ASTIER de VILLATTE|画家 バルテュスの妻、節子夫人とアスティエがコラボ
ASTIER de VILLATTE|アスティエ・ド・ヴィラット
名匠 バルテュス夫人、節子・クロソフスカ・ド・ローラ氏と共作
「セツコ・コレクション」誕生の舞台裏(1)
華やかさを抑えた“和の美”にもつながるパリの陶器ブランドがじわり人気を集めています。着物の似合う日本人アーティストとコラボレートして近く東京でも新作が発表されます。
Photograph by YAMASHITA IkuoText by HAGIWARA Terumi
作品に導かれた50年ぶりの再会
アスティエ・ド・ヴィラット。パリで人気の陶器ブランドです。オペラ通りにほど近い、サントノーレ通り173番地に店を構えたのが2000年。木の扉を開くと棚いっぱいに真っ白な陶器が並んでいます。続く木の床は大きく傾いていて、中世の屋敷に迷いこんだような気になります。真っ白な陶器は、日本の粉引きのような素朴な風合いです。
デザイナーは、ローマ出身のブノワ・アスティエ・ヴィラットさんとイヴァン・ペリコーリさん。ブノワがパリのエコール・デ・ボザール(パリ国立美術高等学校)で知り合ったイヴァンと始めたのが、陶器、家具ブランドの「アスティエ・ド・ヴィラット」です。
その「アスティエ・ド・ヴィラット」が巨匠画家バルテュス夫人であり、自身も画家である節子夫人とコラボレーションした作品を発表します。パリにあるアスティエ社の工房で、その作品をひと足早く手に取り乍ら、節子夫人、ブノワとイヴァンの3人にインタビュ-しました。
――アスティエとのコラボレーションが実現したきっかけは?
節子夫人 数年前、アスティエの作品を見て衝撃を受けたんです。名前を見るとブノワ。バルテュスが館長を務めていたローマの「アカデミー・ド・フランス」に両親と寄宿していた坊やの名前でした。早速、電話をして会いました。
――電話があって、ブノワさんは?
ブノワ もちろん、びっくりしました。僕が会ったのは5歳くらいだったから。でも再会して懐かしい家族に会ったような気分でした。その場でコラボレーションすることが決まったのです。私がコラボをする時は、その相手と一緒に食事をしたり、長い時間をかけて話し合うのが普通。でも節子夫人とは50年のブランクを超えて、すっと入っていきました。
ASTIER de VILLATTE|アスティエ・ド・ヴィラット
釉薬(ゆうやく)の微妙なさじ加減から生まれる透明感とニュアンスのある真っ白な陶器は、パリ郊外の黒い土を使い、彫刻を手がける伝統的な手法で作られている。陶器の表面は均一ではなく気泡のあとや下地の濃い陶土の色が透けて見えるなど、熟練の職人たちの手仕事が垣間見られる。アスティエ・ド・ヴィラットではこれらの特徴を、ひとつひとつ表情の異なる器が語りかけてくる物語として大切にしている。08年よりメンバーのひとりであるスタイリストのエミリー・マゾーとともに香料入りのコレクションをスタート。現在は陶器や家具、オブジェにくわえ、オーデコロン、インセンス、香料入りの食器用液体洗剤、パフュームキャンドルなども展開する。
コラボレーション作のすべてを披露
アスティエ・ド・ヴィラットとバルテュス夫人、節子・クロソフスカ・ド・ローラ展
会期|4月19日(土)~5月19日(月)
店舗|H.P.DECO
東京都渋谷区神宮前 5-2-11
Tel. 03-3406-0313
www.hpfrance.com/sp/astier/index.html
アスティエ・ド・ヴィラット
Tel. +33 (0)1 42 60 74 13
www.astierdevillatte.com/
ASTIER de VILLATTE|アスティエ・ド・ヴィラット
名匠 バルテュス夫人、節子・クロソフスカ・ド・ローラ氏と共作
「セツコ・コレクション」誕生の舞台裏(2)
画家の面影、懐かしさを感じさせるアスティエの新境地
――アスティエの作品から受けた印象は?
