第6回 角帯の結び方(2)
男のキモノ、その形拵え(なりごしらえ)の「基本のキ」をイラストレーターの穂積和夫さんが解説します。
第6回も前回に引き続き、帯のはなし。結んだあとのちょっとしたコツを教えていただきます。
文とイラストレーション=穂積和夫
前回の結びは、いちばん一般的な「貝の口」という結び方である。このほか「片挟み(かたばさみ)」というのがある。浪人が着流しの時にこの結び方をしたらしく、一名「浪人結び」ともいう。眠狂四郎の映画などでお馴染みである。
これは貝の口をやや簡略化したようなものだが、結び目というより、挟んだ部分が平らで案外ほどけにくい。
わたしは最初に解説図を見ながら「貝の口」の結び方を覚えたので、いまだに前で結んでから後ろへ回すことにしている。慣れればはじめから後ろで結ぶことが出来るそうだ。前にも書いたが、帯を回すときは時計回りに回すのが原則。反対に回すと着崩れする。
そのほかに、神田結びとか、袴を着けるときの結び方があるが、これはその都度解説することにしよう。
帯はネクタイと同じで、うまく結べたときは気分が良い。帯は、どちらかというとややお腹の出ているくらいの人のほうが座りが良いようだ。わたしは痩せっぽちなので、帯を結びおえたら、手拭いを二、三本ふところに入れてお腹の形を整えることにしている。
もうひとつ、帯は横から見たときに「前下がり」になるように気をつけよう。ここらへんが着すがたを格好良く見せるコツである。ときどき親指を帯前に差し入れてグイと下げ気味にすると形がつく。長時間座って立ち上がったときなどは、帯がずり上がりがちなので、必ずこの操作をすることにしている。
さて、キモノは着たが、このままでは足もとがつぼまって歩きにくい。着終わったら「股ざき」といういう処理をしておこう。膝を曲げ、腰を落として足を左右に踏んばる。これをすることによって、足が自由に動かせるし、そのために着崩れする心配もない。
帯はキモノとの色合わせや柄(がら)合わせもたいせつだ。着る人の好みやセンスの見せどころでもある。やはり何本か揃えておきたい。裏 表が違う柄でリバーシブルになっているものなどは便利である。
博多献上はわりあい一般的な帯で、キモノを着る人ならたいてい一本は持っていると思うが、これは模様に上下があることも知っておこう。 模様の混み入っているほうが上になる。
材質はまず絹。なかでも綴れ(つづれ)織りというのは締め心地がバツグンだそうだが、高価である。季節に合わせて粗い繊維素材や木綿もある。化繊は安いが締め心地が悪いといわれる。
帯地の堅い柔らかいは着る人の好みもあるので、自分に合ったものを見つけることだ。