのクラブにはひとをいっぱい入れて盛り上げて、終われば何も残っていないようなタイプの店もある。クラブは大好きだし、僕はいまもクラブのDJでもありますけど、そういったクラブがクラブとして認識されるなら僕の考えるクラブ観とはズレているんですよね。そこでTHE ROOMは脱クラブ宣言をしたんです。“フジヤマ”とか“テンプラ”じゃないけれど、“タマリバ”なんてカタカナや英語にして輸出しよう!なんて話になりまして。
バーとクラブの中間で、働いてるひとがアーティスト、その空間から音楽やカルチャーが生まれてくる、かつて僕たちが好きだったクラブ。だから、急に「タマリバ」になったわけではなく、もともと「タマリバ」だったけれど便宜的に「クラブ」と呼んでいたわけで、ある日覚醒して俺たちはずっと昔から「タマリバ」だったんだ!みたいな。
井上 いまの意味合いでのクラブはやはり少し違いますよね。数に寄っていくのはしょうがないのかもしれないですが、それだけの装置をつくったからたくさんのひとを入れないとまわらない、という考えの所が多い。
「タマリバ」、いいですね。先日も、またKAWASAKIくんのイベントに呼んでもらったんですけど、本当に楽しみに来てるお客さんが常にいて、すごくいいですよね。携帯をいじっていたり写メを撮ってるやつもいないし、みんな踊りまくっている。
そして、あの距離感もクラブではありえないんです。近すぎる! だってもう目の前にDJがいますから。フロアの真ん中にブースがあって、アルティメットみたいで。フロアでパーカッション叩いている子もいて、そっちもガンガン盛り上がっていたりして。
沖野 ちいさくてもコンセプトやメッセージがあれば、そこに求心力が生まれるし。TCJFも考え方はそうですね。巨大な、1000人規模のタマリバ。
The Beetle Presents Tokyo Crossover/Jazz Festival 2012
クラブ・ジャズ&クロスオーバー・ミュージックの祭典 いよいよ9月29日開催!
対談 沖野修也×DJ井上薫(3)
豪華なキャストとの意外なつながりとは?
井上 沖野さんのような目線をもっているひとはすごく特殊で――僕は音楽をつくることにしかそれを発揮できないんですよ。
沖野さんが全部の進行に携わっているというのは、もはや映画監督の視点ですね。すべてを俯瞰で見ていなければならない、神の目線を発揮しなければここまでのプロデュースは出来ないとおもうんです。
(沖野さんの発売したばかりのCDを見て)……今回、ミステリー・オブ・エイジズやります?
沖野 もちろん。4年前にKYOTO JAZZ MASSIVEでベンベ・セグエというボーカリストと、ミステリー・オブ・エイジズのカバーをつくり、デモバージョンで、これコピーしたらアカンよと一部のDJ達に渡したことがあったんです。
で、僕がカナダのトロントに行った際に、ムーンスターというDJがなぜかそれを入手し、勝手にリエディットもしてかけていたんです(笑)。「修也が絶対好きな曲があるから、あげる」と、頂いたらやはり自分の曲。「好きもなにも。これ俺の曲やで!」と伝えると「ごめーん、誰か知らなかったんだよ!でもこれ、ベンベ・セグエだよね?」って。「ベンベ・セグエもなにも、これ俺の家で録ったんだよ!」みたいな。
それを昨年、ムーンスターが7インチでカットしたんです、経緯が面白かったのでOKを出してあげて。世に出すときに作曲者の許可を得るため、彼がカルロス・ガーネットの連絡先を探し出してコンタクトをとったらベンベ・セグエが歌っている僕のバージョンを気に入ってくれて、快諾していただいたんです。そうしたら日本に呼べ、と。
これは丁度TCJFのヘッド・ライナーにいいじゃないか!と思ったわけです。で、弟とカルロス・ガーネットを呼ぶなら完成させないといけないよなってことになり、今年これを新たなバージョンで収録しているんです。そしてベンベに、カルロス呼ぶけど歌ってくれない?と言ったら、歌うもなにも願ったり叶ったりだと。
いろいろなことがつながって、このイベントに辿り着いているから、僕としてもとっても思い入れがあります。なおかつ、ミステリー・オブ・エイジズを含む、過去のカルロス・ガーネットのアルバムから好きな曲を5曲選んで、本人にやってくれとダメもとで言ったら「いいよ」と(笑)。
井上 これはかけちゃだめですよね?
