マシュー・ワォルドマン Vol.04 「New Yorker」って? #02
Design
2015年3月12日

マシュー・ワォルドマン Vol.04 「New Yorker」って? #02

Vol.04 「New Yorker」って? #02

前回お送りした、「Vol.03 New Yorkerって?」。
その末文にて予告した、「New Yorkerについての対談」を掲載します。

対談相手は──
フランク・ナン。台湾生まれの建築家。
ハトリ ミホ。東京生まれのミュージシャン。
ティナ・ロス。スイス生まれのデザイナー。

質問は──
A いつNYCを故郷と思った?
B いつ自分をニューヨーカーだと気づいた? また何かそのきっかけとなった出来事は?
C あなた自身の言葉で、「ニューヨーカー」とは?

それではどうぞ。。

Vol.04 「New Yorker」って? #02

Frank Nan フランク・ナン
台湾生まれの建築家

Q いつNYC(ニューヨークシティ)を故郷だと思った?

A 1993年に台湾からロサンゼルスのど田舎に移住した当時、僕は16歳だったんだけど、移住してから6カ月目の夏に、はじめてNYCに遊びに行ったとき。凝縮した街のエネルギッシュな部分に元気づけられて、すぐにNYCが僕の故郷になると分かった。そして15年前のその夏からずっとNYCに住んでるよ。

Q いつ自分がニューヨーカーだと気付いた? その何かきっかけとなった出来事って?

A もともと、常に自分がニューヨーカーだってことを認識していたよ。ここで高校も大学も通っていたしね。当時の思い出で、ニューヨーカーだと思った瞬間といえば、毎日通学で電車に乗ると、同じ車両にさまざまな人が乗ってること。ヨーロッパ系、アフリカ系、中国系、韓国系、ロシア系、メキシコ系にインド系の人びとが、それぞれの仕事のユニフォームを着て通勤しているんだ。こんな小さな車両に、こんなに色々な人びとが集まっていることが、いつか映画で見たシーンと同じだと感動したのを覚えているよ。あと、いわゆる映画で見るような電車での出来事といえば、電車のドアが閉まる瞬間に、10代の若者がおばあさんのネックレスと鞄を盗んだ瞬間を目撃したことだね。でも、まぁ今はずいぶんNYCも安全になったものだよ。

Q あなた自身の言葉で、ニューヨーカーって?

A 僕にとってのニューヨーカーとは、単純にNYCに長く住んでいるか、もしくは住んでいた人のことで、この街のエネルギーと多様性を生き甲斐にしつつ、NYCの歴史とこれからのNYCを大切に思う人のことだと思う。「ニューヨーカー」とは、ひとつの定義ではなくて、NYCにいる人数分、それぞれが思うNYC的な場面があるから、それだけ多くのニューヨーカーがいると思うんだ。ステレオタイプのニューヨーカーといえば、多文化、多言語、多数の仕事をもっていて、だれもが個性をもっている、いろいろな顔をもつ人のこと。

そんな人はどこに行けば美味しいケバブ(トルコの野菜と肉の串焼き)や、クニッシュ(肉とジャガイモのユダヤ特有の詰め物料理)、カルビ(韓国の焼肉料理)、キルバーサ(ニンニクで味つけしたポーランドの薫製ソーセージ)に、クルチャ(パンに肉や野菜をつめるインド料理)を食べられるか知っていて、とろとろ歩く歩行者を嫌い、タクシーの運転手をナビゲーションする。そして個人専用の洗濯機と乾燥機をもつことがご褒美だと感じる人がいわゆるニューヨーカーなんだと思う。

Miho Hatori ハトリミホ
東京生まれのミュージシャン

Q いつNYCを故郷だと思った?

A 1994年にNYCに来たときから。

Q いつ自分がニューヨーカーだと気づいた?

A 自分の表現がこの都市で受け入れられたとき。

Q その何かきっかけとなった出来事ってある?

A そうねぇ、たくさんあるなぁ。 今、思いついたことは三つ。 やっぱり911の経験は強烈だった。 庭に、ワールドトレードセンターにあったオフィスの書類の破片が舞い降りてきたり。

最近強く感じたのは、オバマが大統領選挙で当選したこと。 NYCが、これほど喜んだのは本当に久しぶりで、911の傷を癒す出来事だったと思う。

あともうひとつ。村上隆のジャパンソサエティーで行われた 「リトルボーイ展」には個人的に大きな刺激を受けた。 あれから私は、自分のアイデンティティの探求、つまり、自分の作品づくりにおいて、もう一段、深いところから考えるという意識になった。とくに展覧会のカタログはとても勉強になった。

Q  あなた自身の言葉で、ニューヨーカーって?

A 養老孟司がいっている、都市とは脳化の表れであるという主張に、私は共感している。ニューヨーカーって、インターナショナルな人、という曖昧な一言で説明できるような存在ではなくて、多様性というものに、ある程度の免疫力が備わっている人がニューヨーカーで、NYCはそんな人が生きていく場所、と言ってもいいんじゃないかな?

比較的多くのニューヨーカーは、ドキュメンタリー映画を2、3本、作れるだけの瞬間や、カオスを体験していると思うから、ダライ・ラマが言うように、とてもいい修行の場所でもあると思う(笑)。

Vol.04 「New Yorker」って? #02

Phil Van

Vol.04 「New Yorker」って? #02

Tina Roth ティナ・ロス
スイス生まれのデザイナー

Q いつNYCを故郷だと思った?

A コーヒースタンドのおじさんがなにも言わなくても、コーヒーを出してくれるような、そんな些細な瞬間に遭遇するときに、NYCを自分の故郷だと感じる。今の結婚相手とNYCで出会ったときも、ここにずっと長く住むことになるだろうと直感した。

Q いつ自分がニューヨーカーだと気づいた? その何かきっかけとなった出来事って??

A スイスから帰ってきて、JFK空港からタクシーに乗った瞬間。運転手の態度は悪いし、道も凄く汚い。蒸し暑いのに、タクシーのエアコンなんてまったく効いてない。そして渋滞してる。でもまったく気にならない。むしろそんなNYがとても好き! 家に帰ってきた! って気がする。

Q あなた自身の言葉で、ニューヨーカーって?

A NYCにいたい気持ちと、そのままのNYCを愛する人はどんな人もニューヨーカーだと思う。もしくは一度、NYCに10年住んでたことがある人なら「あなたは正真正銘ニューヨーカー」のスタンプを私が押してあげるわ。

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