Panasonic|ミラノサローネで世界に提示した“引戸の未来”
DESIGN / FEATURES
2015年4月16日

Panasonic|ミラノサローネで世界に提示した“引戸の未来”

Panasonic|パナソニック

パナソニック×トラフ建築設計事務所による展示「SLIDING NATURE」

ミラノ大学の中庭全体で反応するインスタレーション

4月7日から13日まで開催された世界最大級のデザイン見本市「ミラノサローネ2014」に、7年連続となる出展を果たしたパナソニック。2008年からは、住宅関連製品を用いて空間プレゼンテーションをおこない、今年は「SLIDING NATURE」をコンセプトに、大型引戸とLED照明を用いた展示を披露。この会場構成を、トラフ建築設計事務所が担当した。盛況のうちに終了し日本に戻った、トラフ建築設計事務所の鈴野浩一氏と禿(かむろ)真哉氏に、お話をうかがった。

Text by KAJII Makoto (OPENERS)Photographs by SUZUKI Shimpei (Interview)

インスタレーションで感じた手応え

鈴野浩一 今年のミラノサローネは期間中とても天気に恵まれて、外でのインスタレーションを多くの方に楽しんでいただけたと感じています。昼夜どちらにも来ていただいたり、現地では午後8時ぐらいがちょうど薄暮なのですが、夕食を済まして観に来ていただいたりと。思い思いに触れあっていただけたのではないでしょうか。

禿(かむろ)真哉 今回はランドスケープの設営から実際に手伝ったので、とても楽しかったですね。

鈴野 今年のミラノサローネの出展では、場所選びからかかわらせていただきましたが、場所はミラノ大学を希望し、そこだけを下見に行きました。パナソニックは 過去2年間ミラノ大学でインスタレーションをおこなっていて、今年はデザイナーも商品も変わりますが、おなじ場所での継続性をきちんと見せたかったですし、日本の引戸をどう表現するかに面白みを感じました。

それと、2年前にミラノサローネに来たときに、ミラノ大学がとても素敵な場所で、夕方に訪れたときに、ここでやりたいと感じました。

引戸、照明、音によるダイナミックな変化

禿 今回は、住環境と自然が呼応する空間を、大型引戸とLED照明を用いて表現しました。引戸の開閉によって、環境とダイレクトに繋がるダイナミックな変化を表現できたと思っています。引戸の開閉に調光システムをふくめた照明と映像と音をシンクロさせることで、中庭全体で大きく反応するインスタレーションとなり、まさに、呼吸する家を表現できました。

鈴野 厚い壁で覆われたミラノ大学の環境のなかで、薄くて軽い引戸という“動く壁"が閉じたり開いたりすることで、周囲の重厚な建築と対比的に見せられたら、という狙いを果たせたと思います。実際のインスタレーションは日本を意識したわけではありませんが、観に来ていただいた方には日本的にとらえてもらったり、やはり日本人がもっている感覚が出ているのかなと再認識しました。

禿 とくに驚いたのは、全体プログラムの1回のサイクルが約10分なのですが、熱心に何サイクルも観ていくひとがとても多くて、インスタレーションの滞在時間としては例外的な長さだったと思います。皆さん、とても落ち着いて観てくれましたね。

Panasonic|パナソニック

パナソニック×トラフ建築設計事務所による展示「SLIDING NATURE」

ミラノサローネで世界に提示した“引戸の未来”

パナソニックが展示コンセプトとした「SLIDING NATURE」は、日本の住宅の特徴である「ふすま」や「障子」などの引戸を活用。住空間に心地良い風を通し、柔らかな日の光を導きながら大きく開け放して景色を楽しむなど、自然がもたらす恩恵を上手に取り込むことが大きなテーマとなっている。トラフ建築設計事務所の鈴野浩一氏は、「引戸を“動く壁”として考えると大胆にチャレンジできる」と答える。

