【インタビュー】本明秀文社長に訊く「アトモス(atmos)」25年の歩み | MEDICOM TOY
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2021年12月24日

【インタビュー】本明秀文社長に訊く「アトモス(atmos)」25年の歩み | MEDICOM TOY

MEDICOM TOY|メディコム・トイ

BE@RBRICK atmos × NYLON JAPAN 100% & 400%
BE@RBRICK atmos SUBWAY 100% & 400%

東京のスニーカーカルチャーを世界に向けて発信し続けるショップ「アトモス(atmos)」が創業25周年を迎えた。フットロッカーによる買収も話題を集める中、今回は2022年1月発売予定の新作「BE@RBRICK atmos × NYLON JAPAN 100% & 400%」「BE@RBRICK atmos SUBWAY 100% & 400%」リリースを記念して、創業社長である本明秀文氏にメールインタビューにてアトモスのこれまでとこれからについて伺った。

Text by SHINNO Kunihiko|Edit by TOMIYAMA Eizaburo

世界へと羽ばたき始めた原宿発のアトモス

2021年8月、フットウェア業界に衝撃が走った。世界最大のスポーツウエア小売店である米フットロッカー(FOOT LOCKER)が、スニーカー専門店「アトモス(atmos)」を運営するテクストトレーディングカンパニーを3億6000万ドル(約396億円)で買収すると発表したのだ。
コロナ禍においてもフットウェア業界は依然好調で、調査会社アライドマーケットリサーチによると2020年の世界市場規模は3655億ドル。2027年までの平均成長率も5.5%と見込まれており、2021年には他にも L キャタルトンがビルケンシュトックを、オーセンティック・ブランズ・グループがリーボックをアディダスから買収している。
これまで数多くの別注スニーカーやウェアのほかメディコム・トイとのコラボレーションでBE@RBRICKを数多くリリースしてきたアトモスだけに、フットロッカーとのM&Aによって、どんな未来が展開されるのか期待は高まるばかりだ。
本明秀文(ほんみょう・ひでふみ)
Foot Locker atmos Japan 合同会社
atmos グローバル担当 / CEO兼チーフクリエイティブオフィサー
1968年生まれ。米フィラデルフィアの大学を卒業後、商社に2年間勤務。96年、テクストトレーディングカンパニーを設立し、裏原宿にスニーカーの並行輸入店「チャプター(CHAPTER)」を開く。現在「アトモス(atmos)」をはじめ、「アトモス ピンク(atmos pink)」や「トーキョー23(TOKYO23)」などを運営。
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アトモスの本分は"面白く、誰もやっていない事をやる"

