採寸は、サイズより足を見ている

フランソワの採寸風景を見ていた中田英寿さんは、「靴の採寸をするときに、素足のままのときと、靴下を履かせるときがあるんですよね」と、祇園ない藤5代目主人の内藤誠治さんに話しかける。つづけて「それはきっと、足型をとろうとする職人と、靴を履くときは靴下を履くのを前提としている職人との違いで、採寸の考え方一つでも面白いですね」と中田さん。

内藤さんは、「私もお客さまのサイズを測っていますが、どちらかというと足が骨っぽいとか肉っぽいという特徴の方を見ています。サイズより足を見ていますね。下駄や草履は融通が利くので」。

草履で驚いたのは、内藤さんの草履の履きこなしで、かかとをかなり余して履いている。見るからに粋な履き方だ。「自分のはちょっと極端ですが、草履は小さめにつくって、はみ出すように履くものです」という。フランソワは初めて草履を履くので、そこまで小さめにならないよう、鼻緒がついてないもので、足をのせる部分の大きさを調整した。

いかにフランソワ向きに粋に仕上げるか

採寸のつぎは、足をのせる部分の色・素材・高さなどを決める。「通常ですと、お客さまのお好みを聞きながら、どんなときに草履を履くのかをお聞きして私から提案します。フランソワさんにはそうですね……、このちょっと高さがあって、靴でいうウェッジ部分が和紙の上に漆（うるし）をひいてあるのはいかがでしょう」と内藤さん。

フランソワはいくつかの草履を手に取り、底革の素材を見たり、厚さを比べたりしながら、内藤さんのお勧めのものに決める。

つぎに選ぶのは鼻緒。フランソワは店内の草履を熱心に見ながら説明を聞いている。「フランソワさんのお好きな色はなんですか？　単色なら濃い色が男らしいですし、柄なら自分の干支を選ぶ人もいます」という内藤さんにフランソワが差し出したのが、見た目に女性使いらしい華やかな柄の鼻緒。

「これなら鼻緒の下部分を、漆の色に近いバーガンディにして、コンビネーションにしたらいかがですか？」と勧めると、フランソワは大きくうなずいた。「こういう草履は、土の道や寺院などの古い石畳を歩くと気持ちいいんですよ」と内藤さん。

完成品は、次回、フランソワが来日する11月に手渡される予定。どんな草履ができあがるか、今から楽しみだ。

「とても内容の濃い、充実した時間でした」

フランソワは、今回訪れた京都での出来事を振り返る。

「今回は中田英寿さんのご紹介で、はじめての京都で伝統ある『祇園ない藤』さんを訪ねることができとてもうれしいです。身のこなしや動作までを考えて、草履のサイズや作りを調整することや、日本の地方によって草履の履き方が違うことなど、興味深いお話しばかりでした。

内藤誠治さんと詳しくお話しするうちに、上質な素材を入手することがとても大変なことを知り、貴重な上質の素材を丁寧に美しく加工し、計測した足のサイズにあった草履に、好きな色や装飾を選んで組み合わせる――。

ジョンロブのビスポークシューズと異なる点はとても新鮮で、逆に共通する部分には親近感を覚えたり……。とても内容の濃い、充実した時間でした。

日本に来るのは23回目になりますが、今まで経験することのできない貴重な体験でした。一番の思い出です。

次回来日するときには草履ができあがっている予定なので、とても楽しみです。合わせて着る着物が欲しくなりそうです。

中田英寿が繋ぐ、ジョンロブと「祇園ない藤」の職人の出会い（3）へつづく

祇園ない藤
京都市東山区祇園縄手四条下ル
Tel. 075-541-7110
営業時間｜10:30～18:00
定休日｜不定休
http://gion-naitou.com/

ジョン ロブ ジャパン
Tel. 03-6267-6010
http://www.johnlobb.com/jp