(2)「小山薫堂、オフィスの隠し扉」
Fashion
2015年5月14日

(2)「小山薫堂、オフィスの隠し扉」

photo by Jamandfixedit by Daisuke Hata (City Writes)

受付をパン屋さんにしました

松田智沖 最近また新しいプロジェクトを予定されているとか?

小山薫堂 はい。いま「オレンジ・アンド・パートナーズ」という新しく立ち上げた会社のオフィスをつくりまして、そこの受付を「パン屋さん」にしました。
受付って大切だけどすごくもったいないものだと思うんですよ。そこにお客さんが来ない時間は意味をなさない、なんか受付嬢が下を向いてマニキュア塗っているようなイメージがあるじゃないですか。かといって誰もいなくて電話だけがポツンと置いてあってというのも淋しい。
じゃあどうするのがいちばんいいだろうと考えたときに、パン屋をつくればいいなと思ったわけです(笑)。

松田 受付がパン屋! おもしろいですね。

小山 ランドマークになりますから、人にオフィスの場所を説明するときも「神谷町の駅を出てどこどこを曲がって、そこのパン屋です」と言うことができる(笑)。
パン屋は会社名にかけて「オレンジのバイテン」という名前にしました。昔ながらのコロッケパンとかそういうものをショーケースに並べて売っています。受付でありながら普通にパン屋として機能しているという。で、その横に僕の好きなグラスとか、あとはいいなと思うコーヒーからワインから七味から、自分が人にオススメしたいものも売ろうと思っています。

松田 キオスクのように?

小山 まさにキオスクですね。でもうちの場合は売店でありながら「BUY(買う)店」なんですね。自分が買いたいと思うものを売る店なんです。
で、うちのオフィスに用事があって来られた方は隠し扉を開けてオフィスに入る。ちょっとスペシャルな気分が味わえるという。社員はもちろん社販でパンが買えます。

松田 大事なことですね(笑)。

小山 毎日、全国のおいしいオレンジジュースを集めては試飲ばかりしている時期もありました。たくさんのオレンジジュースが飲めるところにしようと思って。ぜひいろいろな方に来ていただきたいですね。
(※住所は東京都港区麻布台1-11-10 日総第22ビル1F)


                                    小山薫堂さん

タコ焼き研究、はじめました

小山 それから、6月27日オープンのタコ焼き屋の出店を進めています。
これは経緯がちょっと特殊ですね。大阪の難波駅の高架下にフードコートがあるのですが、店の誘致を僕の知り合いがやってまして、でも人気店の支店を呼んでくるとかそういうのではなくて、ウマいんだけどあまり知られていないお店というのを発掘して出店依頼をしたんですね。
彼は1年間かけて413軒も食べ歩いたんですよ。でもそのなかで「また行きたいな」と思うお店は23軒しかなかった。そこで何度も断られながらOKを貰った11軒をそのフードコートにラインナップしたんです。
で、そんな従来とは違うフードコートなのでPRとネーミングの仕事をやってくれないかと頼まれまして。難波はもともと米蔵(こめぐら)があったところなので「なんばこめじるし」という名前をつけたんですよ。略して「なんこめ」。でも予算が非常に少なくて、ほとんど利益にならない(笑)。
ただ店を出店するまでのひとつひとつにドラマがあるので、これを軸にテレビ番組にしたらおもしろいなと思い『なんこめ満腹物語』という大阪でオンエアする番組を企画しました。
で、タコ焼き屋の出店につながるのですが、ストーリーをつくるときにリアルな人だけが出てもただのドキュメンタリーになってしまうので、そこでタコ焼き屋を出す青年の話を軸にしたんです。

松田 そのタコ焼き屋でタコ焼きをつくる人というのは?

小山 人は雇うのですが、昨日もメニューの開発を夜中の3時くらいまでやっていました。11時まで別のクライアントと会食があってそれが終わった後にひたすらタコ焼きの試食で。辛かったですよ(笑)。あれを入れたらどうかな、と言ってすぐスーパーまで食材を買い出しに行って、やっぱり違うなぁとかって。


松田 話は戻りますが「なんこめ」に入るお店は全国から集めたんですか?

小山 いえ、ほとんどが大阪のお店です。しかもチェーン店ではなく、お父ちゃんお母ちゃんが夫婦でやっているお店ばかり。弟の仕事を辞めさせて、ここに出店するくらいの人もいます。それぐらいみんな気合いが入っているんです。僕もすごく楽しみにしています。
一軒、深夜1時に開いて朝の10時に閉まるといういいお店があったんですよ。そこがお母ちゃんと長男と次男と、次男の嫁さんでやっているお店だったんですね。そこで、次男が支店を出して、長男とお母ちゃんで本店をされたらどうですか? と言ったら「いや、兄弟が力を合わせてするのが商いや! そんなのアカン」と言われてしまって。結局、兄弟で19時から23時30分までやって、終わった後に本店に戻るということになって。すごい働き方だなぁと(笑)。

松田 大阪らしいですね(笑)。

小山 ちなみにタコ焼き屋のインテリアは有名なデザイナーに頼んだのですが、よくよく予算を計算すると厨房機器全部入れて500万くらいしかないので「今回はお金払えないのでゴメンナサイ、断っていただいて結構です」と言ったんですよ。そうしたら「いえ、タコ焼き好きなので」と言ってくださって、それじゃあと一生タダでタコ焼きが食べられる「タコ焼きブラックカード」を進呈して(笑)、内装を手掛けていただく運びとなりました。

松田 タコ焼き屋の名前はもう決まっているんですか?

小山 名前は「たこやきらぼ」にしようと思っています。ラボシリーズの続編ですね。

小山薫堂さん

1964年熊本県生まれ。日本大学芸術学部卒業。『N35』 『オレンジ・アンド・パートナーズ』代表。放送作家として 『カノッサの屈辱』 を手掛けたことで脚光を浴び、その後も 『料理の鉄人』 『世界遺産』 『東京ワンダーホテル』 といった数多くの人気番組に携わる。現在は 『トシガイ』 (日本テレビ)、『エコラボ』 (フジテレビ) などを手掛ける。またラジオパーソナリティや小説家、日光金谷ホテル顧問などとして、多彩なフィールドで活躍中。著書に 『フィルム』 (講談社)、『一食入魂』 (ぴあ)、『考えないヒント』 (幻冬舎新書)、絵本 『まってる。』 (千倉書房) などがある。

           
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