also craft #03 『ヴィンテージオーディオがもたらすもの』
#03 ヴィンテージオーディオがもたらすもの。
ランドスケープ プロダクツ中原慎一郎による工藝をテーマとしたさまざまな出会いを紹介する "also craft" 。
第3回めは「現代におけるヴィンテージ・オーディオの魅力とは」と題しておくりします。
現代におけるヴィンテージ・オーディオの魅力とは?
現代におけるヴィンテージオーディオの魅力とは。
1950年代に活躍したデザイナー、チャールズ・イームズらがつぎつぎと発表した、スピーカーなどの「音」に関するプロダクトがあったのをみなさんはご存知だろうか。
現在ヴィンテージ・オーディオとよばれているそれは、発売当時、インテリアと拮抗しながらもその空間と独特の協調性を発揮し存在した。
そのカタチも家具のデザインに合わせた素材でつくられたり、その機能も家具の内部に隠されていたりと、さまざまな工夫がなされていた。もちろんその音も、その生まれでた国の音楽性にも深く影響されながら独自のすばらしい音質を体現することができた。
そのヴィンテージ・オーディオはフォルムや音のすばらしさから現在もそのスタイルに惹かれる人々によって愛され続けている。
Hysteric Glamourのデザイナー、北村信彦さんはJBLのPARAGONを自宅のオーディオルームで使用する。かれこれ4年ほど前に
なるだろうか、新築した北村邸の家具や調度品の買付けにカリフォルニアに同行したことがある。一緒にカリフォルニアじゅうをクルマで駈けずりまわって集めた。
それらの買付けの際にも、たびたび1950年代のオーディオ・キャビネットを見ることがあった。それらはほかの家具とも絶妙に調和する外観をもっていた。その買付けツアーから帰国後、北村さんの自宅にそろえられた家具やオーディオは「遊びのあるモノ」と「古き落ち着きあるモノ」をうまくミックスした北村さんらしい空間となった。
さまざまな音楽を独自のスタイルで聞く北村さんのこれらの家具やオーディオは、部屋としてひとつの装置だともいえる気がする(ちなみにアンプはSONICFRONTIERSで、フロントの板を外しているところもシブい。プレーヤーはGARRARDのMODEL301。ボディ以外の部分はウォールナット新調してある。両サイドのキャビネットもすべてウォールナット材でつくったキャビネットで合わせてある)。
僕がヴィンテージ・オーディオを意識したのはサンタフェに暮らしていたジョージア・オキーフの自邸でみたmacintoshのアンプだ。
その空間においてそのmacintoshは、静かにまるでオブジェのように壁面の棚に配されていた。
現在の家電といわれるモノはなかなか部屋になじまない。便利なだけで機能は発揮するが、図体もでかくまわりを気にしない存在感だけの代物だ。存在感があるのなら、その部屋に馴染む図体の方がずっと良いと思う。
ヴィンテージ・オーディオのあり方に、きっといまsakubujuの機能重視の家電の違和感の打開策が隠れているように思う。