(3)バカラ パシフィック 小川 博さん「品性を表す靴」
Fashion
2015年5月14日

(3)バカラ パシフィック 小川 博さん「品性を表す靴」

バカラ パシフィック社長 小川 博さんと語る

(3) 品性を表す靴

(1)で小川社長のパーソナルな部分を、(2)で「バカラ」というブランドの先進性をお聞きしました。今回はジョン ロブの靴を通して、モノづくりが築く文化などをテーマに……。

edit by Daisuke Hata (City Writes)photo by jamandfix

左/小川社長がお履きの靴は 『アスコット』、松田の靴は 『スタッフォード』

靴は、クルマでいうところのタイヤ

小川 博 僕は靴をタイヤだと思うんですよ。フェラーリでも何でも、タイヤが薄汚れていては、クルマが台無しになってしまいますよね。
で、タイヤは安全性と機能がなければ意味がないじゃないですか。でも安全性と機能だけのタイヤじゃ誰も喜ばない。そこにカッコよさというそれ以上のファンクションがないと。
ジョン ロブの靴には安全性と機能がばっちりありながら、それ以上の価値がある。だからいいなと思うんです。

松田智沖 ありがとうございます。靴とタイヤのたとえは初耳で、目から鱗が落ちました。
小川社長はレースアップのシューズよりもローファータイプの方がお好きでいらっしゃいますよね。

小川 そうですね、かがんで紐を結ぶのが面倒だからという理由だけなんですけど (笑)。それに、僕はカジュアルでいたい、柔らかくいたいと思うんですよ。ブラックタイ着用のフォーマルシーンなどではもちろんレースアップの靴を履きますけどね。
ただ、自分にもよく分からないけれど、バックスキンの靴の場合はレースアップを選ぶ率が高い。デザインとの相性なんですかね。

松田 小川社長ならではのこだわりがあるんですね。

小川 人間の第一印象って顔の美しさではなく、顔から滲み出るオーラのようなものだと思うんです。それと同じように身体のもっとも下端である足もちゃんとしておかないといけない。そうしないとトータルでその人の人間性を表現できない。だから靴はすごく大事なものだと思います。
昔うちの父からも、ある外国人の紳士からも 「ジェントルマンたるもの、靴とワイシャツの衿袖口は常に清潔でなければいけない」 と言われたことがありますよ。

松田 ヨーロッパでは “靴がその人の品性を表す” というような格言があるそうですね。
今日お履きの一足はジョン ロブの 『アスコット』 ですね。イーグルが羽根を広げているようなメダリオン装飾に趣があります。

小川 履き心地も本当に良くて気に入っていますよ。

松田 ありがとうございます。

小川 ところで、私は靴下が靴を良くも悪しくも見せると思うんです。さりげなく模様の入ったロングホーズ (ひざ下まである長靴下) が好きなのですが、なかなか日本では見つからなくて。どうしてこうもないものかと困っています。
ですから、靴をお売りになるときに、それに見合った靴下も一緒にお売りになると喜ばれると思いますよ。

松田 なるほど、参考になります。

ジョンロブ ブティックにて

新しい世代への技術継承を進めよ

小川 先日、何かの雑誌で日本の靴職人を特集している記事を見てびっくりしたのですが、その職人たちがみなさん若くて容姿端麗でかっこいいんですよ。つくる靴も洗練されていて。靴業界はいま、凄い波が起こっているんだなあと思いましたよ。

松田 彼らはいい靴をつくりますよね。

小川 素晴らしい文化が生まれていますね。フランスにあるような最優秀職人 (MOF) の称号を日本も制度としてもてば、もっと若い職人たちが育っていくと思います。

松田 もともと日本には伝統工芸があって、職人の文化も深いはずですからね。若い職人が台頭してきたことは素晴らしいことだと私も思っています。
ちなみに、ジョン ロブのオーダーメイドのアトリエにもひとり日本人がいますし、ノーザンプトンにある既製靴のファクトリーにもひとり日本人がいるんですよ。既製靴を担当する職人はもともとソニーの企画開発部にいたのですが、靴好きが高じて英国の靴学校に通い、それでジョン ロブへ入社したというユニークな経歴をもった人物です。非常に優秀ですよ。

小川 そうですか。ひとつ、すごく単純な質問をしてもいいですか? ジョン ロブというのはフレンチテイストなのでしょうか、ブリティッシュテイストなのでしょうか?

松田 言葉にするとすればコスモポリタンです (笑)。もともとジョン ロブは英国で1858年に創業したのですが、パリへ進出して、1976年に撤退しようとしたときにエルメスが買い取った経緯があるんですよ。その素晴らしい技術をぜひ欲しいと。
イギリスとフランスの仲の悪さを考えると非常におもしろい経緯ですよね。

ジョン ロブ、7月のおすすめを紹介

モデル 『エドワード』

カジュアルに履けるスリッポンでありながら、アッパーが甲を深く覆うデザインのためどこかドレッシィ。ほどよいロングノーズの7000番ラストをベースとした、モダンな印象を醸すモデルです。ライニングを廃したやわらかなつくりも魅力。ライトなビジネススタイルや旬のリゾートカジュアルにも重宝することでしょう。

Profile

バカラ パシフィック株式会社 代表取締役社長
小川 博さん

1948年神奈川県生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒。'70年エッソ石油(現エクソン) 入社。'83年バカラ パシフィック設立に参加し、代表取締役常務などを経て'94年から現職へ就任。シンガポール法人の代表、米国法人の取締役も兼務する。
'97年にはフランス政府より、国家功労賞シュバリエを受賞。

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