──本明社長は1996年、資金300万円でテクストトレーディングカンパニーを設立し、原宿キャットストリートにある「ジャンクヤード」の2.7坪という小さなスペースで「チャプター」を開業されました。印象に残っている当時の出来事を教えてください。
私の商売の原点は貿易です。小さな商社で2年間働き、貿易の仕方を学びました。物をA地点からB地点まで運ぶことによって利益が生まれる。当時流行っていた代々木のフリーマーケットでアメリカから物を仕入れれば儲かると思い、年に8回ほど行っては買ってきた商品を売っておりました。しかし、なかなかお金を回すのは難しかったです。
当時は小さなスニーカー屋に行っては交渉し、地下の倉庫でスニーカーを探していました(スニーカーを“掘る”と言っていました)。その時の期待と汚れと匂いを今でも思い出します。
──開業のきっかけとなった「一足」があれば教えてください。
名前はわからないのですが、フランス製のアディダスのスニーカーです。上野で2900円で買ったものが、代々木のフリマで1万5000円で売れた。これが私がスニーカーの商売を始める気付きとなりました(それまでは古着の商売の方が多かったのです)。
──原宿という場所を選んだ理由を教えてください。当時はスニーカー市場にどんな将来性を考えていたのでしょうか。
当時は原宿と高円寺のどちらかにしようかと思っておりました。店舗も安く借りるところもなく、たまたま森山不動産(うちの嫁さんの旧姓は森山)が紹介してくれたのが、ジャンクヤードでした。当時敷金や礼金も少なく、20万円で借りる事ができたのです。
原宿にオープンしていなければ、今の私は違ったことをしていると思っております。
──アート、映画、音楽、文学、ファッション、思想など、本明社長が影響を受けたカルチャーについて教えてください。
私は、多少本を読みます。基本は哲学書やそれに近い内容のものが好きです。ハイディガーやヴィトゲンシュタイン。鈴木大拙や西田幾多郎、井筒俊彦などはこの年になって余計に好きになりました。
私は生きて仕事をしております。しかし、その私が生きている理由を探しているのだと思います(私には弟がおりましたが、私が5歳半の時になくなりました。私は一人でいつも家におり寂しくしていました。私含めて幸せな生活が訪れる事を天井の木の年輪を見ながら恐る恐る考えておりました)。
文学では、石牟礼道子の苦海浄土の普通の人々の生活と素晴らしさ。自然の温もりと人間の愚かさ。
万葉集や詩も好きです。俳句の松尾芭蕉の世界観は、深淵なる人の深みと人も自然の一部であることを感じさせてくれます。
──スニーカーは90年代の日本での爆発的ブームをきっかけに世界的なカルチャーへ成長しました。その立役者のお一人である本明社長がこれまで感じた嬉しかったこと、残念だったことを教えてください。
スニーカーブームは確実に日本から始まり世界に広がっていきました。多くのアメリカ人が日本に来ては、私たちのやり方を真似していきました。それは良かった事ですが、それ以降に日本人が頑張って世界にスニーカーブームを拡げたかというとそれは疑問です。
私含め、世界観が乏しかったと思っております。本当は私達で世界に拡げていくべきでした。
──アトモスはこれまで数々のオリジナルのスニーカーやアパレルをリリースしてきました。背景にはどのようなお考えがあったのでしょうか。
これは、
面白く。
誰もやっていない事をやる。
多くの人と友達になる。
もちろん儲ける。
色々やった結果、成功も失敗もありますが、基本は馬鹿な事が多かったと思っております。
──2009年からアトモスはBE@RBRICKとのコラボモデルをリリースされています。どのような思いからコラボレーションが始まったのでしょうか。また、メディコム・トイおよび赤司様に対する印象はいかがでしたか。
BE@RBRICKとは数多くコラボさせていただいております。形はひとつですが、プリント、素材の表情により違ったものに見える。また、アート性も高く世界中の人に愛されている。そのBE@RBRICKに私達の考えを入れさせていただくのは、とても嬉しい事です。
たぶん赤司社長の明るく、腰が低い人柄がBE@RBRICKの本質であり、メディコム・トイ様の発展だと思っております。感謝しております。
──Coca-ColaやSTAPLEとのトリプルコラボモデルは、どういう経緯で実現したのでしょうか。
これも面白い事をやろうと思いスタートしました。世界的なブランドであるコカ・コーラがBE@RBRICKになったら面白いかな、と。Jeff(※)とはよくLINE(アメリカに行った時は定期的に会う)などで常に何か面白い事を一緒に、と話をしております。
※Nike Pigeon Dunkなどを手がけたストリート系ブランドSTAPLEの創設者にしてクリエイティブ・ディレクターのJeff Staple(ジェフ・ステイプル)
──他にもこれまで発売されたアトモス企画のBE@RBRICKで特に反響のあったもの、お気に入りのモデルを教えてください。
個人的にはやはりナイキのエレファント柄やアニマル柄です(※)。多くのナイキの人から頼まれましたし、スニーカーコレクターとしては一緒に置ける満足感があります。
※アトモスの企画で2006年にリリースされた動物柄の“Animal Pack” 、2007年にリリースされたAIR MAX 1 ELEPHANTはいまなお名作と呼ばれており、バージョンアップを重ねながら復刻されている。
BE@RBRICK x atmos ELEPHANT 100% & 400%
(2017年発売・完売)
BE@RBRICK atmos ANIMAL 1000%
(2018年発売・完売)
──2022年1月発売予定の「BE@RBRICK atmos × NYLON JAPAN 100% & 400%」「atmos×SUBWAY 100% & 400%」もユニークなコラボですが、企画時のエピソードを教えてください。
何事もコラボは人間関係であると思っております。NYLON JAPANさんの媒体も色があり、お客様の層も今までの私達の層とも違います。編集長の森田さんも面白く、馬鹿な話をしている間にコラボをさせてもらおうと話が進みました。
BE@RBRICK atmos × NYLON JAPAN 100% & 400%
サイズ|各全高約70mm/280mm
価格|1万4300円(税込)
発売日|メディコム・トイ直営店舗及びオンラインストア各店、atmos店舗、他一部店舗にて2022年1月発売予定
※数量限定商品のため、在庫が無くなり次第販売は終了となります。
販売元|TEXT TRADING CO., LTD
BE@RBRICK TM & ©️ 2001-2021 MEDICOM TOY CORPORATION. All rights reserved.
SUBWAYは、このBE@RBRICKを持っていればニューヨークと東京圏の地下鉄マスターになれるというアイテムです。私は地下鉄が好きで、移動は主に地下鉄です。しかし、ニューヨークも東京も煩雑すぎてなかなかマスターできません。お客様にもこのBE@RBRICKを見て興味を持ってもらい、地下鉄で移動。まさにエコライフです。
BE@RBRICK atmos SUBWAY 100% & 400%
サイズ|各全高約70mm/280mm
価格|1万7600円(税込)
発売日|メディコム・トイ直営店舗及びオンラインストア各店、atmos店舗、他一部店舗にて2022年1月発売予定
※数量限定商品のため、在庫が無くなり次第販売は終了となります。
販売元|TEXT TRADING CO., LTD
©️Tokyo Cartographic Co., Ltd.
BE@RBRICK TM & ©️ 2001-2021 MEDICOM TOY CORPORATION. All rights reserved.
──既に様々なメディアで本明社長ご自身も発言されていますが、改めてフットロッカーとのM&A以降の展望についてお聞かせください。
FLは8500億円も売る巨大スポーツチェーンですので、上手く使わせていただきながら面白い企画を続けていきたいです。色々承認を取らなければいけないことが多いので面倒ですが、それ以上に面白い物を作りたいと思います。
──最後にメディコム・トイへのメッセージをお願いします。
本当に感謝しております。これからも面白いことを続けてやらせていただければと思っております。世界にはもっと多くのファンがいる。世界で一緒に勝負をしたいです。
問い合わせ先

メディコム・トイ ユーザーサポート
Tel.03-3460-7555

atmos pink flagship Harajuku(NYLON) 
Tel.03-6419-7170

atmos shinjuku(SUBWAY)
Tel.03-6457-8755

                      
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