「ジョン ロブな“オンナ”」高橋みどりさん対談(1)
Fashion
2015年8月12日

「ジョン ロブな“オンナ”」高橋みどりさん対談(1)

「ジョン ロブな“オンナ”」(1)

Oens代表兼イメージングディレクター 髙橋みどりさんとともに

バーニーズ ジャパン、ジョルジオ アルマーニ ジャパンを経て、それまでになかったスタイルのスペシャリティストア、エストネーションをオープンさせた髙橋みどりさん。現在はご自身の会社『Oens』を立ち上げ、さまざまなブランドのプロモーションはもとより、企業のブランディングや個人に対するスタイリングをも手掛けていらっしゃいます。
そんな髙橋さんに靴や服の買い方、着方の話から、世の男性陣に向けての辛口(?)のアドバイスまで、ファッションに関するプロの意見を聞いてみたいと思います。
第1回めの今回は、“女性には珍しく”ジョン ロブを4足もお持ちの髙橋さんに、ご自身のジョン ロブ体験からファッション観へとつながるお話をうかがってみました。ホストは、ジョン ロブ ジャパン代表取締役社長の松田智沖さんです。

構成=竹内虎之介(City Writes)Photo by Jamandfix

どうしてレディスにはこういう靴がないんだろう

松田 ジョン ロブは男性にとっては認知度もある靴なんですが、女性でジョン ロブを語れるような方は、ほぼ皆無(笑)。私が知っているかぎり髙橋さんしかいませんね。

髙橋 たしかに私が買った1991年当時も、すごくめずらしいといわれました。そのころ私はバーニーズにいて、そこでメンズのものを見たのが最初でした。で、毎日見ているうちにだんだん「いい靴だなぁ」と思うようになって。どうしてウィメンズにはこういう靴がないのかと思っていました。そこでバイヤーの人に頼んでウィメンズを引いてもらったんです。そのときバイヤーさんからも、最初は硬くて重いから女の人には向かないんじゃないかな、なんていわれましたよ。

松田 それが、この紺のローファーだったんですね。

髙橋 そうです。たしかに最初は重くて硬いな、と感じましたが、そのうちだんだん足に馴染んできて。その重さも私にとっては、とても心地よかったんです。女性の靴には、こんなふうに愛着がわく靴はありませんね。それから4足に増えました。

松田 4足もウィメンズのジョン ロブをお持ちの方にははじめてお会いしましたよ(笑)。

髙橋 店頭にはなかったので、ぜんぶ取り寄せてもらったんですが、じつは私もそれが日本で展開されているものなのか、ほんとうにウィメンズなのかどうかさえわからないんです。日本でメンズの商品を見て、これの私のサイズを、というカタチで注文しましたから。

松田 たぶん4足のなかには、日本で展開していないモデルもあると思いますよ。

髙橋 そうですか。とにかく、ずいぶん待って手に入れました。ふだん私はモノを待って買うことができないんです。すぐ買いたい、あした着たいって感じです。男の人ってオーダーメイドで服をつくれますけど、女の人でオーダーできる人って少ないと思います。とくに私はそうですね。ジョン ロブは私の服や靴のなかで、唯一待って買った商品かもしれません(笑)。

「ジョン ロブな“オンナ”」(1)Oens代表兼イメージングディレクター 髙橋みどりさんとともに

服で自分をプレゼンテーションする

松田 待って買えないというのは、やっぱり女性のファッション感覚が男性より早いからでしょうか。

髙橋 それもありますね。あと女性って多面体なんです。きょうはこんな人、あしたはこんな人、昼はシャキッと、夜はパーティがあるからロングドレスで、というように極端な話、一日のなかでもちがう自分になれるし、なりたいんです。どれも自分なんですけど、着ている服によってすごく変わる。ですから、いろんなものをもっていたいし、すぐ欲しい。男の人みたいに“僕はコレが好きです”といった頑固さがないんですよね。

松田 洋服によって精神的にもずいぶん変わってしまうわけですね。

「ジョン ロブな“オンナ”」(1)<br><br>Oens代表兼イメージングディレクター 髙橋みどりさんとともに

髙橋 全然ちがいますよ。歩き方まで変わりますから。でも、バーニーズの仕事をするまでは、私は女性のなかでは割と好きなものや流行のものをすぐに取り入れて着る方でした。でも、バーニーズでニューヨークにたびたび出張するようになって、変わりました。
最初の出張のとき、本社の社長さんが「みどり、きょうはなに着てきた?」って毎日訊くんですよ。「なんでそれ着てるの?」と。そのたびに私は「きょうは撮影についていくからこのデニムで来たんです」とか「きょうはVOGUEのランチミーティングがあるからスーツで来ました」とか自分の洋服の話だけを一週間ずっとしていました。
そして帰る日に社長によばれ「僕はあなたを雇うことを決めました。一緒にやっていけると思いました」というんです。なんにも仕事を一緒にしてないのになぜ? と思って訊いてみると「君の服装を一週間見ていたけど、君には自分をプレゼンテーションする能力があるから」というんです。

彼いわく、自分は「センスがある人=仕事のできる人」だと考えている、と。その一週間で私は洋服に対する考え方が変わりました。洋服ってこんなに大事なものなんだ、自分をどう見せるかということはこんなに重要なことなんだ、と痛感しました。それからは、誰とどこで会うのか、どういう話をするのか、どんなメンバーがいるのか、その日の私の役目はなんなのか、といったことを毎朝考えて、洋服や靴を選ぶようになりました。

編集部 日本人は昔から「ボロは着てても…」なんていいますが……

髙橋 欧米ではあり得ないですね。ボロはボロだっていわれちゃいますよ(笑)

Profile
Oens代表取締役
髙橋みどりさん

1990年、バーニーズ ニューヨークの日本進出に伴い、バーニーズ ジャパン宣伝部ジェネラルマネージャーに就任。その後、ジョルジオ アルマーニ ジャパン広報室長を経て、2001年ビジネスシーンを強く意識した大型専門店エストネーションをオープンさせる。2005年6月にOensを設立。これまで培った経験と知識を生かし、さまざまなブランドのブランディングからPR、ショップのプロデュースなどを手掛ける。また、これまで日本にはほとんどなかった個人や企業に対するイメージコンサルティング、スタイリングを手掛け注目を集める。

Oensホームページ
http://oens.net/

           
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