クラフトマンシップを垣間見る|Ermenegildo Zegna
FASHION / MEN
2016年4月15日

クラフトマンシップを垣間見る|Ermenegildo Zegna

Ermenegildo Zegna|エルメネジルド ゼニア

100年以上にわたる揺るぎないこだわりと誇り

エルメネジルド ゼニアのクラフトマンシップを垣間見る(1)

スーツ生地メーカーとして不動の地位を築いた後、既製服の分野でも成功を収め、現在ではイタリアのみならず世界を代表するメンズファッションブランドのひとつとして支持されている「エルメネジルド ゼニア」。熟練の職人によるその最上級の着心地と完成されたシルエットは世界中のエグゼクティブや著名人から賞賛されている。今回、その歴史を紐解きながら、昨年3月銀座にオープンしたグローバルストアを紹介する。

Illustrations by SORIMACHI AkiraPhotographs by jamandfixText by KURANO RohanEdit by ANDO Sara (OPENERS)

歴史から紐解くエルメネジルド ゼニアの魅力

1910年にイタリアのビエラ近くのアルプスの町トリヴェロで、初代エルメネジルド・ ゼニアによって「ラニフィーチョ エルメネジルド ゼニア(ゼニアのウール工場)」が設立された。当初、僅か4台の織機によって生産を開始した彼らが目指したのは、「世界で最も美しい」ファブリック。その言葉を100年もの間守り続けてきた理由は、原毛の選択から仕上げまでの生産の全工程を一貫して自社工場で行ってきたからだ。つまり、品質への揺るぎないこだわりと、熟練の職人技術を支える科学技術の採用にあるといってもいいだろう。

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エルメネジルド・ ゼニア氏

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ラニフィーチョ エルメネジルド ゼニア(ゼニアのウール工場)

当然原材料にもこだわっている。使用されるウールはメリノウールのなかでも最高品質の「スーパーファインウール」のみ。毎年、オーストラリアのオークションで最高品質のウールのみを買い付けている。ウール以外のキッドモヘアやカシミア、アルパカ、ビキューナといった獣毛も最上級のものを採用している。

創業当初からウールにこだわっているだけのことはあり、多くの名作と呼ばれる服地を手掛けてきた。ウーステッド糸に強い撚りをかけたファブリック「ハイパフォーマンス」や「トラベラー」はシワの回復力に優れている。そんな実用性から湿度の高い日本でも愛されている。

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上品な光沢感と柔らかな触感で定番人気を誇る「トロフェロ」やシルクをブレンドした「トロフェロ600」など、ラグジュアリーな服地もよく知られている。またジー ゼニアで採用されている「TECHMERINO」はメリノウールに加工を施すことにより、春夏は通気性に優れ、秋冬は保温性を備えるという科学的な技術を生かしたファブリックである。

「ラニフィーチョ エルメネジルド ゼニア(ゼニアのウール工場)」から生まれる高品質な服地は全世界共通のクオリティを保ち、世界のアパレルブランドの服地として、有名テーラーに欠かせない服地ブランドとして、長く愛され続けているのである。

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Page02. ブランドの世界観が反映された気品と高級感に溢れたストア

Ermenegildo Zegna|エルメネジルド ゼニア

100年以上にわたる揺るぎないこだわりと誇り

エルメネジルド ゼニアのクラフトマンシップを垣間見る(2)

ブランドの世界観が反映された気品と高級感に溢れたストア

2015年3月2日にエルメネジルド ゼニアのグローバルストアが銀座に完成した。これまで同ブランドをはじめ、数多くの有名メゾンの店舗を設計してきた建築家ピーター・マリノ。彼が手掛ける4階建ての新店舗にはエルメネジルド ゼニアのすべてのコレクションが展開されている。店舗のデザインもユニークかつラグジュアリーで、高級毛織物を生産してきた「ラニフィーチョ エルメネジルド ゼニア(ゼニアのウール工場)」を象徴するデザインを、入り口のウィンドウを飾るステンレススチールに反映。ファブリックの縦糸と横糸を交差させるデザインを取り入れている。

店内にはモダンな調度品のほか、特別に注文した写真家のミンモ・イョーディチェや、ナショナル・ジオグラフィック誌の写真家マティアス・クルムによる芸術作品を展示している。また、一階の上部の壁にはイタリア人アーティスト、ステファノ・アリエンティが描いた羊の群れの絵が飾られている。これはゼニア財団が2012年から始めた「ゼニアアート」の特別プロジェクトの一環として、各国のエルメネジルド ゼニアの店舗内で常設されている。

