戸田恵子 連載|戸田恵子×植木 豪 あらためて2010年を振り返る
戸田恵子|舞台、ライブ、初のオリジナル楽曲……
2010年、ともに乗り越えた苦楽をさらなる飛躍の糧にして
戸田恵子×植木 豪 対談(1)
新年最初のとなる今回は、「B・G brand(B.Gブランド)」でおなじみの植木 豪氏が登場。昨年は定例のライブにくわえ、女優 戸田恵子が長年“いつかは……”と焦がれつづけ、ついに実現した念願の舞台『今の私をカバンにつめて』にて4年ぶりの共演を果たすなど、K-CO×GOコンビのあいだにより密接なコミュニケーションが生まれた1年だったのではないだろうか。そんなふたりがいま、あらためて2010年を振り返り、あたらしい年への抱負を語った。
Text by OPENERS
それぞれの芝居に向かっていく姿勢が見えてくる
戸田 2010年は秋に舞台『今の私をカバンにつめて』で久びさに一緒に板のうえに上がりました。舞台はどうだった?
植木 おもしろかったですね。最後にお客さんをもっていくテクニックとか、姉さんの底力を見せてもらいました。
戸田 4年半前でしょうか、我われの出会いの場となった舞台ではほとんどカラみもなく、話もしないで終わったんだよね。
植木 今回の舞台ではライブのリハーサルをするシーンがあったんですけど、そのとき一緒にライブをやっててよかったなって感じました。バンドにいる方もそうですけど、“いつものライブではこのひとはこうしている”ってイメージが自分のなかにあったことはすごくありがたかったし、姉さんのライブに対する気持ちみたいなものもわかりますからね。
戸田 舞台って稽古もありますから本当にずっと一緒にいるんです。私が毎日稽古場にいってどう芝居を作るのか、鶴の機織りみたいなところを見せなきゃならない。稽古ではそれぞれの芝居に向かっていく姿勢が見えてくるんです。
それは役者が10人いれば10人ともちがうと思うんですけど、どうしても流されがちになるなかで揺るぎのないものを作っていくための稽古。時には見られたくないときもある。でも今回はかなり苦しむことになるだろうと思っていたから、見せてもいいひとたちとやりたいと思っていたし、ほかのひとだったらもっと隠して我慢してやらなきゃならないこともいっぱいあったと思う。甘えたわけじゃないけど、安心感はずっとありました。
植木 いや、もう完璧に織れてたんですけどね(笑)。
戸田 そんなことはないよ!
植木 仕上げに名前を刺繍してるぐらいの感じでしたよ(笑)。
戸田 みんな役者ですから、そうじゃなくても“仲間だよ“って顔を演じられるんだけど、今回の少数精鋭のミュージカルでは稽古場からそれを味わいたかった。
私のワガママというか、そういうひとたちとやってみるとどうなるのかなって。
植木 姉さんの思惑は成功したんじゃないかな。とくに少ない人数だし、ほんと些細なこと、たとえば目が合うだけでも “仲間感”って出ないといけないと思うんですよ。本物のバンドだったら失敗したときも笑ってるものでしょう?
戸田 こうした機会があると私も豪の機織りを見るし、私のも見ることになる。ステップアップするにはこういうことが必要だな、豪にはこういうとこをもってやってもらいたいな、ここがすごくよかったなとか、いろんなことを感じることができました。
いつも頑張っているとは思うけど、どう頑張っているのかというのは見えませんからね。身内的存在のひとのそういう一面がお互いを刺激し合えたんじゃないかなと思います。
植木 僕を呼び止めなきゃいけないところで呼び止めてくれなかったときはおもしろかった(笑)。姉さんとおり過ぎてそのまま袖にはけちゃうところでしたよ! 距離が遠いもんだからお互いすごい大声になっちゃって(笑)。
戸田 おかげですごいリアルな芝居になったじゃない(笑)。
戸田恵子|舞台、ライブ、初のオリジナル楽曲……
2010年、ともに乗り越えた苦楽をさらなる飛躍の糧にして
戸田恵子×植木 豪 対談(2)
“ああ、2010年の総決算だなぁ”なんて思いながら(笑)
戸田 年末にはクリスマスライブと称して東京、水戸でホテルディナーショー形式のものを、名古屋でライブをやらせていただきました。このホテルディナーショー形式、じつは今回はじめてトライしたんですけど、ホテルの広間にイスが整然と並んでいる、それが妙な空間で……(笑)。
植木 まわりの壁も明るいし、ライブ会場だったら普通暗い色が多いので、それも違和感でしたね。
戸田 クリスマスだからといって特別なことをしたわけではないんですけど、豪とのデュエットの新曲を用意してみなさんの前で披露しました。あと、カジュアルライブでは服装もカジュアルなんですが、今回はディナーショーということで、ドレスアップをしてお客さんにも少しリッチな雰囲気を味わっていただこうといつもより一回多く着替えました(笑)。
植木 すごくキャッチーなものから舞台のなかの曲、僕と歌うところはディスコサウンドだったり、メドレーのなかでもどんどん歌の表情を変えていくんですよ。ディナーショーのわりにはハジけてて、ライブのわりにはシックな部分がある。
だから若い方も、落ち着いて楽しみたい方も、トークだけ聞いてても楽しいですし、みんなが楽しめるんですよね。そういうライブってほかにはないんじゃないかな。姉さんの存在自体に説得力があるというか、だからこそできる、それってすごく難しいことだと思うんですよ。だってアニメソングを歌ってて説得力があるなんて(笑)!
