伝統技法を現代デザイナーの新たな感性で|Royal Copenhagen
Royal Copenhagen|ロイヤルコペンハーゲン
ミラノデザインウイークにて発表された新シリーズは“海”を意味する「HAV(ハウ)」
2019年4月、ミラノデザインウイークにて発表されたロイヤルコペンハーゲンの新シリーズ 「HAV(ハウ)」が、この夏満を持して発売される。「HAV」はデンマーク語で「海」を意味し、デザインは1892年に発表された古典的シリーズ「シーガル」に寄せるオマージュと、伝統的な吹付技法によるもの。これは、ロイヤルコペンハーゲンというブランドが、伝統を守りつつも自らの過去の達成を超え出た挑戦そのものの造形と言えるだろう。まったく新しい感性で構築されたその挑戦とは?
Text by WAKABAYASHI Satsuki
消費されるのではなく、いつまでも愛され続ける存在へ
「HAV」は現在注目を集めるデンマークのデザインユニットの一つ、KiBiSi(キビシ)によってデザインされた。プロジェクトは遡ること10年前、2009年に開始されており、コンセプトワークの多くは若手建築家ビャルケ・インゲルスによるもの。ビャルケ・インゲルスはデンマーク国立海洋博物館、上海万博デンマークパビリオン、グーグル本社ビル等数々の重要なプロジェクトに続き、現在ニューヨーク・グランウンドゼロ再生計画に参画している注目の建築家だ。
コレクションは全9アイテム、どれもシンプルなアイテムで構成され、従来の多種多様なアイテムでさまざまなディナーシーンを1シリーズで揃えることのできるコレクションとは異なる。シリーズで揃えられたテーブルには統一された美しさと品格が漂い、華やかさと品格を演出できるが、「HAV」のプロジェクトでは、あるひとつのアイテムを選び取る、その瞬間の豊かな心の揺らぎに注目した。
ロイヤルコペンハーゲンとKiBiSiにインスパイアを与えたのは、デンマークの北西、ユトランド半島の“Cold Hawaii”と呼ばれるサーファーのコミュニティ。冷たい風の吹きつけるこの地で、波とひとつになり、冷えた体を温かな食事と会話で温めるここでの過ごし方は、多くのものはなくても、自分を快くさせてくれるものだけを選ぶ心地良さが漂っている。それは「何かを持つ」ことや消費するだけの豊かさではなく、自分らしい選択をすることで、やがてそれは長く愛されるものになるということを意味する。これはシンプルでそぎ落とされた機能美を掲げるデンマークデザインの哲学にも通じる。
さらに、決してミニマル過ぎず、エルゴノミックで、そこへ集いたくなるような温かさが「HAV」のデザインでは重要視されている。伝統的な吹付技法で彩られた新しいブルーも、緑がかった黒を二重に吹き付けたもの。焼成の温度で2色が溶け合い、アンダーグレーズ技法ならではの透明感を醸し出している。「HAV」の発売に際し、塩を素材に国内外で発表を続けるアーティスト山本基氏による作品も発表される。最終日にはHAVのクリエイションと響きあう白い世界を、鑑賞者と共に崩し、その塩を持ち帰れるというイベントも。伝統、そして革新を進めるロイヤルコペンハーゲンの新たな挑戦に注目だ。
イベント HAV<ハウ>
会場 | 東京・六本木 21_21 DESIGN SITE ギャラリー3
一般公開 | 2019年7月6日(土)~7月7日(日)
公開時間 | 10:00~19:00
※最終日入場16時半締め切り
スペシャルイベント“海に還るプロジェクト”
日程|7月7日(日)
時間|17:30~18:30 (17:00受付開始)
URL|https://www.royalcopenhagen.jp/column/hav2121/