STUDIOUS|ステュディオス谷 正人×N.HOOLYWOOD 尾花大輔対談(2)
STUDIOUS|ステュディオス
STUDIOUS代表取締役CEO 谷 正人×N.HOOLYWOOD 尾花大輔(2)
東京、NY、アジアを駆ける夢
STUDIOUS 神南店を訪れた「N.HOOLYWOOD(N.ハリウッド)」のデザイナー、尾花大輔氏。建築家、谷尻 誠氏の設計による茶室でのステュディオスCEO・谷 正人氏との対談は、STUDIOUS 神南店で展開する「N.HOOLYWOOD COMPILE(N.ハリウッド コンパイル)」の話から、次第にニューヨーク、パリ、アジアの話へ。
ステュディオス谷 正人×N.HOOLYWOOD 尾花大輔対談(1)はこちら
Text by KAJII Makoto (OPENERS)Photographs by SUZUKI Simpei
ファッションとライフスタイルの関係性を意識させる街、ニューヨーク
谷 正人 尾花さんは年に2回、ニューヨークでコレクションを発表していますよね。尾花さんにとって、ニューヨークとはどんなところですか?
尾花大輔 まず感じるのは、日本人のファッションバイヤーはよく行っているけど、ニューヨークに買いに行ってるのではなくて、ニューヨークで売ってるブランドを買いに行ってるということ。本質的なアメカジの良さや価値を、忘れかけているのかな、ともおもいます。
谷 なるほど。
尾花 NYファッションウィークの期間中は、毎日25キロぐらい歩いているんです。そこで感じるのは、東京のおしゃれ好きのひとは、着ているブランドがわかるけど、ニューヨークのひとは“ライフスタイル”そのものを楽しんでいるな、ということ。「先に行っている街だな」とおもいましたね。
もちろん、人生のなかで、服だけに集中して、好きな服をとことん着ることは、服好きなら一度は通る道。だけど、日本人はなかなかそれが生活に根づかない。ニューヨークでもライフスタイルを本当に楽しんでいるひとは、ゆとりのあるひとだけですが。
谷 尾花さんのキャリアやコレクションを見ていると、アメカジのあり方をつねに追求しているように感じます。一時期は、パリでもコレクションを発表されていましたよね。
尾花 じつはパリ、苦手なんですよね。パリは歴史的な建築物が当たり前のようにあって、ショーを見ているひとにリアリティがなくて。それでもファッションビジネスが成り立つ街ではあるんですけどね。谷君は、コレクションをよく観るんですか?
谷 もちろん仕事柄観ますが、正直、あまりリアルじゃないというか。「コレクションの役割ってなんだろう」とおもうこともありますね。
ショーの危機感、消費されるコレクション
尾花 最近のショーの変化には、ツイッターやフェイスブックなどのSNSの発達が影響しているとおもいます。インターネットがなかった時代のコレクションは、ファッションジャーナリストやバイヤーなど、ごく限られた人たちのみに開示され、そこからシーズンの立ち上がりまでの半年間、コレクションのテーマや服、トレンドは、時間のなかで熟成されて発表されるという、しっかりしたタイムテーブルがありました。
谷 そうですね。
尾花 N.ハリウッドをはじめ、2000年ごろに誕生したブランドは“ミレニアムブランド”と呼ばれて、僕たちがまだ東京でショーをやっていたころは、コレクションを評価してくれるすばらしい雑誌編集者がいて、ページを割いて紹介してくれるという関係性がきちんと成り立っていました。当時、コレクションのゲストは、みんな集中して観てくれました。
でもいまでは、ショーがはじまる前から、ブロガーたちがSNSでどんどん“種明かし”していて。それはそれでオープンマインドでいいなとおもう反面、油断したらそのまま消えちゃうんじゃないかと。
谷 想像すると怖いですね。
尾花 パリの権威主義的なものに比べると、まだ理解できるけど、こういう状況になってしまって、いまコレクションをやっているデザイナーは、どうしたらショーが成立するのかわかっていないひとの方が多いんじゃないかとおもいますね。
谷 時代の変化ですよね。でも長くつづいて第一線で活躍しているブランドは、柔軟に変わっているのも事実ですね。モノをつくる場所としての東京は、尾花さんはどう感じていますか?
尾花 自分のベースは東京でいいかと。海外は訪れた形にしないと刺激がなくなってしまうし、海外の空気に慣れないことにヒントがあるんです。
谷 年に2回訪れるニューヨークは?
