STUDIOUS|ステュディオス谷 正人×ファクトタム有働幸司対談(2)
FASHION / MEN
2015年7月24日

STUDIOUS|ステュディオス谷 正人×ファクトタム有働幸司対談(2)

STUDIOUS|ステュディオス

STUDIOUS代表取締役CEO 谷 正人×FACTOTUMデザイナー有働幸司(2)

ファクトタムをよく着るようになった理由

海外からの評価が高まってきた日本国内ブランド(TOKYOブランド)に徹底的にこだわりながら、代表の谷 正人氏をはじめ、社員全員が“日本発ファッションスタイルを世界へ”という思いを商品とショップで具現化している次世代セレクトショップ「STUDIOUS(ステュディオス)」。谷氏と「FACTOTUM(ファクトタム)」のデザイナー、有働幸司氏との対談は、10年前にさかのぼる。

ステュディオス谷 正人×ファクトタム有働幸司対談(1)

Text by KAJII Makoto (OPENERS)Photographs by SUZUKI Simpei

ショップで服を買って、家に持って帰るまでの時間も大切でした(谷)

谷 正人 自分がファクトタムと出会ったのは、ファクトタムがデビューした10年前で、まだ学生でした。デビューが話題になったのでよく覚えています。リアルクローズという印象はそのまま、この1、2年で、30代、40代のひとも着られるドレスラインが登場するなど、ファクトタムの濃い部分を残しながら、ブランドの幅が広がっているなと思います。

有働幸司 10年前というと、2003年には伊勢丹新宿店メンズ館がリモデルしたり、六本木ヒルズが開業したり、雑誌『GQ JAPAN』が創刊したりと、今振り返るとファッションも過渡期という印象ですね。
ファクトタムがデビューして、最初はあまり深く考えずに突っ走っていた感じですが、今よりドメスティックブランドは少なかったし、ネットで服を買う感覚もまだなかった。前にも言いましたが、10年前とは服の買い方が変わってきて、ショップで服を買うひとは“時間も買って”いるんですね。

 ほんとうに10年で、服は本やCDとおなじ買い方になってしまいました。

有働 だから、ショップで服を買うひとは、接客という“物語”を求めているし、買ったモノに自然と愛着が沸いてくるんですよ。

 ネットがスタンダードになる前は、ショップで服を買って、家に持って帰るまでの時間も大切にしたし、楽しんでいました。有働さんが好きなショップの雰囲気ってありますか。

有働 落ち着ける、自分がいて居心地のいい空間ですね。ショップ空間、什器、洋服のテイストなどいろんな要素がありますが、ツヤっぽくてラグジュアリーな雰囲気は落ち着かないときもありますね。

STUDIOUS|FACTOTUM 02

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5ラインを展開するようになったファクトタムの自然な進化

 ファクトタムは10周年を迎えられましたが、振り返っていかがですか。

有働 テーマがあって、旅に出て、シーズンにテーマを盛り込んだモノをつくっていくというのは、10年間ぶれずにつづけてきています。デニム、Tシャツ、革ジャンからスタートしたブランドですが、自分も30歳から40歳になって、たまにはスーツを着たくなって、自然な流れのなかでドレスラインが生まれたのとおなじように、現在では、「homme」「femme」「Denim Line」「Dress Line」「Activity Line」の5ラインを展開しています。

 ファクトタムは有働さんが言うように、自然に進化していますよね。だから、この一年ほど個人的にファクトタムはよく着ています。有働さんの着こなしと、お客さまの着こなし方がちがうのもファクトタムらしさですね。

有働 ファクトタムはリアルクローズで、気負わずにちょっとした変化を楽しむとか、変わらないスタイルだけど、アップデートされていることも大事にしています。ラインが増えたのは、チャレンジしたいアイテムや素材づくり、力を入れるバランスが変わってきたのかなとも思いますね。去年の8月に代官山のフラッグショップショップを新装オープンしたことも大きいですね。

STUDIOUS|ステュディオス

STUDIOUS代表取締役CEO 谷 正人×FACTOTUMデザイナー有働幸司(2)

ファクトタムをよく着るようになった理由

北欧の暮らし方、生き方から感じる“あたらしい波”

 今シーズンのテーマはあたらしい領域に踏み込んだという感じですね。

有働 2014年春夏コレクションは、フィンランド語の「UUSI AALTO(ウーシィ・アールト)=あたらしい波」をテーマに、初めてメンズとウィメンズを合わせた“ジェンダーフリー”のキーワードを打ち出しました。

 それはどうしてですか。

有働 これまで、アメリカ、アジアと巡ってきて、今回は、一つの社会のモデルとして北欧に注目。今の日本の漠然とした不安感は将来に対してだと思いますが、男女平等の意識が高く、教育や医療、福祉の手当てがしっかりしている北欧の暮らし方は、私たちの不安感の回答になるのではないかと。
また、賃金に比べて税金が高いこともあって、買うモノを真剣に悩んで、いいものを長く使う、いいものを作るという原点も感じられました。

 なるほど。“ジェンダーフリー”というのは?

有働 いわゆるユニセックスですが、主にドレスラインで、女性にメンズっぽい服を着てもらいたいという思いですね。

 北欧をテーマにして服づくりでなにか変わりましたか。

有働 今回は、フィンランド生まれで世界的な建築家・デザイナーのアルヴァ・アアルト(Alvar Aalto)の軌跡をたどる旅にコレクションのインスピレーションを得ましたが、アルヴァ・アアルトのデザインはもとより、フィンランドの自然の色なども反映しています。自分があたらしいことを吸収したいという思いからのテーマですが、いつかは日本を旅してコレクションをつくりたいですね。

 こうやって有働さんから直接話を聞くとブランドの理解が深まって、よりファンになります。

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良いものを掘り起こして“新定番”にしていく

 今、ステュディオスでは100を超えるTOKYOブランドを扱っていますが、お客さまの支持を得るブランドには、かならずといっていいほど「新定番」があるんです。
ファクトタムならデニムなんですが、これからもずっと残っていく「ベストセラー、傑作品」が積み上がっていくブランドは強いですね。

有働 定番は、自分たちもリアルクローズを目指している以上、よりストイックにいいものを作っていくという原動力になりますね。

 だから、ステュディオスの別注は、なるべく復刻をやっているんですよ。

有働 良いものを掘り起こすというのはいいことですね。こういうことを共有できる小売りショップはじつはなかなかありません。

 あと3年でステュディオスは10周年ですが、そのときにブランドの過去10年間の新定番を集めたイベントなどをやりたいんです。

有働 そのときはぜひ。谷君の10年間は、自分とは比較できないほどのすごいスピード感でしょうが、いつもポジティブで前向きなので、これからも日本のブランドに夢をあたえてほしいなと思います。

 ありがとうございます。がんばります。

STUDIOUS 原宿本店
東京都渋谷区神宮前4-26-32 吉田ビル 1F
Tel. 03-5785-1864
営業時間|12:00~20:00
http://www.studious.co.jp/

FACTOTUM
http://www.factotum.jp/

           
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