ミラノ大学の中庭で“動く壁”をどう見せるか

鈴野 パナソニックさんからミラノサローネのインスタレーションで用いる商品が引戸と聞いて、正直、最初は驚きました。
元来、日本の家屋では、お客さんがたくさん来たらふすまを外して大きな空間を作ったり、障子を開閉して風や光を調整したりします。実際の作品でも、東京・渋谷の「フライターグ ストア 渋谷」では全開できる引戸を使ったりと、なじみも深いものですが、世界中から家具・インテリアの目利きが集まるミラノサローネ期間に、ミラノ大学の中庭でどう見せるかは難しかったですね。

禿(かむろ) 鈴野が言うように、私たちは建築設計で引戸をよく使います。引戸はたんなる扉ではなく境界でもあり、開放しておけて扉よりも邪魔にならない。引戸はワンルームの空間のレイアウトを変えるのにも、とても有効です。そういう話を重ねていくうちに、カタチが見えてきました。

アイコンのような、家型にした理由

鈴野 今回は、引戸とLED照明という商品がメインで、インスタレーションだけで終わらないものを作りたかったので、設計もいろいろ模索しましたが、ふすまや障子を今一度見直して、それを“動く壁=ダイナミックに空間を可変させる装置”として考えると、大胆であたらしいチャレンジができるととらえました。観るひとに引戸を壁ととらえてもらうために、形はわかりやすい家型にして、パネルが動いているのではなく壁が動いているのを認知してもらうように設計しました。また、引戸の開閉による変化がわかりやすいよう、アイコンのような家型にしました。

禿 当初から「SLIDING NATURE」というコンセプトからスタートしましたが、照明も使って“住環境と自然が融合した、呼吸する家”という言葉が生まれて、とてもいい表現だなと思っています。

Panasonic|パナソニック

パナソニック×トラフ建築設計事務所による展示「SLIDING NATURE」

実空間展示から見えてくる“引戸の進化”

パナソニックは、ミラノサローネでのインスタレーション展示の発展形として、次世代空間コンセプトモデルを、トラフ建築設計事務所とともに製作。5月に開催される住宅関係者向け展示会で初披露する。パナソニックが提案するあたらしいスマートハウスも“引戸”がキーとなり、暮らし方を実空間で提案する。

引戸から発想したあたらしい家のカタチ

鈴野 ミラノサローネでインスタレーションを設営、展示していると、「たとえばこれがパナソニックカフェとして公園にあったらいいね」とか、「引戸の良さを全面的に使ったショールームを作りたい」など、やっていくうちに気づくことが多くありました。
キーとなる引戸は、壁、文字や絵が描けるキャンバス、何かを投影するプロジェクターなど、形が可変していくだけでなく、現代の生活に求められる間取りの自由度にくわえて、暮らし方も変える可能性をもっています。

禿(かむろ) インスタレーション展示を実際の住宅に馴染ませるには“翻訳”が必要ですが、今度、展示するコンセプトモデルでは、引戸=壁=間仕切りが動くことで、よりリアルに家の可能性を提示します。

鈴野 展示するのは80平米ぐらいの家を想定したモデルで、卍形で壁が動いていく構造をもちます。室内では4つの個室が、引戸によって閉じる、繋がることを想定しています。

リビング学習と家事を両立するソリューション「家族モード」、在宅勤務を快適におこなう「SOHOモード」、お盆や正月など大家族にも対応できる「パーティモード」など、暮らし方に対応する可変空間パッケージとなります。

私たちの生活をバックアップしている先進の技術

禿 ミラノサローネでは、中庭に植物のように飾ったLED照明の見せ方なども、テクノロジーを表に出さない、裏にひそむテクノロジーとして表現しましたが、先進の技術が私たちの現代的で未来的な生活をバックアップしているという思いを上手くコラボさせているのがこのコンセプトモデルです。

鈴野 実際、建築家の目から見ると、パナソニックの住宅建材や照明のアーキスペックシリーズは、建築家としてやろうとしているところに目が向いていて、とても使いやすい。今回はミラノサローネという大きなステージで、実際の商品を使ってパナソニックの世界観をインスタレーションで表現しましたが、チームワークの良さを生かして、来年につながっていけばお互いいい経験になると思います。

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パナソニック エコソリューションズ社 宣伝・広報グループ 総合企画チーム
Tel. 06-6908-1131(代表) 受付 8:45~17:30
http://panasonic.net/milanosalone

トラフ建築設計事務所
http://torafu.com/

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