第5回 角帯の結び方(1)
男のキモノ、その形拵え(なりごしらえ)の「基本のキ」をイラストレーターの穂積和夫さんが解説します。
その第5回は角帯の結び方。今回は前編、一般的な「貝の口」の結び方を学びます。
文とイラストレーション=穂積和夫
キモノの着こなしは、帯結びで決まる
隅田川の花火を見に行った。地下鉄銀座線は、ゆかた姿の若い女性だらけで、連れの彼氏もゆかたを着ている若い衆が多い。ところが、どうもゆかたの着こなしがおかしいのだ。前回書いたように、ウエストに帯を締めて、スカート広がりになってるのが多かった。
わたしは初めてキモノを着たときも、あまり考えないで何とかうまいこと着ることが出来たが、キモノにイメージのない人は、なるほどこういうことも判ってないんだなあ、ということに気がついた。
キモノの着こなしは、まず帯結びで90%が決まる。そこで今回は角帯の結び方について書くことにしよう。
多少の違いはあるが、角帯には一定の長さがある。わたしの持っている帯は、3.8メートルから4.1メートルくらいである(幅はおよそ10センチ、あまり広いのはダサイ)。
これをお腹に巻いて 結ぶ。太っている人でも、細い人でもキチンと結ぶためには、自分の胴まわりのサイズに合わせて余分な部分は折り込んでしまう。
これを知らないで全長を使って結ぶと、端が余ってしまって始末がつかない。やたらにグルグル巻きつけて、ゴロゴロになったり、中には無理やり蝶結びにしているのもいる。角帯は堅く織ってあるから、蝶結びなんて難しいよなー。
キモノを着るときには、形崩れしないように、まず下紐でいちおう結んでおいてから帯を結ぶのだが、慣れてくれば下紐なしでも着ることが出来るし、帯を結んだあとに引き抜いても結構だ。
ふつうは下紐の上に帯を結んで、隠してしまうもので、外に出ている部分は帯の下に突っ込んで見えないようにする。
前々回書いたように、帯は腰骨のところに結ぶのが原則だが、下紐をウエストに結んで、腰に角帯を結んでいるのがいたな。上に細紐、下に角帯と二段になっているのには恐れ入った。
角帯は、まず一方の端を半分に折る、これを「手」という。
手の先を40センチほど外に出して(1)、帯を3回お腹に巻く。
手の反対側の端が「垂れ」となる。垂れは結んでちょうど良いくらいの長さに折りこんで(2)、手先と結ぶ。
しわにならないように、ここでシッカリひと結びする(3)。
どれくらい折りこむかはひたすら経験だ。自分のサイズに合わせるのである。折るべき場所(輪)にしつけ糸で目印をつけておいても良い。
つぎに手先を折り上げて(4)、そこへ垂れ先をかぶせて、手先の下から上へくぐらせて結び上げる(5)。
結び目の恰好がバランス良く見えるように、注意しよう。手先、垂れ先が長すぎても間が抜けるし、短すぎるとほどけやすい。何事も慣れである。