あたらしい時代づくりに取り組むひとと企業──パナソニック電工編|SHIFT JAPAN
あたらしい時代づくりに取り組むひとと企業──パナソニック電工編
住宅から提案する、エネルギー活用のあたらしいかたち(1)
スマートグリッドの最小単位がスマートハウス。電気を効率的に使うスマートグリッドの重要性が注目されるなか、まずは家庭で効率よく電気を使う。そこからはじめるための、次世代住宅ともいえるスマートハウスはどこまで進んでいるのか。住まいの設備と建材を幅広く手がけるパナソニック電工のまるごと事業推進本部 藤井康弘副本部長に取材した。
文=小川フミオ写真(ポートレイト)=吉澤健太
住宅をとりまく社会が変わってきている
──震災と福島第一原子力発電所の事故いらい、電力供給量への不安から、一般消費者の電力への意識が変化している。住宅からはじまって電気や通信のインフラまで視野に入れているパナソニック電工としては、なにが大きく変わったと思うか。
端的にいうと社会全体の意識です。電力の効率利用を促進するアイディアは、以前からいろいろありました。たとえば、家庭内の電力消費量がわかるように“見える化”したスマートメーターも、家庭での蓄電池の活用も近い将来の導入が考えられていたものです。当初は“2015年以降”と言われていた導入タイミングが、もっと早まってきていると思います。
──原発に頼らない、という考えを基本にしたとき、我われには2つやらなくてはいけないことがある。ひとつは電力消費の削減。もうひとつはあたらしいエネルギーによる発電への対処。後者のなかには、いわゆる再生可能エネルギーもふくまれる。この2つは個人の住宅からはじめることができるともいわれている。
我われも、家庭内での電力を見える化するための設備をすでに提案しています。つぎのステップとして考えられるのがIT化です。ICT(情報通信技術)を使いながら消費電力を抑え、太陽光発電や蓄電池を上手に取り入れていくというものです。電力需要は、一般住宅と企業から成り立ち、簡単にいうと、企業が電力を消費するのは昼間、一般家庭では夕方からです。そこで企業が電力を大量に消費する昼間、一般家庭では太陽光エナジーによる自家発電に頼るようにするなど、わが社だけではできませんが、地域とつながったコンピューターを利用し、効率よく電源を使えるといいと思っています。
──ただ電力消費が見えるだけのスマートメーターに、コンピューターを組み合わせたのがHEMS(ホーム エナジー マネージメント システム)といわれるが。これについてはどこまで進んでいるのか。
HEMSは電器製品など家庭内の機器の電力コントロールが役目です。これだと、電力消費量が多いからある機器への電力供給を止めようとか、そこまでの働きにかぎられます。使い勝手を考えたら、各家庭の使用状況に合わせて効率よく電力を供給しないといけない。そこにはソフトの部分が重要になってきます。
──もう少し詳しく教えてほしい。
家庭ごとに家電の使用パターンを把握して、地域全体の電力消費量との関係をふまえて、消費量をコントロールするという考え方です。そのアルゴリズムを作るのに力を傾注しています。業界のトップランナーであるという自負もあります。
──実現目標はいつごろか?
年々進化をさせながら、2018~2020年にシステムとしてほとんどのことができているというイメージです。そうならないといけないと感じています。
あたらしい時代づくりに取り組むひとと企業──パナソニック電工編
住宅から提案する、エネルギー活用のあたらしいかたち(2)
住宅はあたらしい形態へと向かう
──家庭では自然エネルギーとはどうつきあうようになるのか。
計画停電とか節電とかかけ声がかかるなか、住宅メーカーとしてもソリューションを与えていかないといけないと考えています。先にも述べたように、震災以前から新エネルギーや効率的な節電を一般家庭に取り込んでいく計画は進んでいましたが、あらたにくわわったのが、停電があっても安心なシステム、というものです。
──どのようなモデルケースが考えられるのか。
これまで述べてきたHEMSでの節電にくわえ、太陽光パネルの設置による電源の分散、そして蓄電池による停電への備え。それが組み合わさったのが、これからの住宅ではないかと考えています。電力を効率よく賢く使うことから、このような新世代の住宅をスマートハウスと呼んでいます。わが社では、おなじグループ内に、住宅用太陽光発電システムを製品化している三洋電機があるので、協力して新エネルギーを採り入れた住宅を開発していけます。
──住宅における太陽光発電の将来性は?
住宅の屋上に太陽光発電パネルを設置できるので工法的な問題はありません。ただしコストもそれなりにかかるので、国として補助金がしっかり出て、売電もできるような法改正があってと、一般の消費者が費用対投資効果をどれだけ感じられるか。ハードルはいくつもあります。しかし、わが社が東京・有明にもっている「エコアイディアハウス」では、電力を賢く使ってCO2排出量を近い将来ゼロにする目標を提示していますが、電力においても電力を買うのと売るのとで、お金がプラスマイナスゼロになるといいと思います。
──電気という二次エネルギーを作るのに自然エネルギーを利用するのはとてもよいことだ。いっぽう、一次エネルギーとしてLNG(液化天然ガス)も有望視されているようだが。
ガスを使った発電はコストの面からも有望だと思います。LNGはおもに大きな規模の発電所に使うものですが、家庭では都市ガスによる発電ができます。エコアイディアハウスではガス改質型の家庭用燃料電池も導入しています。都市ガスから水素を取り出し、それを酸素と化学反応させ特殊なシステムを通過させる過程で電子を取り出し、それで電気を作るシステムです。これはガスを使い家庭で発電するシステムです。
eco idea HOUSE
パナソニックが提案する「CO2±0(ゼロ)」の次世代住宅を体験できる。家電製品の省エネ性能を高め、さらに高断熱の建築材料なども活用し、CO2を徹底的に削減。それでも必要となるエネルギーは、太陽光発電、燃料電池、蓄電池による創エネ・蓄エネでまかなう。これらをつなぎ、エネルギーをかしこくコントロールするホームエネルギーマネジメントシステムでCO2±0(ゼロ)を目指す。さらに、「風・光・水・熱」の自然の恵みを上手にとりいれた、心地よいくらしを提案している。月曜日を除く、土日祝日に体験できる。
東京都江東区有明3-5-1(パナソニックセンター東京内)
一般公開|土曜・日曜・祝日(月曜日は除く)10:00~18:00
入場無料
http://panasonic.co.jp/ecohouse/