戸田 私が歌うのは、たとえばアンパンマンの歌をジャズテイストにアレンジしたものとか、『機動戦士ガンダム』『伝説巨神イデオン』など、富野由悠季監督の作品──彼の世界の歌は詞の内容がとても哲学的なんです。なのでキャピキャピしたいわゆる“アニソン”というものではないんですよね。
植木 たぶんキャピキャピした曲を歌っても説得力ありますよ(笑)。それは存在感もそうだし、もっている声によるものだと思う。おもいっきりアニメのタイトルが詞に出てきたとしても違和感なく聴けちゃうんです。
今回披露した僕たちの新曲はディスコソングになるのですが、昔のソウルだったり、流行りのポップミュージックや、テクノ、いきなりタイタニックのテーマがかかったりもする(笑)、そんなディスコのように楽しいものがいっぱい詰まった曲になっています。
年代を超えて楽しい部分とか、かっこいいよねって言い合えるものが音楽のなかにもある。そういうものが表現できたんじゃないかなと思います。
戸田 いままでもふたりでいろんな歌を歌ってきましたが、オリジナルというのは今回がはじめて。いずれ歌でも一緒にいい仕事ができたらなということも視野に入れつつの今作だったのですが、おかげさまでいい評判をいただいております。ほかにも『今の私をカバンにつめて』の曲もやったんですよ。
植木 バンドふくめ4人がそのときのメンバーだったんですよね。
戸田 “ああ、2010年の総決算だなぁ”なんて思いながら(笑)。2010年にやったこと全部ダイジェストでやりましたっていう感じでした。
戸田恵子|舞台、ライブ、初のオリジナル楽曲……
2010年、ともに乗り越えた苦楽をさらなる飛躍の糧にして
戸田恵子×植木 豪 対談(3)
何回もやることで慣れてしまうことが一番恐ろしい
戸田 ミュージカルでも歌は歌うし、台詞も喋るけど、自分でチョイスした曲を歌い、昨日泣いたこととか、今日思ったこととか、そういうことを語ることができるライブは私発信の唯一の場所なんです。別にやらなくてもいいことだし、世間の大半の役者さんがそんなことしてないんだけど、せっかくそれを与えてもらって、そういう場所があるのだから、その日来てくれるひとのためになにかしたいと思う。
植木 その想いがあの独特なショーを作っているんだと思う。
戸田 水戸でのライブは今回はじめてだったんですけど、生で私の芝居を観たことがないひとが大半で、知ってはくれているけど、東京や大阪みたいに芝居も観に来てくれているようなひとはいない完全なアウェイだったんです。でもそういうのって私むしろ燃えるんですよ(笑)。これで気に入ってくれれば次回もまた来てくれるかもしれないでしょう?
植木 スローモーションで出て行ったら最前列のおばちゃんがもう腹抱えて笑ってて(笑)。はじめてのことだったので驚いて思わずそっちを見ちゃいました。
戸田 でもお客さんって本来そういうものなんですよ。わかってくれているひとたちのなかでやる心地よさももちろんあるけど、はじめて来ているひともいるんだってことを忘れないようにすることはいつも気をつけています。そうしないと甘えたことになってしまうから。そういった意味でも、今回はいままで自分がやってきたアルバムの曲をより丁寧に聴いてもらおうとすることを念頭において挑んだライブだったように感じます。
植木 自分の歌がどんどん大事になっていくのを聴いてて感じる。その曲のテーマが見えるというか、その曲について話しているときにも思いますね。
戸田 何回もやることで慣れてしまうことが一番恐ろしいなって思うし、何回説明してもいいんだって思っているんです。なにかインフォメーションがあるとよりその曲を感じることができるし、詞の意味が伝わるから。あるときは大胆に曲だけ先に聴かせてってこともありますけど、説明することを惜しまない気持ちは必要だと思っています。私の場合、年中音楽ばかりやっているわけではないのですごく慎重になるし、“片手間でやってるんでしょ?”なんて言われるのは絶対に嫌だから、そうならないよう時期がきたらライブだけに100パーセント集中するようにしています。
豪は音楽をベースに活動しているので、意見を求めれば的確なことを応えてくれるし、ホント頼りにしてる。舞台でもそうですが、ふと見ればちゃんといてくれるっていう安心感はありがたいですよ。そう考えると、本当に実りの多い1年でした。共演したことによって見えたことはいい方向に変えていかないとね。大変なこともいっぱいあったけど、いい年だったのではないでしょうか。
植木 バンドの役やコーラスなど、いろいろやらせてもらったことで音楽的にもすごく変わったし、とにかく勉強になった1年でした。
戸田 こうした経験を活かして2011年はさらに……なんて、いつも“さらに”なんですけどね!
──ありがとうございました。
次回1月17日(月)、K-CO×GOコンビによる「B・G brand」待望のニューアイテムが登場!
クリエイションに込めた想い、そしてその魅力についてふたりが語る!
※新商品の発売が遅れております。お待たせしてしまい申し訳ございません。新作を楽しみにしてくださっている方々、まことにすみませんが今しばらくお待ちください。