節子夫人 いびつなカタチを美しいとする感性。それに共鳴したんです。
――デザインするとき、どのようにイメージを膨らませるのですか?
節子夫人 アスティエの陶器はチベット人の職人による“こねる”という独特の手業で仕上げられています。その特性を生かした作品をデザインしています。
ブノワ セツコはクリエイションのアイデアがどんどん出るんだ。すごいパワーだよ。
アトリエに案内してもらい作品を見せていただきました。
ブノワ セツコがスイスで住んでいるグラン・シャレ(スイスで一番大きな木造建築)の外壁の装飾や繰り型をイメージした深さのあるお皿。そして、パレットと筆に見立てたチーズ皿とナイフです。
節子夫人 これはまだ完成していないけれど、一番楽しみないちじくの葉のモチーフをつける燭台。大きな作品で1点ものにします。ミラノのサロンに出展したあと、東京でお見せする予定です。
――今後の作品の予定は?
節子夫人 アスティエで作りたいものがたくさんあるの。楽しみにしてください。
ブノアとイヴァンがデザインするものは無機的で抽象的。節子夫人の作品にはバルテュス氏との生活を垣間見るモチーフが登場します。それが、懐かしさだったりモダンだったり、新しい世界を作り出しています。
節子夫人はいつか話してみたい憧れの女性でした。パリコレクション期間中、朝9:00のアポイントでしたがいつものように着物をしゃんと着こなしていらっしゃいました。10:30のシャネルのコレクションにふたりで出かけたのですが、案の定渋滞に巻き込まれ、会場のグランパレを目前に走ることに。着物の裾に手をやり走る姿に、置き忘れてきた日本の女性を見る思いでした。次回、着物談議もしたいと思っています。
節子・クロソフスカ・ド・ローラ
現代具象絵画の巨匠、バルタザール・ミッシェル・クロソフスカ・ド・ローラ伯爵(1908-2001)、通称“バルテュス”と20歳の時に京都で出会い、結婚。バルテュスが館長を務めるイタリア、ローマの「アカデミー・ド・フランス」の女主人として夫を支え、大作のひとつ『トルコの部屋』のモデルも務めた。70年代からは自身も画家として活動。数々の絵画作品を発表している。一家は77年にスイス・ロシエールに建立された「グラン・シャレ」に移住。これはスイスで一番大きな木造建築であり、国の文化財に指定されている。バルテュスはここで晩年を過ごし、夫人は氏が他界するまでアトリエにてあらゆる面で氏を助けていた。没後はバルテュス財団名誉会長に就任。画家としてだけでなく、随筆家としても活躍の場を広げている。著書に『ド・ローラ節子の和ごころのおもてなし』(新潮社)、『めぐりあう花、四季。そして暮らし』(角川マガジンズ)などがある。
国内最大規模の回顧展「バルテュス展」開催
日本・スイス国交樹立150周年記念を機に企画されたバルテュスの大回顧展が4月19日(土)より東京の東京都美術館で、7月5日(土)より京都の京都市美術館にて開催される。ポンピドゥーセンターやメトロポリタン美術館のコレクション、個人蔵の作品まで、世界各国から集められた40点以上の油彩画を紹介。国内では没後初、最大規模の展示となる。また、本展では貴重な愛用品とともにバルテュスが晩年を過ごしたアトリエを再現。ピカソをして「20世紀最後の巨匠」と言わしめた画家、バルテュスの創造の背景を探る。
会期|4月19日(土)~6月22日(日)
会場|東京都美術館
東京都台東区上野公園8-36 企画展示室
休室日|月曜日、5月7日(水)
(ただし4月28日(月)、5月5日(月・祝)は開室)
東京都美術館 企画展示室
Tel. 03-5777-8600(ハローダイヤル)
http://balthus2014.jp/
会期|7月5日(土)~9月7日(日)
会場|京都市美術館
京都市左京区岡崎円勝寺町124(岡崎公園内)
休館日|月曜日(ただし7月21日[月・祝日]は開館)
京都市美術館
Tel.075-771-4107
www.city.kyoto.jp/bunshi/kmma/