LOOPWHEELER|東京・渋谷の「炭火焼 ゆうじ」とのコラボTシャツ
FASHION / NEWS
2014年12月29日

LOOPWHEELER|東京・渋谷の「炭火焼 ゆうじ」とのコラボTシャツ

LOOPWHEELER|ループウィラー

東京・渋谷の「炭火焼 ゆうじ」とコラボレーション

日本の「THE YAKINIKU」を世界へ(1)

東京・渋谷、20年間おなじ場所に店をかまえている「炭火焼 ゆうじ」。各界の著名人が常連として名を連ねる、超人気焼肉店だ。このたび、「LOOPWHEELER(ループウィラー)」が、ゆうじとのコラボレーションTシャツを発売した。なぜ?という声が聞こえてくるかもしれない。その疑問に応えるべく、ルモアズのディレクター 松本博幸が、ゆうじ代表・樋口裕師氏と、ループウィラー代表・鈴木諭氏に話を聞いた。

Interview Photographs by JAMANDFIXText by IWANAGA Morito(OPENERS)

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日本一へと邁進する焼肉屋、その来歴

松本 鈴木さんとは、いつお知り合いになったんですか?

樋口 5、6年前ですね。そのなかで、多くの本物の方たちとの出会いを提供していただきました。お店にもスタッフの方がたを連れていらしてくれて、いつもお世話になっています。

左から、ゆうじ代表・樋口裕師氏、ループウィラー代表・鈴木諭氏、ルモアズのディレクター 松本博幸

鈴木 ゆうじさんは、僕らが忘れてしまいそうなものを常にもっていますよね。たまに怒られたりもする(笑)。

仕事をしていくなかで、あらゆるひとが全力で努力し、現段階ではこれがベスト、とおもったときでも、自分からすると、まだなにかが足りなくて、やれることがあるはずなんだけど、「こんなもんかな?」と言葉をこぼしてしまうとき、「うちには『こんなもん』はない!」と、気づかせてくれる。そういう場所なんですよ。

だからゆうじさんのところにきて、「こんなもんか」とおもうことはまずないですよね。僕らの仕事は期限や約束事に追われたりして、どうしても見切らなきゃいけないこともあるけど、それはないに越したことはない。プロフェッショナルとはなにか、というところを突き詰めるならば、そういう事態はあってはならないことなんです。それはゆうじさんの姿勢を見ていても、強く感じることがあります。

松本 お店をはじめたのはいつなんですか?

樋口 1990年です。

松本 一番最初からこの場所で?

樋口 はい。ここは僕の親父が和食のお店をやっていた場所でして。ある日、親父が突然亡くなり、生活ができなくなってしまい、とりあえず、お袋と、すぐできる商売はなんだ、という話になり、焼肉だろうということではじめました。恥ずかしい話なんですが、どうしようもない理由だったんです。とりあえず焼肉なら、切って出すだけで、勝手に焼いて食べてくれるんだから、簡単だろう、と。

当然、そんなに甘くはないんですよ。最初は馴染みのお客さんが同情して来てくれたんですけど、3カ月ほどで誰もこなくなって。それから2年くらいですかね、親父が残してくれたお金も無くなりかけて、どうにかしなくては、と腹からおもえたのは。

松本 そのとき、ゆうじさんはおいくつだったんですか?

樋口 23歳でした。でも、仕入れもできなくなったような、そんな状態でも、不憫におもってくれたり、叱ってくださるお客様がいたんです。

何の接点もない方が「がんばれよ、お前。とにかく、とことんがんばって、何が何でも日本一になれ!」と。誰もいない客席のカウンターで、来るたびに、お声をかけてくださる方がいました。
そういうひとたちが、そのうちに何人もあらわれてきたんです。僕は、どれだけひとに助けられて、その厚意に甘んじてきたのかと。そのひとたちに喜んでもらう、おいしいといってもらうために、どこから努力すればいいのか、と。

それから全国のおいしいと言われる焼肉屋へ、休みのたびに足を運び、手あたり次第に食べ歩きました、ひとが「おいしい」と感じるものの本質とはなんだろう、と。それは味であって、空気であって、やっぱり、ひとつの要素じゃなかったんですよ。

そしてたどり着いたのは、おいしかったな、とおもってもらえる店を自分で作りたいというシンプルなことだったんです。それがいまのかたちにつながっています。

食文化と服飾文化の共通項

鈴木 海外に行くと、「焼肉」という言葉は存在しないでしょ? 「BBQ」なんですよね。肉を焼いて食べるという文化が大陸に由来するものだという認識が強くて、海外のひとに焼肉の話をしても、なかなか通じない。だから僕は、今回のコラボレーションで「BBQ」ではない「THE YAKINIKU」というところで伝えたい。日本の焼肉を、いろんな国のひとたちに知ってもらいたいし、少なくともループウィラーのファンには、きちんと伝えたいんです。

