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マシュー・ワォルドマン Vol.01 Lost Future City
Vol.1 Lost Future City
Forward──前書き
デザインやクリエイション、またそれらのプロセスのことで、僕の頭の中はいつもせわしなく回っている。この数年間、取材やインタビュー等でもいつも言っていることだけど、NOOKAでも、また、その他のプロジェクトにおいても、自分の「プロセス」をより深く掘り下げなければいけない、と思う。
今回のトピックとは直接関係ないかもしれないが、今はじめたいことは「クリエティブマッピングプロジェクト」。
どんな人も「influences(影響, 感化)」、「motivations(自発性, 積極性、動機づけ)」、「inspirations(創造的刺激, 霊感, インスピレーション)」という3つの要素を、潜在的に意識しながらそれぞれの人生を過ごしている。もちろんそのことを意識せず、ただこれらの要素を内面に存在させているだけで人生を過ごす人々もいるのだが……。
しかも、この3つの要素は非常に混同しやすい。けれど、自分の中でしっかり理解しようと努めれば、例えばデザインの仕事において明快で分かりやすいコンセプトを形作るよりも、プレゼンテーションがうまくなると個人的には思う。(実は、自分の中で一番自覚が足りないのは「motivation」だけれども、それを書き始めるたら、すごく長くなってしまうので今回はやめておこう)
今後、この「OPENERS」のトピックは、こんなテーマで書いていこうと思っている。誤解しないで欲しいのは、決してノスタルジックになることが目的ではないということ。
Lost Future City──消えゆく未来都市
1939年にニューヨークで開かれた万博は、最もフューチャリスティックだったと聞いた。確かにその当時の資料を見ると、その通り! とは思うのだが、当然まだ生まれていなかったので、資料から思いを馳せることくらいしか術がない。
僕は、子どものころ1964-1965年に行われた万博会場の近くに住んでいて、赤ん坊の頃からよく両親に連れて行ってもらっていた。結構地味なアパートに住んでいて、何度もFlushing Meadow Park(万博公園)に連れて行ってもらった。その思い出は、僕の中でとても印象深い出来事だったし、もちろん今に至るまで自分自身に影響を与えている。
公園にある説明書きを何も読まなくても、子どもの頃の僕の目には、” This is the future city ! ”と自然に感じることができたけれども、40年過ぎて、そんな夢、そんな将来は、ほとんど100%現実のものとはなっていない。
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もちろん、万博はその時代の最も理想的なデザインと技術を展示会という形で発表するのだけれど、僕は1964-1965年の万博の時にもまだ生まれていなかったので、万博が終わった後に残った建築でそれを体験した。
その建築を見るだけでも、ニューヨークの万国博覧会は、僕のデザインやアートにとって「inspiration」の一部だった……。New York Cityが、こんなフューチャリスティックな街に生まれ変わるのだろうか!? と思っていた。
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クイーンズ美術館のNYCミニチュア模型
高校生の頃まで万博の建築はずっと使われていた。ニューヨーク州パビリオンはローラースケートリンクだった。ヘリポートは結婚式場。博物館はそのまま科学博物館に……。ユニスフィアは映画にもよく出ているし、ニューヨーク州パビリオンは、映画「Men In Black」で宇宙船として使われていた。ただ、もうユニスフィア以外はもうボロボロで、近い将来無くなってしまうだろう。
僕は、決して懐古主義者でも、保護主義者でもないけれど、これらの建築からアナハイムのディズニーランドや、オーランドのディズニーワールドがインスパイアされたことに興味がある人がいるなら、早く見に行ったほうがいいと思う。
また、クイーンズ美術館も万博跡地にある。1964年を意識して、美術館へと入ったら凄い!と思うはず。New York Cityのミニチュア模型が今でもある。その大きさは約870平米! 子どもの頃、館内のモノレールがその模型の周りを走っていたほど! でももうモノレールは動いてないみたい。観光客のほとんどは行かないけれど、僕は行く価値があると思う。
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1964年ニューヨーク万博記念バッグ
美術館の周辺を歩きながら、決して存在しなかった未来都市を観光してみれば? フォード製のモノレールは、その後、アナハイムのディズニーランドに運ばれたけど、まだ走っているのかな?
ニューヨークは、「未来都市」を目指していたけれど、そろそろ北京に追い抜かれるかもしれないね。
参考|http://www.queensmuseum.org/