沖野 それはダメです(笑)
――それでは最後、読者にひと言お願いします。
井上 先日、北海道で久しぶりにDJをやって、そのあと道東に旅立って知床半島まで行きました。あの広大な自然を、恵比寿で投影できるように、すべての調整をここに合わせます。意気込みを凝縮して本当に来ていただいたお客さんに楽しんでもらえるように、万全を尽くして臨みたいとおもいます。
沖野 井上さんはイベントのすごく重要なピースです。やはり僕らのブッキングは間違ってなかったな、と。出演者のなかのひとりに興味をもってもらえたら、イベント全体を楽しんでもらえる。それが僕のフェスティバルとほかのフェスティバルとのちがいなんです。音楽ジャンルも世代もちがう人たちが、一同に会したときのカタルシスを最初から最後までいてもらって、感じてほしいですね。
Seeds And Ground / SAGCD027
Jazzy Sport Distribution
2012.9.12
CD(ノンストップミックス仕様 / 限定生産)、iTunes、Beatport
2310円(税込)
2年の歳月を経て届けられた『A Missing Myth』=『(未来の)失われた神話』と題されたKaoru Inoue待望のニューアルバム。アジア、アフリカ等の民族音楽をはじめとする様々な音楽の記憶/歴史と、ハウス/テクノをはじめとするエレクトリックなダンスミュージックの躍動/衝動を紡ぎながら、美しい闇夜の情景から夜明けへの祈りを描写し祭祀のトランスへと到達する、サイケデリックな物語性に溢れたノンストップ・ミックスで構成(CD盤のみ)された"普遍的魅力''を放つコンセプチュアル作品。(ライナーノーツより)
The Beetle PresentsTokyo Crossover/Jazz Festival 2012
世界基準にこだわる国内唯一のクラブ・ジャズ&クロスオーバー・ミュージックの祭典“Tokyo Crossover/Jazz Festival”9度目の開催決定!
世代と時代と国境とジャンル のすべてを越えて、過去と未来を現在に繋ぐ都市型音楽フェスティバルの進化と成長は必見!!
2012年9月29日(土)
Open / Start:18:00
The Garden Hall(恵比寿)
Tokyo Crossover/Jazz Festivalオフィシャル・コンピレーション第二弾、
“TOKYO CROSSOVER/NIGHT 2012"発売!
ジャズ/ソウル/ファンク/テクノ/ブギー/ハウスといった様々な音楽をブレンドし、ダンス/リスニング/ドライブ・ミュージックのボーダーを超越したクラブ・ジャズ&クロスオーバー・ミュージック集!!
CARLOS GARNETTのKYOTO JAZZ MASSIVEによるカバー“Mystery Of Ages(Live Mix)"をはじめ、DJ KAWASAKIの“Ain't No Mountain High Enough"のセルフ・リエディット、ジャズDJの間で話題のBRISAの新曲など未発表音源を多数収録した豪華コンピレーション!
既に中古盤市場で高値を付けるYOSUKE TOMINAGA(CHAMP)
の“Phantom”も初CD化!!
『The Beetle Presents TOKYO CROSSOVER NIGHT 2012』V.A.
2012.9.12
2400円(税込)
VIA-0080(Village Again/Extra Freedom)
http://www.tokyocrossoverjazzfestival.jp/2012/news.html#0807_1
The Room 祝20周年!Anniversary Yearとしてマンスリー単位で
関連イベントを企画中!
詳しくはHPをご覧下さい。
http://www.theroom.jp/
KYOTO JAZZ MASSIVE Presents SOUND SANCTUARY
~沖野修也マンスリー・コンピレーション
“Mix for OPENERS”50回記念スペシャル×The Room 20周年記念パーティーvol.10~
業界初、全曲 iTunesミュージック・ストアで “即購入可能 ”なDJ セット!
沖野修也が全曲 iTunesで販売されている音源だけを使った DJ プレイをTwitter、Face Book にて
アルバムのリンク先を1曲ごとに公開、即楽曲判明&ダウンロードが可能。
ユーストリーム中継で大きな話題を呼んだ完全合法プレイにつづく、実験的合法ダウンロード推進 DJ パーティー決行!!
日程|10月13日(土)
時間|10:00オープン/スタート
チャージ|22:00~23:00 1500円(1ドリンク) / 23:00~ 2500円(1ドリンク)
会場|The Room
東京都渋谷区桜丘町15-19 第八東都ビルB1
Tel. 03-3461-7167
DJ|SHUYA OKINO(KYOTO JAZZ MASSIVE) 、TSUYOSHI SATO
FOOD|Taro Komiya ※ワンプレート|1000円 限定20名様分
http://www.theroom.jp/