STUDIOUS|ステュディオス谷 正人×建築家 谷尻 誠対談(2)
STUDIOUS|ステュディオス
STUDIOUS代表取締役CEO 谷 正人×建築家 谷尻 誠(2)
“ツンデレ・パトロンショップ”を創ろう!
セレクトショップ「STUDIOUS(ステュディオス)」として初のメンズのハイエンドショップ「STUDIOUS 神南店」が2月28日(金)に渋谷・神南エリアにオープン。ステュディオスのコンセプトである「日本発を世界へ」が2フロアにわたって展開される。また、前日の27日(木)には、都内唯一のメンズ&ウィメンズ複合店の「STUDIOUS IKEBUKURO」が池袋ルミネ2階に大幅増床リニューアルオープン。
両店舗デザインは国内外で高い評価を得ている建築家の谷尻 誠氏が手がけ、STUDIOUSの内装コンセプトである“白の融合”を体現しつつ、上質な大人の時間を楽しめる空間に仕上がっている。
Text by KAJII Makoto (OPENERS)Photographs by SUZUKI Simpei
加点方式で構築されていくステュディオスの世界観
谷 正人 さきほど谷尻さんから“ステュディオスの人格”ってお話がありましたが、具体的にはどういうことを感じたんですか。
谷尻 誠 まず、企業って、どんどん成長していくときに、上層部だけ突っ走りますが、ステュディオスを外から見ていると、谷さんはスタッフとよく飲んでいますよね。
谷 そうですね。週に3回ぐらいですかね(笑)。
谷尻 それって最大のインナーブランディングだと思うんですよ。谷さんが考えていること、目指していることを理解できているから、スタッフのモチベーションも高いんですよね。
トップとスタッフの温度感が近いというのは、外部に対しての最大・最強のブランディングで、スタッフは接客しながらブランディングしているんですよね。
谷 でもそれって、谷尻さんがつづけている「THINK」もそういうことですよね。
谷尻 自分が外で走れば走るほどスタッフとは乖離していくなという危機感があって、スタッフと歩幅を合わせて、自分の状況を伝えるために「THINK」をやっています。
谷 自分もそうです。商談で感じたことや、興奮している、感動している様子も伝えたくて、スタッフに電話してしまいます(笑)。
谷尻 谷さん、ステュディオスはやりたいことが明快なんですね。「東京のクリエイションを生かしたブランドを集積したお店をやりたい」というのが、いい意味でリスキーなところも魅力的。僕たちは、減点方式だと圧倒的に弱いけど(笑)、ステュディオスは加点方式で構築されていく世界観なので大いに応援したいですね。
谷 原宿店をリニューアルした5年目あたりが一つの転機で、自分たちがやってきたことがファッション業界で認められたと感じました。
物欲、コト欲、購買欲のレイヤーとは
谷 谷尻さんは最近どんな服を着ていますか。
谷尻 この2年ぐらい、気がつくと服を買う量が増えていますね。もともと洋服は好きで買っていましたが、服を見る機会が増えて、今、一番購買欲が高いかも(笑)。
谷 欲しい服って変わってきていますか。
谷尻 若いころはデザインだけで買っていましたが、いろいろ買っていくうちに、「このデザイナーはどういう思想をもって服を作っているのか」がわかるようになると、よりそのブランドに愛着が沸いて、好きになりますね。
今は、“物欲”よりも、“コト欲”に注目していて、コト欲の延長線上に物欲が沸いて、物欲の延長線上に購買欲があって、そのレイヤーが繋がりはじめた気がします。
谷 なるほど。物欲、コト欲、購買欲のレイヤーですか。
谷尻 服とライフスタイルが繋がっているという普通のことがやっと普通に理解されてきて、着ること、食べること、住むことの全般を通して、いかに豊かに暮らせているかがすごく大事になってきています。
だから、建築のことを考えれば考えるほど、ファッションや音楽や食など、一見無関係なことが建築にいい影響をおよぼしてくれるので、自然と興味が高まっているんですね。
谷 “モノよりコト”については自分もそう感じていて、誰が何をどう作るかがとても重要です。僕たちがバイイングを大事にしているのは、誰が作っているかを知りたくて、ステュディオスではデザイナーと会わずして買い付けた服はありません。
そうした思いを今度はお客さまに伝えるのが今のセレクトショップのあり方。今売れているブランドを見ると、うちとのかかわりの深いデザイナーがよく売れていますね。
谷尻 バイヤーというよりキュレーターなんですよね。キュレーションが研ぎ澄まされていると、社会に伝わっていって、物作りの背景をわかっているから洋服が伝わっていく。デザインだけで語られても伝わりません。
このブランドを応援したい、支持したいという気持ち
谷 谷尻さんが好きな店はどんな店ですか。
谷尻 ギャップって大事な要素で、たとえば、程よい緊張感のある店に入って、接客に親しみがあると、そのギャップが心地良さにつながりますよね。ステュディオスのスタッフは挨拶だけでも気持ちいいし、ひとの距離感がとてもいい。
谷 一見冷たそうな内装の店で、接客はあたたかく。いい意味で、ツンデレショップ(笑)をつくりたいですね。
谷尻 そういう店で、モノを作っているひとの気持ちを理解しながら、ある種、パトロン的に服を買いたい。
谷 あー。それはよくわかります。
谷尻 「このひとの服を買いたい、着たい」というのもとても大事なモチベーションです。
谷 そうですね。誰もがサッカー日本代表を応援するように、お客さまが商品を購入することでそのブランドを暗に応援することを意味する、そんなパトロンショップにしたいですね。
谷尻 ツンデレ・パトロンショップ!(笑)。谷さんは、穏やかに見えて、かなり狂気的なことをしていると思っているので、横で見ていたいですね(笑)。一緒にいると、スピード感があって、元気をもらえます。これからもエネルギー交換できる存在でいたいし、エッセンスをあたえられる人間でありたいと思います。
谷 僕も谷尻さんにはエッセンスを期待したいですね。遊びでも仕事でも、「最近何している?」と聞くと、期待以上の答えがかならず返ってきます。谷尻さんのような歳のとり方をしたいですね。
谷 正人|TANI Masato
STUDIOUS代表取締役CEO。1983年10月静岡県生まれ。2006年中央大学商学部卒業。同4月デイトナ社入社、STUDIOUS事業を一から立ち上げ。2009年2月同社STUDIOUS事業部 事業部長を経て退職。同3月MBOにてSTUDIOUSを創業。