尾花 半年ごとに訪れて、一見変わらない風景も確実に変わっているので、それをキャッチして、自分のなかに落とし込むことが刺激になります。ひととの出会いも大事ですね。
未だ見たことのないものを
尾花 「STUDIOUS 神南店」も順調にスタートしましたね。つぎのステップは?
谷 この店はステュディオス創業期の集大成であり、海外アプローチの布石となるショールームでもあるので、海外のお客様を増やしていきたいですね。海外進出は、この2年ぐらいで、台湾、香港、北京、上海、バンコク、シンガポール、ソウルなどを実際に見てきましたが、TOKYOブランドでどこまでできるかは未知数です。失敗がないように、慎重に戦略を練っています。
尾花 このSTUDIOUS 神南店の発展形も見てみたいですね。
谷 ありがとうございます。セレクトショップという形態をとりながら、あたらしいハイブリット型の百貨店に発展させていくのも、おもしろいと考えています。
尾花 ステュディオスは、谷君のその熱量と規模感と戦略で、僕たちがまだ見たことのないものをどんどんやってほしい。僕の方がキャリアはあるんですけど、谷君にはアドバイスはしたくないんですよね(笑)。
谷 どうしてですか?(笑)
尾花 自分も失敗しながらここにいるわけですが、戦略的な話やアドバイスをして、僕たちとおなじやり方をなぞってほしくはありませんから。
谷 僕も影響を受けやすいので(笑)。でも30歳になって、経験に勝るものはないということも実感します。
尾花 楽しみにしています。
谷 N.ハリウッドは、個人的にも、尾花さんからコンパイルラインの「JK02」をリリースしたお話を聞いて、心から“一生着つづけたい服”だとおもえたブランドです。またステュディオスとしては、グループの主力にしていくべきブランドだと位置づけています。これからもよろしくお願いします。
STUDIOUS 神南店
東京都渋谷区神南1-5-19
Tel. 03-6277-5582
営業時間|12:00~20:00
<brands>
N.HOOLYWOOD、White Mountaineering、ATTACHMENT、KAZUYUKI KUMAGAI、ato、soe、Scye、08sircus、MofM(manofmoods)
MIHARAYASUHIRO、foot the coacher、Y-3、ORPHIC、JAM HOME MADE、ED ROBERT JUDSON、GARNI and more..
N.HOOLYWOOD|N.ハリウッド
現代を生きる男性に向けた“Neo Classic Country”
「N.HOOLYWOOD」2014年春夏コレクション
フロンティア・マンの正義と任侠を愛し、西部に生き抜いた映画俳優/監督、William S Hart(ウィリアム・S・ハート)。1920年代にトーキーフィルムが登場するまで、サイレント西部映画で絶大なる人気を誇り、人間の強さだけでなく、弱さもみせたハートの演技や技法は、映画界に大きな影響をあたえた。そんなハートからインスパイアされた、N.ハリウッドの最新コレクションのテーマは「TWO-GUN HART」。代表作『二挺拳銃』からその異名をとった、ハートへ捧げるオマージュでもある。
Text by KAJII Makoto(OPENERS)
コレクションのテーマは「TWO-GUN HART」
アメリカ文化の象徴でもあるウエスタン──砂埃のなか、馬に乗る当時のカウボーイスタイルは、色も装備も重いものだった。それを、軽く明るい生地を中心に、N.ハリウッドらしく現代的に昇華。
デザイナーが得意とするヴィンテージのイメージは、ウエスタンシャツ、ラグ、ブランケットなどからインスパイアされたオリジナルのテキスタイル、また、スタッズや刺繍などのディテールに見られる。
引退後、ハリウッドで牧場を経営していたハート。いまからおよそ20年前、古着店のバイヤーだった尾花氏は、偶然にも彼の牧場からすぐ近くの一軒家を拠点としていたのだった。
尾花氏がアメリカ文化に向き合い打ち出すのは、現代を生きる男性に向けた“Neo Classic Country”スタイルだ。コレクションでは、スーツやスラックス、ジャンパーなど、デニム素材をさまざまなアイテムに用いて、ウエスタンのムードを独自のアプローチで表現した。
リーが80年代に生産していたピケ素材のスリムパンツ「WESTERCORDS」、ラングラーのGジャン、ジーンズ、デニムシャツといった、毎回人気のコラボレートアイテムにくわえ、今回はレザーカービングアーティスト「Rooster King & Co.」とコラボレーションした、レザーのアイテムも登場した。
N.HOOLYWOOD
http://n-hoolywood.tumblr.com/