1階にはエルメネジルド ゼニア クチュールを取り扱っている。これまでの店舗なら、クチュールは上層階での取り扱いが普通だったが、よりクチュールに親近感を抱いてもらうための試みのひとつなのである。また、このフロアには革製のバッグやスニーカー、サングラスなどの小物類も充実。メタリックなパーツと木の温もり感の絶妙なバランスに、建築家ピーター・マリノのセンスをとくに感じさせてくれるフロアだ。

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2階はジー ゼニアのフロア。空間の仕切りにはアーティストのウロスが手掛けた五角形の折り紙が用いられている。これはジー ゼニアのロゴマーク五角形を用いて、日本の伝統文化である折り紙への敬意を表したもの。ジー ゼニアは「TECHMERINO」という独自に開発したウールや、ポリエステルを混紡したアイテムを積極的にアイテムに反映しているのも特長のひとつ。

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3階はインフォルマーレのフロア。ここにはエルメネジルド ゼニアのアッパーカジュアルなアイテムが揃う。タートルネックやポロシャツ、カジュアルなシャツ、ブルゾン、ストールなどを展開。特筆すべきはインスピレーションベンチを設置したこと。このバーカウンターは買い物の有無に関わらず、誰でも寛ぐことができる場所である。コーヒーやスパークリングワインなどのドリンクを飲みながら、ビデオやカタログを眺めたり、販売スタッフと談笑したりする、いわば情報交換をするスペース。また、この店舗に限らず、最近では気になるアイテムを試着した姿をスタッフが写真に撮るというサービスも行っている。もちろん記念写真という類のものではなく、コーディネイトの手助けをしたい、という思いから生まれたパーソナルスタイリスト的なサービスなのである。

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最上階の4階はサルトリアとMTMルームのフロア。サルトリアのフロアには、エルメネジルド ゼニアのスーツやジャケット、パンツ、ネクタイなど、ドレッシーなアイテムが揃う。このフロアに限らず全フロア、春夏と秋冬のシーズンでアイテムがすべて変わる。奥にあるMTMはメードトゥメジャーの略で、日本で言うところのパターンオーダーを指している。エルメネジルド ゼニアでは、以前からス ミズーラと呼んでいる。ス ミズーラの特長は、「ラニフィーチョ エルメネジルド ゼニア(ゼニアのウール工場)」で織られた数多くのファブリックから選ぶことができ、自分のサイズにフィットするスーツやコート、シャツを仕立てることができるシステムだ。すべてイタリア本国の工場で縫製。MTMルームはとくに予約する必要はなし。ゼニアではス ミズーラを受ける専任スタッフがいるので、いつでもオーダーを受けることができるのが強み。

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さて、現在のエルメネジルド ゼニアのレディトゥウェアのスーツは、「ミラノ」(1999~)、「フィレンツェ」(2014~)、「トリノ」(2010~)、「カプリ」(2015~)の全4型で展開。「ミラノ」は少しゆとりを持たせた構築的なシルエットで、クラシック、正統派の印象。肩パッドが入り、ほどよく芯地を用いている。「フィレンツェ」は日本での展開では主流モデル。現代的でコンパクトなシルエットがポイント。ラペルもややナロー。曲線が美しく、シャツ袖仕様により肩まわりも柔らか。「トリノ」は肩パッドにボリュームがあり、構築的な胸板を形成。ヨーロッパで人気のモデルだ。「カプリ」は対照的に裏地を排し、肩パットや芯地などの副資材を極力省いたアンコン仕立てが特徴。その軽やかな雰囲気は、南イタリアの陽光なナポリを彷彿させてくれる。

今シーズンの新作のなかでとくに気になるのは、カシミヤにシルクやリネンをブレンドした「カプリ」のジャケットだ。ウールの扱いやすさとシルクの光沢感がバランスよくブレンドされ、アンコン仕立て特有の軽さが魅力になっている。新しいファブリック「トロフェオ モヘア」は、ゼニアのアイコン的ウール「トロフェオ」にスーパーファインモヘア50%をブレンドしたもの。弾力があり、シワからの回復力に優れ、光沢もある軽量スーツが実現する。ブルーとミディアムグレーはビジネスシーンでも着回しができ、汎用性が高い。

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次回は、イラストレーターのソリマチアキラさんとともに、ス ミズーラの魅力についてお届けする。

問い合わせ先

ゼニア カスタマーサービス

Tel. 03-5114-5300

http://www.zegna.com/

           
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