also craft #05 『ACHILLE CASTIGLIONIの仕事』
Design
2015年4月13日

also craft #05 『ACHILLE CASTIGLIONIの仕事』

#05 ACHILLE CASTIGLIONIの仕事
――故カスティリオーニのスタジオ探訪

ランドスケープ プロダクツ中原慎一郎による工藝をテーマとしたさまざまな出会いを紹介する "also craft" 。
第5回めは「ACHILLE CASTIGLIONIの仕事」を紹介します。

文=中原慎一郎

発想の源はいまもなおスタジオのなかに存在する。
イタリア、ミラノ中心に現在も存在する、故カスティリオーニのスタジオを訪ねた。

近代のモダンデザインの巨匠であったアキッレ・カスティリオーニ氏が亡くなったのは2002年。
アキッレだけが名が知られているように思えるがじつは3人兄弟(リヴィオ 1911-79、ピエル・ジャコモ1913-68、アキッレ1918-2002)で設計事務所を営んでいた。
彼らの残した功績は本当にすばらしく、コンパッソドーロを7回受賞したことだけではなく、彼らの目線、発想は現在も僕も含め多くの人々に影響を与えつづけている。

そんななか今年、念願の彼等のスタジオ訪問がようやく実現した。かねてより雑誌などで見学ができるということは分かっていたのだが、なかなかタイミングがなかった。写真でみるかぎりその物の多さと、整理された様は物づくりをする人間にはたまらない空間である。

朝10時に現地に行き(隣りにはコンデナスト社がある)、窓からすでに見えている内部が気になる。
中に入ると、16年間秘書を務めた女性が慣れた様子で丁寧に各部屋を説明してくれた。どの部屋も置いてあるものが気になって目がまわる。とくに白い背の高いショーケースの中には目が釘付けだった。
本当にいろんな物が詰め込まれているのだ。

まるでカスティリオーニ兄弟の頭のなかを覗いているようだ。
いたるところに彼が集めた工業製品のパーツや木工品などが置いてある。それらはすべて発想の源なのだ。今回イタリア、パリと旅をしたが、過去、他のヨーロッパの旅でうけたさまざまな印象がいろいろと結びついた気がする。この風土で感じることができるのは、その偉大な人々による多様な発想力のすごさではないだろうか。
アメリカでの印象は、逆にスタイルの多様さだったりもする。とくにそれは店のスタイルに表れていると思う。

このスタジオには部屋のいたるところに発想のもととなったものと、それから発想してデザインされた椅子やテーブルなどのOBJECTSが、大量に、そしてきちんと配置されている(いまでもFlos社やZanotta社で生産販売されているものもある)。

素直に学び、かつ自分の解釈へと繋げられる柔軟性が、彼には人一倍強く宿っていたのであろう。

カスティリオーニはまさにアノニマスデザインについてよく理解していた人物のひとりだ。
既製品の中の優れた物への着眼点が、彼らの好奇心を刺激し新たなものをうみだす。また当時のタイミングが彼らの試みとうまく絡み合い、これまでにないデザインの流れをもうみだしたのである。

現在はこのスタジオでは、残された膨大な資料を日々デジタル化する作業がスタッフによって日々行われている。
このスタジオは午前中に予約制にて見学することが可能だ。ミラノに行く機会のある方は行ってみてほしい。

写真はカスティリオーニの代表作

見学の予約は以下のアドレスから。
http://www.triennale.it/triennale/sito_html/castiglioni/index.htm

           
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