僕らがやっている仕事もそうで、スウェットも、もともとはアメリカで生まれ、そこで市民権を得て、普段着やスポーツウェア、軍用着として使用され、日本に入ってきた。そして、長い年月をかけて、日本人なりの解釈と編集をして、いま、うちもやらせてもらっている。なので、少しおこがましいかもしれませんが、共通項があるような気がしていて、ゆうじさんの仕事から学ぶことがすごく多いんです。

LOOPWHEELER|ループウィラー

東京・渋谷の「炭火焼 ゆうじ」とコラボレーション

日本の「THE YAKINIKU」を世界へ(2)

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現状を変えるためにゼロからの学びをスタート

松本 学ぶことって、すごく重要ですよね。仕事というものは、いろんなジャンルがあり、そこにたいしてのとっかかりでやっていくもの。そこを薄くするのも濃くするのも、自分次第なんですよ。でも、つづけていると、それが見えなくなって、お客様がいても、経験値的に「こうすりゃいいんじゃん」みたいな流しが入ってくる。

鈴木 危険ですよね。

松本 その忘れがちなものを、自分とはちがうジャンルやカテゴリのなかで、体験するということ――たとえば舌の刺激によって得られた食の体験を、別のジャンルに反映していく。それも学ぶということですよね。

樋口 僕は「お前の肉は不味すぎる、なんでこんなに不味いんだ」というゼロの地点から、真似をすることで学びをスタートしました。

まず、おいしいお店に食べに行き、それを再現できるようにする。再現するということは、そこに至る調味料の塩梅、肉の切り方などを自分で考えるプロセスなんです。すると、成り立ちがわかってきます。そのバランスを理解して、試行錯誤をしていると、さまざまな意図が見えてきたんです。そこではじめて、自分だったらどうもっていくか、と全体の構成を考え、いろいろな味の起伏をつけられるようになってくるんですよ。

また常連の方には、毎回あたらしいものを提案できるように料理を選びます。その方向性も、お店にいらっしゃる方それぞれにちがうものです。

結局そうしないと、焼肉屋という仕事は、きわめて単調な仕事になってしまう。言われたままに出すだけの仕事にたいして、店側の意図をつけるために、あたらしい焼肉の切り口を見出そうとはいつも考えていますね。

現状を変えていくその瞬間に、お客様がいっしょにいて、感想やダメ出し、あらゆる反応を目の前でいただき、それに応えていく。その行き来があって、はじめてリズムが生まれ、店が呼吸するんです。僕は、ひとの何百倍という量を食べ歩いて、その膨大な情報を、自分のなかに押し込むことによって、あらゆるパターンを見出しました。そこに、シチュエーションやお客様の構成まで組み込んで、やっと細かいところまでいじれるようになったんです。

すると、その細かさが気になりはじめたんです。そこまでやると、面倒なレベルになってしまい、付き合ってもらえなくなるんです。それを超える、もっと万人受けするような、おいしさにもっていくにはどうすればいいか、それが次のステップなんです。

「定番」を生み出すことの難しさ

松本 そうですよね。「定番」が必要になってくる。

樋口 鈴木さんがすごいのは、定番が標準になっていることなんですよ。そこがあってはじめて、いろんなものが生まれてくる。まさに基準でありベースの部分。生地の作りこみから、縫製、管理、その後の商品のフォローまで、すべて受け止められるものを作られている。

僕の場合は、基本がないところから生まれて、その基本を求めつづけているんです。海外に焼肉を展開しようという話になったとき、じゃあ外国に焼肉をもっていったときに、どういうかたちにすればいいのか考えました。

現地の肉の食べ方から、その国で受け入れられる焼肉を作ることはできる。しかし、それでは駄目で、「日本の焼肉」を確立しようとしている自分が「これが焼肉だ!」と言えるオリジナルを生み出してはじめて、海外にもっていける。むしろ、そうじゃないと意味がない、とおもったんですよ。

松本 ファッションもそうですが、海外の市場への順応を継続することは、難しいですからね。

樋口 以前は誰も喜ばせることなんてできなかったのに、だんだんお客様に、おいしいと言ってもらえるようになると、今度はまったくちがう生活環境にまで目を向けている。それはとてつもなく大変なことだとわかっているのですが、この店をはじめたときとおなじようなスタートを切ることができる状況に、このうえない喜びを感じています(笑)。

