角田陽太|東京の酒場を案内する「東京浪漫酒場」第二回 学芸大学「Cignale Enoteca」
Design
2015年2月2日

角田陽太|東京の酒場を案内する「東京浪漫酒場」第二回 学芸大学「Cignale Enoteca」

元おでん屋、カウンター6席というミニマムなイタリアン

第二回 学芸大学「Cignale Enoteca」

店の雰囲気をつくるのに重要な役割を果たしている備品にも注目して、うまい酒を飲み、店のたたずまいを楽しむ」──プロダクトデザイナー角田陽太氏の新連載「東京浪漫酒場」第二回は、学芸大学にあるイタリアン「Cignale Enoteca(チニャーレ・エノテカ)」。一回目の三軒茶屋「久仁(くに)」とはちがったおもむきと料理に注目したい。

Text by KAKUDA YotaPhotographs by OTA Takumi

白ワインと新鮮な牡蠣(カキ)とフォアグラからスタート

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東急東横線・学芸大学駅から歩いてほどなく、古い雑居ビルの1階にそのお店がある。シンプルな白い直方体にイタリック書体で描かれた看板はとても美しい。トスカーナ地方にありそうでもある。

ここは、店舗を探していたオーナーシェフの東森俊二さんがたまたま隣りのお店に飲みに来ていたときにビルのオーナーを紹介してもらい、30分で決めたという物件。なんと元おでん屋で、その広さは厨房、化粧室あわせて10㎡。

席数はカウンターのみで6~7。カウンターはおでん屋のときのものをそのまま活かしている。3年前まではおでんがならんでいたそこには、こだわり抜いた野菜やきのこなどの食材、自家製のパスタとパンがならぶ。もちろん我々の目を楽しませているのだが、狭小空間ゆえに、ここに食材を置かなくてはならない。さらに着席したとき、厨房のさりげない目隠しにもなっている。

角田陽太|Cignale Enoteca 03

角田陽太|Cignale Enoteca 06

厨房の中の壁は一部斜めになっていて、それが見やすいワインリストになっている。この斜めの黒板はこの建物の構造上のものであり、2階へ上がるための階段下のスペースにあたる。

白ワインと新鮮な牡蠣(カキ)とフォアグラからスタートし、サラダと進む。自家製のパンもとてもおいしい。そうしているところで隣りのお客さんから「これ食べてみません?」と、ノレソレ(穴子の稚魚)をいただいたりと小さな空間ならではの展開に。

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自家製のパスタは日替わりで、トマトとゴルゴンゾーラと空豆のパスタを選ぶ。メインは子羊のローストとホウボウのオーブン蒸しを食べ、仲良くなった隣りの人たちのエゾ鹿肉と少しずつ交換した。

10㎡の空間がつくり出す、隣り同士の距離感が親近感になるような良い雰囲気がある酒場だ。

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チニャーレ・エノテカ
東京都目黒区鷹番3-7-12 1F
Tel. 03-3714-5112
営業時間|18:00~24:00
定休日|日曜日・祝日

角田陽太|KAKUDA Yota
デザイナー。1979年宮城県仙台市生まれ。2003年渡英し、さまざまな事務所で経験を積む。2007年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)を修了。2008年に帰国後、無印良品のプロダクトデザイナーを経て、2011年、YOTA KAKUDA
DESIGNを設立。
http://www.yotakakuda.com/

太田拓実|OTA Takumi
写真家。1978年愛知県名古屋市生まれ、高校卒業まで宮城県仙台市に育つ。建築・空間・プロダクトなどを対象にフリーランスフォトグラファーとして活動中。
http://www.phota.jp/

           
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