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東京・渋谷の「炭火焼 ゆうじ」とコラボレーション

日本の「THE YAKINIKU」を世界へ(3)

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炭火焼肉ゆうじの味を支える焼き台

松本 こちらの焼き台、商品化もされていますよね。ゆうじさんから直接、その特徴を伺いたいのですが。

樋口 はい。あるとき気がついたんです。内臓は網で焼いたほうがおいしいんですけど、肉は鉄板で焼いたほうがおいしいと。

網で焼くと、直接抜けていく炭の熱でものが焼けるんです。いっぽうで鉄板は、炭の熱が鉄板をあたためるために使われます。その熱で肉を焼くんです。

だから、網で肉を焼くと、炭の熱が強すぎて、肉の中身の水分まで抜けてしまう、パサパサに。でも鉄板で焼くと、先に表面が焼けるから、中の生っぽさは残る。そこに、表面と内側のコントラストが生まれるんですよ。肉には絶対こっちがうまいんです。

網と鉄板をひとつの焼き台にまとめられないかと、合羽橋の釜浅商店さんに相談したんです。すると、社長の心意気で「作りますか」という話になって。そして何度もテストを重ねて、出来上がりました。

もちろん煙は出ます。うちの店は汚いし、臭いもつく。そういう心配をするひともいますが、僕が求めているものとは、見ているところがちがうんですよ。たとえば、無煙ロースターで焼いてしまうと、熱の動きがおかしくなります。自然と立ち上る煙に包まれて、ゆっくり焼ける肉のおいしさとは、全然ちがいます。焼き台がどうなっているかで、そのお店が何を大事にしているかがわかりますよ。

妥協のないモノづくりとは

松本 ゆうじさんと鈴木さん、根底にあるものは、おなじように感じます。鈴木さんは、糸から自分で作って、その経験値と流れで、吊り編み機でどういう生地を編んでほしいという話ができる。その根底にあるのは、探究と研究と努力。それはゆうじさんからも、鈴木さんからも、強く感じる。

鈴木 自分のレベルがどうであっても、毎日のように壁はやってくるわけで、それを乗り越えていかないと、本当の意味でのプロフェッショナルにはなれない。自分自身のなかに約束事をもっていて、それをちゃんとクリアしていくということが大事。でも、自分ばかりの話になると、自己満足に終わってしまうので、ループウィラーはちゃんと着てくれるお客様がいて、その声も聞きながら、スウェットを作っていきます。行き詰まったり、悩んだり、苦しんだりしたとき、ここにくると、もう一度そのことに気づかせてもらえる。

松本 ゆうじさん、ループウィラーの製品を着てみて、どうですか。

樋口 なんというか、自然体なんですよね。じつは、洋服にたいするこだわりが、元々なくてですね。奇をてらったものなんかは求めていなくて、体が自由に動いて、気持ちもリラックスできるものであればいい。そういう理由で、僕はスウェットばかり着ていたんです。でも、ループウィラーのスウェットをはじめて着たときに、いままでのものとはレベルがちがう着心地に、正直、驚きました。鈴木さんって何者なんだろう?と。

それから、1時間に1メートルしか生地が作れない機械を使っているというお話を聞いて、何考えてんだ?とおもったわけです(笑)。モノづくりにおいて、妥協することなく、商売のことも考えず、ただひたすら自分が意図するいいものを作り出そうとするその姿勢に、感動しました。僕も、そうありたいと。

鈴木 そう言っていただけると恐縮です。

樋口 焼肉も、素材があって、それに色を付けるということになると、すごく難しいんですよ。ベースの部分がきちんとわかっていないと、どの位置にそれがあって、それをどっちに伸ばせばいいのか。たとえばいいものにたいして、押し付けるような味付けをしたらぶち壊しになりますよね。

いろんなところをさわってみた結果、市場との関係性につながりました。最後は、あいつは絶対裏切らない、という人間どうしの信頼関係。自分のことだけを考えるのではなく、仕入先の懐も考えたうえで、受け止める。やっぱり何度も対話を重ねて、関係を成り立たせないと、継続はできない。そういうことを含めて、安定して、いいものを維持しつづけるというのは、きわめて大変なことなんです。

鈴木さんはそれを当たり前に製品に反映させて、さらにそこを基軸として、シーズンごとに、あたらしいものを見せてくれる。絞り出せるものを絞り出して、もうこれ以上なにも出てこないんだろうというところで、さらにまた出てくる。本当に、感服しますよ。

LOOPWHEELER|ループウィラー

東京・渋谷の「炭火焼 ゆうじ」とコラボレーション

日本の「THE YAKINIKU」を世界へ(4)

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ループウィラー代表・鈴木諭氏、コラボレーションの真意を語る

松本 今回、15周年企画でコラボレーションをすることになり、話をしていてはじめて出た言葉が「渋谷の焼肉屋さんのゆうじってあるじゃん? あそことやろうとおもうんだよね」だったんです。正直、意外だったというか、なぜ?とおもいました。

鈴木 ループウィラーも、あと5年やれば20年。そうなってくると“古着”になってくるわけ。でも“ヴィンテージ”にはまだまだ、もう20年くらい必要です。その間に、お客さんがリユースしたり、自分が着たものを息子にゆずるとか、穴が空いた部分にワッペンをつけるとか。次にループウィラーがやらなくちゃいけないのは、そういったことを受け止めるお店。ループウィラーの古着屋みたいなものをやりたいんですよね。

松本 だから今回はゆうじさん、ということなんですね。古着屋に並んだとき、ブランドの歴史とバックボーンが垣間見られる。この時代にこんなおもしろいことをしていた、という。

鈴木 そうなんです。自分のなかでひとつ、踏みしめるという意味でも。ゆうじさんの看板のマークにはすごい力があって、正対すると、身動きができなくなってしまうほどの迫力がある。もうこれ以上何もできないという完成度。できればループウィラーで、ゆうじさんのグラフィックをのせたものがほしかった、僕がね(笑)。そこで、15周年というのもあって、ぜひお願いしようと。

松本 このマークは、どなたがデザインされたんですか?

樋口 ピンストライパー(※)のsugi-sackさんです。僕、車が大好きで、アメリカのホットロッド文化に傾倒している時期がありまして、sugi-sackさんの大ファンなんですよ。

そこで、うちの店に、100年やっていくうえで変わらずにありつづけるためのマークを作ってほしいと頼んだんですよ。sugi-sackさんは「これは一生残るもの。マークじゃなくて、レッテルなんだ。レッテルというのは、ひとに貼られるものなんだよ。そういうものを、俺はゆうじさんに作ったんだ」と言ってくれました。

鈴木 だから、このマークをそのまま使うのは、ちょっと失礼かな、とおもいまして。ループウィラーのデザインで、ゆうじさんのことを表現しなければいけないな、と。でも、少しでも入れてもらったほうがいいと言ってくださったので、恐れ多くも、使わせていただきました(笑)。

※ピンストライパー:バイクや車のボディに、ピンストライプを入れる職人。アメリカで生まれたカスタムカーのジャンル「ホットロッド」では、多種多様なグラフィックが展開されている

ゴールがあるわけでもなく、死ぬまでやる

鈴木 ゆうじさんのやっている仕事はアーティストに近い。常にてっぺんを目指して歩いているんだけど、それはどこにあるかはわからない。でも、そこに向かって歩いていかなければならない。ゴールがあるわけでもなく、死ぬまでやる、という。そのメッセージがこの「TRY TO~」に入っていますね。

松本 ループウィラーの製品はシンプルですけど、確実に進化している。地道にやられていますよね、地味な作業を。いろいろとお話を聞いていて、クオリティを担保するというところで、定番として動かすものにたいしても、鈴木さんは毎回、綿を見に行き、その状態を見て、糸の配合を変えていくんですよね。そのあたりをやれるひとは、あまりいないんじゃないかな。

樋口 ゼロからやっているひとじゃないと、そのさじ加減はできませんよね。こういう状態だったから、こうしようとか、その先の仕上がりまでのイメージができているんですね。

鈴木 それでも、相当失敗もしていますよ。実は、途中で駄目にした生地も山ほどあるんです。苦い経験をしてきたからこそ、いまがある。その積み重ねが、大きな差を生むんだろうな、とゆうじさんを見て、自分たちがやってきたことも考えると、感じますね。

あと、ゆうじさんが言ったように、僕らの世界でも、アパレルだけがいい思いをしたら駄目なんです。やっぱりきちんと、それぞれのポジションで携わってくれたひとが、ループウィラーをやっていてよかったな、とおもってもらえるようなことにならないと。そのために、トライしつづけることが大切です。

ループウィラー
http://www.loopwheeler.jp/

炭火焼 ゆうじ
東京都渋谷区宇田川町11-1 松沼ビル 1F
Tel. 03-3464-6448
営業時間|19:00~24:00(ラストオーダー23:30)※土曜日のみ18:30より開店
定休日|日曜・祝日
http://yakiniku-yuji.com

           
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